【不登校35万人時代のリアル】発達障害との関連や前兆、家での対応、学校連携、支援などの疑問【精神科医解説】
監修:桑原斉
埼玉医科大学病院神経精神科・心療内科教授
不登校児童生徒数は増加傾向。どのような対応が求められる?【リアル実践例】
文部科学省は不登校を「何らかの心理的、情緒的、身体的、あるいは社会的要因・背景により、児童生徒が登校しないあるいはしたくともできない状況にある者(ただし「病気」や「経済的理由」による者を除く。)かつ、年度間に30日以上登校しなかった児童生徒のことと定義をしています。
2024年の調査によると小・中学校における不登校児童生徒数は353,970人と過去最多となっています。文部科学省は、その背景としていくつかの要因が組み合わさっていると分析していますが、その中では発達障害などで特別な配慮が必要なお子さんへの適切な支援体制に課題があったことが指摘されています。
実際に子どもからの「学校に行きたくない」というサインに対してどう対応したら良いのか悩むこともあると思います。ここでは家庭・学校・専門機関でできる実践例を紹介します。
しっかりと休息をとる:学校に行けないことへの罪悪感や不安を和らげ、「休んでも大丈夫」というメッセージを伝えて安心できる環境をつくる。気持ちを受け止める:無理に理由を聞き出そうとせずに、子どものタイミングに任せて、否定せずに話を聞く。好きなことを尊重する:ゲームや動画視聴などを完全に禁止にせずに、ルールなどを決め、子どもが好きなことに没頭できる時間を認める。生活リズムを整える:昼夜逆転などを防ぐために、起きる時間や寝る時間、食事の時間をなるべく一定に保つよう心がけます。大切なのは、家庭を「安心できる安全基地」にすることです。
情報共有:担任の先生、スクールカウンセラー、特別支援教育コーディネーターなどに、お子さんの特性や家での様子を具体的に伝える。環境調整の相談:教室の座席の調整、1日のスケジュールを視覚的に示す、クールダウンできるスペースを確保してもらうなど、お子さんの特性に合わせて環境を調整する。スモールステップでの登校:いきなり教室に戻ることを目指さず、保健室登校や相談室登校、別室での学習から始める。また、オンライン授業やタブレット学習を活用し、自宅で授業に参加できるようにする。
家庭や学校だけでは対応が難しい場合、専門的なサポートの活用も有効です。
主なサポート先として
訪問看護や居宅訪問型児童発達支援などの利用放課後等デイサービスフリースクール教育支援センター(適応指導教室)などが挙げられます。
※これらは一例です。子どもの様子に合わせて無理のない対応をしましょう。
行き渋り、前兆、学校との連携などの疑問に専門家が回答!発達障害×不登校Q&A
子どもの不登校、行き渋り、その前兆や学校との連携などの保護者からのリアルな疑問に精神科医であり、森町なごみ診療所・院長の池谷和先生にご回答を頂きました。
Q:小1の子どもがASD(自閉スペクトラム症)とADHD(注意欠如多動症)と診断されています。もともと消極的なタイプで、長期休み明けなどは学校に行き渋ることも多々あります。本人の自己肯定感を下げないために、親は日々どのような声かけを心がけるべきですか?
A:自己肯定感は、幼少期に築いた親子の信頼感をベースに、自分はできる!という自己効力感と、他者からの評価で成り立っています。登校渋りがあるお子さんは、学校に対する不安感や苦手意識があり、自己効力感が下がりやすいと思われます。毎日の生活の中で、小さなことでもいいので、本人ができていることを言葉にして伝えましょう。できないことはそっとサポートし、できていることに注目しましょう。また、習い事や家族の時間など、学校以外で本人が楽しめること、自信を持てることを探してみるのもよいと思います。
Q:小4の子どもがいます。境界知能(IQ80前後)でもともと勉強が苦手だったのですが、高学年になりさらに勉強が難しくなってきたのかここ最近宿題をやらなくなったり、以前はしていた学校の話をしなくなったりしていることが気がかりです。どのように対応すればよいですか?
A:まずは、学校の先生に「宿題をやらなくなった」「学校の話をしなくなった」ことについて相談してみましょう。そして「授業についていけているのか?」「友だち関係を含む学校での様子に変化はないか?」を確認しましょう。宿題が難しくてできないと本人が感じているのであれば「一緒に担任の先生に相談しよう」と子どもにもちかけ、量や内容を調整してもらうとよいでしょう。「子どもが困っていることを解決したいと大人は思っている」ということが子どもに伝わると、困った時に相談できるようになります。状況によっては、通級指導教室や特別支援学級を検討してもよいかもしれません。
Q:ASD(自閉スペクトラム症)の小2の子どもがいます。「学校に行きたくない理由」を聞いても、本人が「分からない」「なんとなく」としか答えません。本音を引き出す方法はありますか?そもそも理由を尋ねないほうが良いのでしょうか。
A:本音を隠しているのではなく、本人にも本当に分からないのだと思います。自分が何に困っているのかを自覚し言葉にするのは、子どもにとって難しいことですし、ASD(自閉スペクトラム症)の子どもは特に苦手とすることが少なくありません。子どもがストレスに感じていることはないだろうかと周囲が観察し、想像することが大切です。後述の「発達障害と不登校の関連性」を参考にしてみてください。
「なんだか分からないけど学校が大変なのかもね」「もしなにか困っていることがあれば、お母さんや学校の先生が解決できるかもしれないから、思いついたら教えてね」などと本人に伝えておくとよいでしょう。
Q:子どもが学校を休みがちになった場合、担任の先生とはどのくらいの頻度で、どのような内容(学習の遅れ、友人関係など)を情報共有すべきですか?
