【入江悠監督「あんのこと」】河合優実さんの表情の変化
静岡新聞教育文化部が200字でお届けする「県内アートさんぽ」。今回は、静岡市葵区の静岡シネ・ギャラリー、沼津市のシネマサンシャイン沼津で6月7日から上映中の入江悠監督「あんのこと」。主演は「ナミビアの砂漠」が第77回カンヌ国際映画祭で国際映画批評家連盟賞に輝いた河合優実さん。7月5日から浜松市中央区のシネマイーラでも上映予定。
母親の日常的なDV、10代半ばからの売春、覚醒剤常習、左腕にはリストカットの跡が多数。河合さん演じる杏は、小学校中退で社会に居場所を失っている。カサカサな肌と目の下のくまが目立つ河合さんが、佐藤二朗さん演じる多々良の導きで人間らしい表情を獲得していく過程が印象的。そして、善悪の鮮やかな反転も。「名もなき人」の八方塞がりな生活を、淡々と、しかしドラマとメッセージを交えて映画に結実させた制作陣に拍手。(は)