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「特別支援学級がいい」学校見学で実感するも、申請期限は2週間後…診察、診断書は間に合う!?

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「特別支援学級がいい」学校見学で実感するも、申請期限は2週間後…診察、診断書は間に合う!?

監修:新美妙美

信州大学医学部子どものこころの発達医学教室 特任助教

就学相談の後、特別支援学級の見学へ

わが家の長男は4歳の時、軽度の知的障害(知的発達症)と診断されました。小学校での就学先を検討するにあたり、知能検査を再度受けることになりました。その結果IQが100あったため、就学相談では通常学級への就学を勧められました。しかし長男は、集団生活の中では指示を聞けなかったり、活動に参加できなかったりすることがほとんどだったため、通常学級への就学には大きな不安がありました。

通っていた療育の先生に「長男くんに合っていると思います」と勧められたこともあり、自閉症・情緒障害特別支援学級が気になっていたわが家。就学相談で聞いてみましたが、私たちの住む自治体では、ASD(自閉スペクトラム症)の診断を受けているお子さんしか対象にならないことが判明しました。取り急ぎ、再度診察してもらうためにかかりつけの病院へ予約を入れましたが、予約できたのは数か月後。診察を待つ間に、特別支援学級の見学に行かせてもらえることになりました。

いざ見学に行ってみると、学校内はとても綺麗で、特別支援学級の子どもたちのために、小人数用のクラスが何部屋か設けられていました。教室には、一人ひとりが集中できるように机と机の間にパーテーションが設置されているなど、環境に配慮がなされていました。また、特別支援学級の生徒専用の立派な体育館やプールがあり、設備も充実していました。特別支援学級の先生たちもとても優しく丁寧で、長男を特別支援学級に就学させたいという気持ちがより一層強くなりました。

なんと診断書提出の締め切りは2週間後!?このままでは間に合わない事態に

学校見学の後、再び就学相談員さんと面談し、改めて自閉症・情緒障害特別支援学級への就学を希望したいというお話をしたのですが……

なんと特別支援学級への就学希望の書類提出日は2週間後に迫っていることをこの時初めて伝えられました。提出書類にはASD(自閉スペクトラム症)の診断書も必要ですが、かかりつけの病院の予約はまだ先のことで、このままでは診断書が間に合わず申し込みできない可能性が出てきました。病院は予約がいっぱいで診察日を早めることはできず、すぐに診てもらえる病院を改めて探すことになりました。

何とか受診にこぎつけたけれど……診断書はすぐに出してもらえるもの?

療育の先生にも心当たりの病院がないか聞いて、すぐに診てもらえる病院を見つけることができました。
初めて行く病院でASD(自閉スペクトラム症)の診断をしてもらえるのか……不安を抱えながらも長男を連れて病院へ。

いよいよ診察が始まり、療育の先生の意見書を見せたうえで、どんなことで普段困っているかなどの話を懸命に伝えたところ、初回の診察で診断書を書いていただけるか心配していたのですが「ASD(自閉スペクトラム症)の疑いあり」で診断書を書いていただくことができました。

診断書を手に入れ、申請へ!ついに就学先決定

そのまま診断書を受け取って提出にいきたかったのですが、診断書はすぐに書けないのででき上がり次第就学相談所へ郵送するとのことでした。締め切り日も近づいていて間に合うか不安だったのですが、医師にも必ず間に合うように郵送してほしいと念を押し、無事に書類提出日に間に合わせていただきました。

後日、自宅に就学先決定の通知が届き、おそるおそる中身を見てみると……自閉症・情緒障害特別支援学級へ就学できるとのことでした!

相談員さんからは通常学級への就学をずっと勧められていたこともあり、自閉症・情緒障害特別支援学級へ進路を決めるまで時間がかかってしまいました。最後まで不安で落ち着かない日々を過ごしましたが、療育の先生の後押しもあって、自閉症・情緒障害特別支援学級への就学が決定し、心から安心しました。

執筆/プクティ

(監修:新美先生より)
就学相談の紆余曲折エピソードを聞かせて下さりありがとうございます。就学相談や、学びの場(通常学級、通級指導教室、特別支援学級、特別支援学校など)の決定プロセスや基準は、地域(自治体)による差が非常に大きく、また年度によってがらりと変わることもあります。そうしたことを踏まえて、プクティさんのエピソードを読んでいただけたらと思います。

本来は、この診断名じゃないと特別支援学級に入級できないとか、診断書が必須とかいう決まりはなくて、児童一人ひとりの教育支援ニーズに基づいて、関係者と保護者で合意形成していくことになっているはずなのですが、実際には地域ごとのローカル基準がありますね。病院はなかなか予約が取れないし、診断までにかかる時間もまちまちで、締め切りもあって、プクティさん、振り回されてしまい、本当にお疲れ様でしたというよりほか、言葉が出ませんでした。

プクティさんは、療育の先生の後押しもあり、見学に行かれて特別支援学級がいいという保護者の方の明確な意思があったので、このような無理な日程でも必要な診断書を入手して、入級の希望を出すということが迅速にできたのは、すごくよかったと思います。保護者自身が迷っている場合にこのプロセスで学びの場を決定するのであれば、お子さんにとって適切な判断ができるのかという点で不安に思ってしまいました。お子さんの様子をトータルにみて考えられる地域システムの整備が望まれます。

(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。

知的発達症
知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。

ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。

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