A:どのくらいの頻度で担任の先生と連絡をとるべきなのか、という質問には、正解はないと思います。「先生からの連絡が少ない」と不信感を抱く親御さんもいれば、「先生からの連絡が頻回でプレッシャーになる」とおっしゃる親御さんもいます。大切なことは、親の考えと担任の先生の考えをすり合わせておく、ということです。親が現状をどう考えているか、学校にどのように対応してもらいたいと思っているかを伝えましょう。また、学校で気になる言動があれば、その都度連絡してもらうとよいでしょう。
不登校児童・生徒数は小中全体で353,970人【2024年 文部科学省データ】
2024年の調査によると小・中学校における不登校児童生徒数は353,970人(前年度346,482人)と過去最多となっています(小学校137,704人(前年度130,370人)、中学校216,266人(前年度216,112人))。
文部科学省の調査(小・中学校)では、学校が把握した状況について「学校生活に対してやる気が出ない等の相談があった」が30.1%と最も多くなっています。続いて、「生活リズムの不調に関する相談」(25.0%)、「不安・抑うつの相談」(24.3%)がほぼ同率で多く、次いで「学業の不振や頻繁な宿題の未提出が見られた」(15.6%)という状況が報告されています。
こうした状況には、単なる「怠け」や「わがまま」ではなく、子どもの発達特性による困り感やSOSが表れている可能性もあります。そして発達特性のあるお子さんの場合、その困難さが目に見えにくいのかもしれません。
また、不登校の子どもの6割が専門機関に相談し、95%以上が「誰か」と繋がっているという結果が報告されています。調査では、不登校の児童生徒の61.7%が、学校内の相談室や、学校外の医療機関、相談・支援機関などで専門的な相談・指導を受けており、そこに学校内外の機関等で相談・指導を受けていなくても、担任などから週1回程度以上の継続的な相談などを受けていた子どもを加えると、全体の95.8%が何らかの形で学校や外部機関と「つながり」を持っているという結果となりました。
子どもの行き渋りや不登校などで不安に思われるかもしれませんが、多くのご家庭が専門的なサポートを活用したり、学校と連携したりしながら対応をしています。
発達障害と不登校の関連性。なぜ発達障害があると不登校になりやすい?
不登校の子どもの背景要因について、教職員および保護者に回答を求めたところ、不登校の児童生徒で「発達障害の診断・疑い」があると回答した教師は20.6%で、不登校ではない児童生徒の5.3%よりも、高いという結果でした。
また、不登校の児童生徒の保護者の31.0%(不登校ではない児童のデータはなし)が「発達障害の診断・疑いがある」と回答しており、学校に行き渋る、行けなくなる、その背景に子どもの特性が関係しているのでは、と感じる保護者は少なくないようです。
では、子どもの様子に不安を感じたとき、専門家や学校の先生にどう相談したらよいでしょうか。困難別によくある要因・悩みをまとめましたので、相談時の参考にしてみてください。
友だちとの会話で冗談やジョークが理解できず真に受けてしまい、浮いてしまう「空気を読む」ことが苦手で、暗黙のルールなどへの対応が難しく集団行動で孤立しやすい自分の気持ちや困りごとをうまく言葉で伝えられない
板書を書き写すのが極端に遅い、または文字を読むのに時間がかかる授業などに集中できずに、先生の話を聞き続けられない忘れ物や提出物を出せないことが多い
感覚過敏による教室のざわめき、蛍光灯の光、給食の匂いなどの苦手さ急な予定変更などに強い不安を感じる(見通しがない状況が不安)
周囲に合わせようと常に周りに気を遣い、疲れてしまう学校でエネルギーを使い果たし、家に帰ると動けなくなってしまう
このような困難さが見られる場合には、学校に相談し、過ごしやすくなるように環境調整(合理的配慮を含む)を行うことが必要な場合もあります。困難が日々積み重なると、子どもにとって学校は「安心できる場所」ではなく、「つらい場所」になってしまいます。周囲から「怠けている」「努力が足りない」と誤解され、自己肯定感が低下することも少なくありません。
子どもの気持ちを受け止め、その子のペースで一歩ずつ
子どもの「学校に行きたくない」というサインに、不安や焦りを感じることもあると思います。ですが、何より大切なのは、ご家庭が「安心できる安全基地」であること、そして保護者の方が一人で抱え込まないことです。
まずはしっかり休養をとり、子どもの気持ちを受け止め、使えるサポートを活用しながら、お子さんのペースで無理をせず一歩ずつ進んでいきましょう。
コラム全体ご監修/桑原 斉先生
コラム内Q&Aご回答/池谷 和先生
(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。
神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。
ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
ADHD(注意欠如多動症)
注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。
ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。