魚、野菜、肉、果物...「冷凍のプロ」ニチレイフーズの広報さんに教わる「冷凍保存と解凍のテクニック」
食材を冷凍すると、味が落ちる――そんな常識を覆す冷凍術を、冷凍保存のプロ・ニチレイフーズの広報さんに教えていただきました。ほんの少しの手間で、おいしさ&栄養が長持ち。フードロス対策にもおすすめです。
冷凍すると、こんなメリットがあります
1 細胞壁が壊れて、食材のうま味が出やすく
植物や菌類の細胞には「細胞壁」という被膜があります。食材を冷凍するとこの細胞壁が壊れ、うま味成分や栄養素が溶け出しやすくなります。
2 栄養丸ごと長時間キープ
鮮度の良い状態で速やかに冷凍することで、含有する栄養のほとんどをそのまま保つことができます。冷凍することで、栄養素が増える食品もあります。
3 食べたい分だけ使えてフードロス減
小分けにして冷凍すれば使いたい分だけをサッと取り出せ、食材をムダにすることなく調理が可能に。環境負荷やフードロスの削減に役立ちます。
4 安いときにまとめ買いでき、家計にやさしい
まとめ買いした食材は、冷凍保存でおいしくキープを。経済的な負担を軽減することができ、無理のない節約生活を楽しむことができます。
覚えておくと便利
冷凍保存と解凍のテクニック
まずは冷凍保存の基本ルールからお勉強。食材の味や栄養を保つ冷凍方法についてお届けします。
【冷凍保存】
〈下味を付けて冷凍〉
調味料が食材をコーティングし、乾燥や酸化を防ぎます。そのまま冷凍するのに比べ、食材のおいしさを失うことなく保存することができます。
●こんなメリットが
調味料が食材に染み込むので、時短にもつながります。また、臭みが気になる食材のクセや匂いが軽減できます。
〈加熱してから冷凍〉
葉物野菜はゆでたりレンジで加熱したりした後、できるだけ速やかに冷凍を。肉や魚は、フライパンやオーブンで焼いてからの冷凍も可。
●こんなメリットが
加熱することで、葉物野菜は鮮やかな緑色が保てます。また、取り出してすぐ使えることも大きなメリットに。
〈調理してから冷凍〉
味付け調理をした食材は、粗熱を取ってから冷凍用保存袋に入れ、できるだけ空気に触れないようピチッと閉じてから冷凍庫へ。
●こんなメリットが
調理済みなので、食べたいときにレンジ等で温めるだけでOK。また、冷凍することで味が染みやすくなるので、薄味でも十分おいしくなります。
〈生のまま冷凍〉
食材に合った下処理をすれば、生のまま冷凍保存が可能。肉や魚はドリップ(表面ににじみ出た水分)を拭いてから冷凍するのがコツです。
●こんなメリットが
そのまま冷凍するだけなので、手軽に長期保存が可能に。味や栄養などもある程度キープできます。
【解凍】
〈流水解凍〉
冷凍用保存袋ごとボウルに入れ、流水にあてればOK。全体がやわらかくなれば完全解凍、触ってみて中心がまだかたい状態が半解凍の目安です。
●おすすめの食材・魚
半解凍の状態で使うとドリップが出にくく、おいしさが保てます。解凍後にすぐ使わない場合、数時間であれば、冷蔵庫で保存を。
〈自然解凍〉
冷凍庫から取り出した食材を、冷凍用保存袋に入れたまま常温で解凍する方法。蒸し暑い季節や、腐りやすいものは自然解凍に向かないので注意を。
●おすすめの食材・果物
みかんやオレンジ、柿、りんごなどの果物は、自然解凍で半解凍すると、シャーベット状になり美味!
〈凍ったまま〉
冷凍した食材をそのまま調理に使用することで、味や香りをしっかり残すことができます。薬味野菜など、少量だけ使いたいときにも便利です。
●おすすめの食材・野菜
水分が多い野菜は、解凍すると水気が出てべちゃっとしてしまうので、凍ったまま煮ものや味噌汁にIN!
〈冷蔵庫で〉
冷凍庫から冷蔵庫に移し、時間をかけて解凍することで、食材の品質を保ちながら解凍できるテクニック。劣化や腐敗も防げます。
●おすすめの食材・肉
肉類は、解凍する際にドリップが出る&味が落ちやすいので、冷蔵庫での解凍がおすすめ。半日程度かけてゆっくり解凍を。
この記事は紙&WEBマガジン『毎日が発見』2025年9月号に掲載の情報です。
構成・取材・文/和栗 恵 撮影/齋藤ジン イラスト/シュクヤフミコ 栄養計算/成澤文子