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人間模様や感情の表現が秀逸!10月10日公開 映画『見はらし世代』団塚監督・黒崎煌代インタビュー

Kiss

「家族の変容」と「変わりゆく街」を重ね合わせ、揺れ動く感情を丁寧に描いた映画『見はらし世代』が、10月10日より全国の劇場で公開されます。

(左)団塚唯我監督、(右)黒崎煌代さん

本作が長編映画初作品となる団塚唯我(だんづか ゆいが)監督と、主演を務めた三田市出身の俳優・黒崎煌代(くろさき こうだい)さんのお二人にインタビューを実施しました。

ーSTORYー

再開発が進む東京・渋谷で胡蝶蘭の配送運転手として働く青年、蓮(黒崎煌代)。ある日、蓮は配達中に父(遠藤憲一)と数年ぶりに再会する。姉・恵美(木竜麻生)にそのことを話すが、恵美は一見すると我関せずといった様子で黙々と自分の結婚の準備を進めている。母(井川遥)を失って以来、姉弟と父は疎遠になっていたのだ。悶々と日々を過ごしていた蓮だったが、彼はもう一度家族の距離を測り直そうとする。変わりゆく街並みを見つめながら、家族にとって、最後の一夜が始まるー(映画『見はらし世代』公式サイトより引用)。

本作品を撮ろうと思ったきっかけを教えてください!

団塚監督(以下 監督):「家族」をテーマにした作品は今までも扱ってきましたが、今回は初めての長編映画ということで、これまで描いてきた家族の物語を長編として形にしたいと思いました。僕自身、家族に対しての違和感だったりとかがある中で、「変わっていく街」と「家族の変容」というものが重なった瞬間があって、その時に「映画になる」と思って脚本を進めていきました。

主人公の蓮と、遠藤憲一さん演じる父親・初(はじめ)が対面するシーンでは、黒崎さんの“表情”の演技が非常に印象的でした。あの場面は、監督から演技指導があったのでしょうか?

監督:いえ、細かい演技指導はほとんどしていません。特にあのシーンは、黒崎君が準備してきてくれたものが大きかったと思います。

黒崎煌代さん(以下 黒崎):ありがとうございます。ただ、実際に現場でセリフを言い合うと、その時にしか分からない“感情”みたいなものが発生しました。 父親と久しぶりに対面して「元気か?」と声をかけられたとき、本当に「そうじゃねえんだよ、お前なんか」って感情が湧き上がってきて。その気持ちのまんまに演じました。一度も叫ぶつもりはなかったんですが、「これは叫びたい」と、その瞬間に思ったんです。

©2025 シグロ / レプロエンタテインメント

感情があふれ出した蓮の姿に胸を打たれました…!そんな蓮と木竜麻生さん演じる姉・恵美のやり取りも強く印象に残っています。

監督:蓮と恵美の姉弟は、根っこでは同じ思いを持っているけれど、感情の出し方やこれまでの過ごし方が違うので、姉は強く言葉を発し、蓮はあまり多くを語らない。兄弟でも似ている場合とそうでない場合があるように、性格や感情表現の違いを意識しました。

二人がそういう風に育っていったのは、両親の影響がすごく強いんだろうなと思っています。 作品の冒頭で夫婦喧嘩のシーンを入れたのは、そんな夫婦の関係を見て育った子どもを描きたかったから。夫婦関係や両親がどんな人であるかという要素が重要で、「その上であの姉弟になったんだ」ということが伝わってほしいと、映画を作りながら思っていました。

本作は、人と人の関係性や揺れ動く感情の表現が非常に巧みだと感じました。なかでも父・初と周囲の人々のやり取りは、観ていて胸がキュッとなりました…。

監督:遠藤さん演じる父親が、誰かと対面し、会話するシーンが劇中には多くありますが、ただの「悪い人」にはしたくありませんでした。自分の感情の揺らぎやキャリアの積み重ねの中で、結果的にそうせざるを得なくなってしまった人であり、「何となく間違っている」と観客に感じてもらえるセリフをどう書くか、ずっと考えていました。

狙って「悪いことを言わせる」というより、自然と「また間違ってしまった」と思えるように書いていたんです。決して悪意はなく、でも何かがずれている。そうした曖昧な“間違い”を描きたいと思っていました。その「絶妙なズレ」を表現するのが面白かったですね。

©2025 シグロ / レプロエンタテインメント

タイトルの「見はらし世代」は作中に登場する人物を差した言葉なのでしょうか?

監督:タイトルを考えた当初は感覚的につけた部分が大きく、明確な答えを持っていたわけではありません。今もはっきりとした答えがあるわけではないですが、特定の世代を指しているというよりは、分断されがちな“世代というものを包括的に示すイメージ”を持っています。

ある人から聞いて面白いと思ったのは、「まだ生まれていない、これから出てくる世代を指している」という解釈。

この映画のテーマは、景色だったり、街だったり、人だったり、いろんなことが変わっていく、“その変化を受け入れていくこと”にあると思っているんですけど、そういったなかで、もしかしたら「見はらし世代」という言葉は、これから生まれる“新しい存在”を指しているのかもしれない。そんなふうに思うようになりました。

作中で描かれる「渋谷の街並み」も印象的です。再開発された宮下公園で楽しそうに過ごしたり、LUUPに乗る若者たちの姿が描かれていました。

監督:“家族が変わっていく”というテーマと同時に、“街全体が躍動している様子”も描きたいと思っていました。なにかこう、「生きているという感触」みたいなものを、家族それぞれに感じながら撮影していましたが、その感じを街や街にいる若者にも感じたいと思い、LUUPなど現代的なものを意識的に取り入れました。

ちなみに監督は、ご自身の家族とどんな関係を構築されていますか?

