脳のクセや偏見からわかる消費行動とは?【眠れなくなるほど面白い図解プレミアム経済の話】
6:行動経済学における消費行動とは?
前項の通り、私たちの意思決定には、「脳のクセ」や「偏見」があり、それらを「認知バイアス」と一括りにしますが、実は百通り以上もあります。こうした行動経済学の概念中の柱ともなる学説が「プロスペクト理論」です。別名「損失回避の法則」とも呼ばれます。これは「人は目先の利益を求め、損失を回避したい」という人の性向です。「プロスペクト理論」には、「価値関数」と「確率加重関数」が用いられ、この2つの関数が「認知に歪み」をもたらす要素としてグラフで示されます。たとえば、価値関数は「10万円もらった時の嬉しさよりも、10万円を落とした時のガッカリ感のほうが、喜びの2・25倍も感情に影響が及ぶ」とされます。また、確率加重関数は、人は「高い確率を低く、低い確率を高く見積る」という性向を示し、「志望校の合格確立35%」と宣告された受験生でも、「オレはイケルはず」と楽観視したり、「手術の成功率は99%!」と告げられたのに「ひょっとして失敗するかも」などと不安になります。これは確率40%を境に起こる現象です。
一般に、人は買った株が上がると、目先の利益を確定したくて早く売りたくなり、下がった場合は「また上がるはず」と損失を確定せず、売らずにいて、 もっと下がり「塩漬け株」にしがちです。これもプロスペクト理論で説明できる性向です。
また、毎月家賃を払うのがもったいないからと、思い切って35年ローンを組んで5千万円の新築住宅を買う人もいます。
35年という長い年月や、5千万円という大金のローンをうまく払い続けられるのかどうか、といった確率のほうは、かなり低く見積ってしまう残念な人が多いわけです。
人は目先の利益を求め損失は回避したい
プロスペクト理論×損失回避の法則
→人は目先の利益を求め損失は回避したい
【確率加重関数】
人は高い確率を低く、低い確率を高く見積ってしまう性向がある
【価値関数】
10万円もらった時の喜びより10万円を失った時の悲しみのほうが大きい
株価が下がった時になかなか売れず、さらに損失が大きなものになってしまうのもプロスペクト理論で説明できます!
【経済とお金の豆知識】
利用時間限定の「食べ・飲み放題」のビュッフェ料理の店で「元を取らなきゃ」と思ってガツガツ食べるのも「行動経済学」が教える「サンクコスト効果」です。「もったいない精神」がベースなのです。
【出典】『眠れなくなるほど面白い図解プレミアム経済の話』著:神樹兵輔