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小2で授業中座っていられず、児童精神科を受診。「育て方のせいじゃなかった」発達障害の診断で母は…

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小2で授業中座っていられず、児童精神科を受診。「育て方のせいじゃなかった」発達障害の診断で母は…

監修:藤井明子

小児科専門医 /小児神経専門医/てんかん専門医/どんぐり発達クリニック院長

気になる様子は特になかった小1の頃。けれど小2の2者面談で……

入学してから1年、コチ丸は特にこれといった問題もなく小学校に通っていました。唯一、気になっていたのは通学の班が2人だけで、班長の女の子はよくお母さんに車で送ってもらっていることでした。小1のコチ丸を1人で学校に行かせるわけにはいかないので、必然的に私が送ることになります。週に1・2回はそんなことがあり、通勤前にちょっと大変だな……と思っていました。後々、その送り癖がコチ丸の自由登校を促すきっかけの1つにもなるのですが……。

それ以外は友達の家に遊びに行ったり、友達が遊びにきたり、楽しい小学生ライフを過ごしているようで私も安心していました。また児童クラブにも通っていて、基本的には放課後はそこで過ごしていたので特に悪事を働くこともなく(笑)私も安心して仕事を続けておりました。

小2の夏頃のことです。担任の先生と2者面談があった際に「コチ丸くんが座って授業を受けられないときがあります」という話をされました。幸いなことに、その担任の先生は特別支援学校で働いていた経験があり、とても熱心で、コチ丸の様子をしっかりみてくれていました。

座れないときや落ち着けないときがあると、段ボールで机の下を暗くして、そこにコチ丸の落ち着けるクールダウンスペースをつくるなどして、対応をしてくれていました。

当時はそのような対応をしてくれていた先生に感謝と同時に、「私とコチ丸はこれからどうしたらいいのか?」という不安は日に日に募りました。

担任の先生の勧めで児童精神科を受診することに

担任の先生から、児童精神科の受診を勧められたのをきっかけに、私はコチ丸に合った病院を探し始めました。

コチ丸にどんな診断が出されるのか、どんな治療をしていくのかなど全く分かりませんでしたが、私自身が若いときに鬱で精神科にかかっていたこともあり、「できるだけ薬は飲ませたくない」「カウンセリングや普段の行動から変われる方法を見つけたい」という、治療方法もまだ分からない中でも自分なりの希望がありました。

しかし、児童精神科は初診まで数ヶ月待ちというところが多く、さらに自分が納得のいく病院を見つけるのにも時間がかかりました。

初めてかかったのは隣町にある小児科の傍らで児童精神科を行っている病院でした。そこでコチ丸の幼少期についての聞き取りや、診察室で先生と会話する様子の観察などをしていただき、ADHD(注意欠如多動症)とASD(自閉スペクトラム症)と診断されました。

診断を受けた後に起きた心境の変化

当時の記憶で一番残っているのは、診断書を書いていただいた時に「あぁ、やっぱり発達障害だったんだな」というこれまでのコチ丸の様子が腑に落ちた思いと同時に、これでコチ丸も私も悪くないんだという許されたような気持ちを持ったことです。

というのも、学校では担任の先生の配慮もあり、順調に過ごしているように見えたコチ丸ですが、家での様子は全く違っていたのです。
宿題はやらない、片付けはできない、相変わらず気になるものがあるとすぐに手を出してしまう、外出すると姿を見失う……など、保育園の頃から変わっていない……というより、さらにパワーアップしていました。大きな声で怒鳴ったり、じっとしていられないコチ丸を宥めたりするのに疲れていた私でしたが、「自分の育て方のせいでは?」と日頃からずっと心のどこかで思い続けていました。不謹慎かもしれないですが、それらを「発達障害のせい」にできたことで、心は随分と楽になりました。

また、自分自身やコチ丸に対しても、徐々に「まぁいいか」という気持ちが持てるようにもなってきました。コチ丸に、毎日寝る前には必ずするように言っていた部屋の片付けも、週1回すれば良いことにしました(自分も仕事していると週1回の掃除しかできないから)。スーパーでコチ丸が自分の好きなところに走って行ってしまっても、あえて追いかけ回すことはせず、戻ってくるまで私も好きなところを見るようにしました(もし迷子になったらどうしたらいいか、自分で考える経験も必要だと思ったので……)。

特性で仕方ない部分もあるのだから、コチ丸の発達にあったレベルでできることをすれば良いやと思い、過度に焦らず、余裕をもって接することができるようになりました。

発達障害に関する本を読み漁り、対処法を試す日々

同時に、私は発達障害に関する本を買い漁り、たくさん勉強もしました。本に書いてあるさまざまな特性の中から、コチ丸に当てはまるものとその対処法を試しては失敗して……の繰り返しでした。私自身にはそれが意外にハマり、うまくいくと次はこうしてみようと考えることが楽しくなってきて、「壮大な子育て実証プロジェクト」が始まったような感じでした。

コチ丸の通う小学校には診断のことは伝えたものの、小さな学校だったこともあり、通級指導教室はもちろん、特別支援学級もまだなかったので、当時はみんなと同じ授業を受けるしかありませんでした。小2の時は担任の先生がいろいろと試してくれたり、逐一報告をくれたりしていたので、学校に通うこともそこまでハードルは高いものではありませんでした。

が、あんなに「イージーモード(笑)と思っていた学校」と「地獄絵図のようだった家」での生活が逆転するとは……まだ知る由もない私とコチ丸でした。

わが家の「壮大な子育て実証プロジェクト」のその後

「壮大な子育て実証プロジェクト」ですが、高2の現在も相変わらず続いております(離れて暮らしているので、予定していたよりはちょっとイレギュラーな環境ではありますが……)。「こう育てたらこうなるのかな?」という予測を立てながら育てていって、伏線回収のように忘れた頃に「あの時のこれが今効いてきたのか」みたいなことが多々あって面白いです。

その中の1つで、「やりたいと思ったことは全てやる」をコチ丸が子どもの頃から実践し続けてきたわが家。最近、高校卒業後の進路を決める時期になって、馬の勉強をしに北海道に来たのに、「ちょっと海の勉強もいいな」と海洋学部を受けようかと相談された時にはさすがに唖然としましたが……。

好きなことを好きなだけやらせた結果、「なんでもやれる気がする自信満々な子」が育ちつつあります(笑)。それもまた面白いな、と息子の成長を楽しんでいる母です。

執筆/あき

(監修:藤井先生より)
対処法を試す日々が積み重なって「なんでもやれる気がする自信満々な子」にコチ丸さんが成長されたんですね。成長を楽しんでいるあきさんの経験が、子育て中の親御さんの励ましになりますね。私自身も読みながらとても温かい気持ちになりました。ありがとうございました。発達障害に関する本には、さまざまな対処法が載っていますが、必ずしも全ての方に効果があるとは限りません。そのため、学校などと連携しながら、少しでも効果がありそうな方法を試されるのは良いですね。受診したことで診断を受けられたのが大きな一歩だったと思います。今、お子さんが学校や園などの集団生活でうまくいかないことなどがあり、対処法が分からない場合には、受診することをお勧めします。

(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。

ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。

ADHD(注意欠如多動症)
注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。
ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。

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