監督:僕自身、“家族への違和感”みたいなものが、もちろんないわけではありませんが、今回の映画で語ったように「どこかで折り合いをつけて、変容していかなきゃいけない」という思いがあります。

今は僕も一人暮らしで、別々に生活をしていますが、住む場所が違うからといって家族じゃなくなるわけではないことは強く感じていて。だからこそ、複雑な部分がありながらも、折り合いをつけていく関係だと思っています。

©2025 シグロ / レプロエンタテインメント

映画の後半で父・初が号泣する姿が描かれ、その時に蓮が見せた“笑顔”に胸を打たれました。黒崎さんは、その時の蓮の気持ちに共感できましたか?

黒崎:めちゃくちゃ共感できました。冗談めかして言えば「遠藤さんがめっちゃ面白かった」というのもありますけど…(笑)。なんというか、父親に限らず、普段しっかりしている人が、ふっと泣く、それも号泣している。その姿を見たらなんだか「ふふっ」って思うじゃないですか。

その感覚を映画に落とし込もうとした団塚監督がすごいなと思いながら台本を読んで、演じました。でも、遠藤さんが面白かったのも本当です…!

監督:あのシーン、脚本上では成立していると思っていましたが、実際に現場で遠藤さんがどういう芝居をされるかわからない部分もあって、そんな遠藤さんの演技に対して黒崎君がどのくらい反応できるかは撮ってみるまで分かりませんでしたが、撮影を終えて「これはいけそうだ」という感触がすごくありました。

これまで掴もうとしていた遠藤さんのキャラクターが間違ってなかった感じや、黒崎君の芝居を見ていても、この二人だからこのシーンになっている感じがあって。それがすごく良かったです。撮っていて楽しかったですし、役者さんの力に助けられたと感じる、とても印象的なシーンでした。

そんな黒崎さんと遠藤さんが、撮影中どんな風に過ごされていたのか気になります!

黒崎:カメラが回っていない時は和気あいあいとした雰囲気で、振り返るとちょっと和気あいあいしすぎたくらいです(笑)。遠藤さんは本当に面白い方で、「俺は面白いことなんてやらないよ~」なんて言うんですけど、ぜんぜんそんなことなくて…!撮影中も笑っちゃって、何回かNGを出しちゃいました。

監督:黒崎くんと遠藤さんが笑いすぎて、現場が止まってたよね(笑)。遠藤さんが本番中なのにすぐ吹き出しちゃって、撮影が3テイクくらい進まないこともありました。

黒崎:謎のゲラ状態でしたね。助監督さんがバーッと寄ってきて、「遠藤さん、ここは真剣なシーンなんで宜しくお願いします」って注意されてて。そしたら「子役みたいなこと言われちゃったよ~」って…(笑)。

©2025 シグロ / レプロエンタテインメント

作品の話から少し離れますが、黒崎さんは兵庫県三田市の出身で、現在は東京で生活されています。離れて暮らすことで、地元に対する印象に変化はありましたか?

黒崎:三田市って本当に良い町だなぁって、上京して1~2年目くらいまでは常々思っていましたね。実家に帰るたびに「三田って最高だな」「三田しか勝たんな」って。だけど、3年目くらいからは実家に帰っても「東京に早く帰りたいな」って、どっちにいても「早くあっちに行きたい」と感じるようになったんです。ポジティブな気持ちで東京に戻れるようになったのは、大きな変化でしたね。

三田市と東京、両方の良さを感じるようになったんですね。

黒崎:三田市の良さを挙げればきりがないです。よく田舎と言われますが、温泉があって、自然もあって、イオンモールもある。とてもきれいな町並みで、「足りないものがない」という意味では東京とあんまり変わらない。本当に素晴らしい町です。

なんて素敵なコメント!いつか三田市の「観光大使」に就任してほしいです♪

黒崎:もし機会があれば…(笑)。地元への恩返しができたら嬉しいですね。

いつか三田市を日本、そして世界に知らしめてください!!

黒崎:三田市の方、お待ちしております!

団塚監督、黒崎さん、本日はありがとうございました♪

映画『見はらし世代』
2025年10月10日(金)より全国公開

兵庫県内では『シネ・リーブル神戸』(神戸市中央区)、『MOVIXあまがさき』(尼崎市)で上映されます。


作品情報
映画『見はらし世代』
<公開日>
2025年10月10日(金)
<監督・脚本>
団塚唯我
<企画・製作>
山上徹二郎
<プロデューサー>
山上賢治
<配給>
シグロ
<キャスト>
黒崎煌代、遠藤憲一、井川遥、木竜麻生、菊池亜希子、中村蒼、中山慎悟、吉岡睦雄、蘇鈺淳、服部樹咲、石田莉子、荒生凛太郎

上映劇場(兵庫県)
シネ・リーブル神戸
(神戸市中央区浪花町59 神戸朝日ビルディング B1F)

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