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ものづくりの町、燕市の小さな醸造場で誕生した「ツバメビール」。

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ものづくりの町、燕市の小さな醸造場で誕生した「ツバメビール」。

燕市粟生津地区にあるワークスペース「AOUZE BASE」内に、燕市初の地ビールとして注目を集める「ツバメビール」の醸造場があります。燕市の特産を原材料に使ったり、日本海の夕日をイメージした赤いビールがあったりとご当地感あふれる「ツバメビール」について、製造者の前部屋さんにいろいろとお話を聞いてきました。

ツバメビール

前部屋 公彦 Kimihiko Maebeya

1976年和歌山県生まれ。大学卒業後、岸和田市の電子機器メーカーに就職し設計技術職に携わる。同僚の誘いで燕市の「株式会社本宏製作所」に転職。2022年「May Corporation株式会社」を立ち上げ、「ツバメビール」の製造・販売をスタート。生粋のビール好き。

仕事でもプライベートでも支えてもらった恩を、かたちに。

——前部屋さんは、和歌山県のご出身なんですね。

前部屋さん:大学を卒業して大阪府岸和田市の電子機器メーカーに就職しました。信号発生機という映像を処理する機材を製造する会社で、設計の仕事をしていたんですよ。8年ほど働きまして、上司からの誘いで燕市の「本宏製作所」さんに転職し、引き続き設計技術を担当しました。

——それで新潟に来られたんですね。

前部屋さん:最初に勤めた会社はOEM生産だったのでエンドユーザーさんと関わることがほとんどなかったんです。でも「本宏製作所」さんでは、エンドユーザーである放送局の方とご一緒することも多くて。皆さん、目指すレベル、求めるレベルが高かったので、それに応えるおもしろさがありましたね。

——「本宏製作所」さんには長くお勤めだったんですか?

前部屋さん:14、15年はお世話になりました。

——それから独立されたんですね。

前部屋さん:お客さまから保守をお任せいただいているので、現在もICTの分野に少し関わってはいるんですけど、2022年に「May Corporation株式会社」を立ち上げて、「ツバメビール」の製造販売をしています。

——どうして地ビール醸造をはじめようと思われたんでしょう? 設計職として十分なキャリアをお持ちなのに。

前部屋さん:職場で「新しい事業を考える」「新商品の企画をする」機会が度々あって、私なりに地元である燕市に貢献できるサービスを考えていたんです。ただ在職中はなかなか具体的には進まなくて。どうしても「地域に貢献したい」という気持ちが強くて、自分の大好きなビールでチャレンジしてみようって思ったんです。

——そうは言っても迷いはありませんでした?

前部屋さん:迷いはあまりなかったです。クラフトビール造りはずっと先のステップで、まずは「地元の皆さんに喜ばれることにつながればいいな」って気持ちが先行しているんだと思います。これまで地元の皆さんに仕事でもプライベートでもたくさん助けてもらったので、「地域に貢献したい」「誰かの役に立ちたい」って気持ちがあるんですよね。

燕市の特産を使い、地元の風景や産業をイメージした独自のクラフトビール。

——まったくの別業態をはじめられるなんて、前部屋さんは意思が固いタイプ?

前部屋さん:どうでしょう(笑)。「やるぞ」と決めたのは私ですけど、周りに相談できる方が何名もいて、ある人に相談したら、設備関係の人を紹介してくれる。その人が今度は不動産会社さんを紹介してくれるって感じで、いろんなご縁に恵まれてはじめられたんですよね。

——前部屋さんにとって、燕市はどんな場所ですか?

前部屋さん:私にとっては終焉の地ですかね。燕市で結婚して、子どもたちもここで育っていますので。和歌山県出身なので、当然ですけど燕市には知り合いも友達もいませんでした。だけど皆さんによくしてもらって、地域に馴染ませてもらえたと思っているんです。本当にありがたいですよね。ご縁、ご縁で今に至っています。

——ビール造りはどうやって学んだんでしょう?

前部屋さん:いろいろな醸造者さんの話を聞いたり、県外に研修に行ったりしました。あとホームブルーワリーといって、10リットルくらいの少量のビールを、法律を遵守しアルコール1%以下で製造することもしました。なかなか美味しいビールができなかったので、きちんとした製造方法を教わるためにも研修は必要でしたね。

——「ツバメビール」の特色を教えてください。

前部屋さん:全部で5種類あります。最初に造ったのは、「TSUBAME CRAFT SAISON」というお米を原料に加えたビールです。地元の素材を使いたいと思っていたところ、粟生津地区の「小島農場」さんが自然栽培でお米を生産していると知りました。無農薬、無肥料という大きなチャレンジをされているところが自分の境遇と同じに思えて、とても共感しました。このビールは、ライトなテイストでビールが苦手な方でも飲みやすい仕上がりです。

——他のビールはどうでしょう?

前部屋さん:「TSUBAME CRAFT SESSION IPA」は、新潟の柚子を使っています。しっかりとした苦味が醍醐味です。「TSUBAME CRAFT WEIZEN」は燕の「越の雫」という品種のいちじくを原材料にしたいと考えて造りました。爽やかな香りと甘みが感じられる美味しいビールになったと思います。「TSUBAME CRAFT RED IPA」は日本海の夕日をイメージした赤いお酒、「TSUBAME CRAFT IRON STOUT」は燕三条の鉄をヒントに黒みを帯びた仕上がりにしました。もうひとつ、正確な根拠があるかは自信がないですけどレモンは金属製品と相性がよいと聞いて、レモンを原材料に使用した「TSUBAME CRAFT PALE ALE」も造りました。燕三条で作られる金属の酒器にぴったりだと思いまして。

——格別こだわっていることは?

前部屋さん:ビールが苦手な方にも飲んでいただける、飲みやすいビールを造ろうと思っています。一方で、クラフトビール好きな方が「なんだこれ?!」と驚くようなパンチのある味わいのビールも造りたいんですよね。

生産量は増加中。今年の夏は「ツバメビール」で乾杯。

——構想中のビールもありますか?

前部屋さん:4月中旬には、越後姫を原材料に使用したIPAができあがる予定です。春らしいビールを造りたかったですし、越後姫は県外にあまり流通しないと聞くのでトライしました。

——「ツバメビール」はどこで飲むことができるんでしょう?

前部屋さん:燕市の複合施設「Next Genaration Town」内の店舗で、サーバー提供をしています。瓶ビールの販売は醸造場でお買い求めいただけます。

——クラフトビールって、なんだか特別感がありますよね。ギフトにもぴったりだし、旅行先の楽しみでもあります。そんな地ビールを生み出した達成感はありますか?

前部屋さん:たくさん失敗して、やっと納得できるビールが造れるようになったので、まだ達成感に浸る余裕がないです(笑)。クラフトビールって季節によって発酵具合がぜんぜん違うんですよ。そういったところをこの1年でしっかり学んだので、次に生かすつもりでいます。

——なるほど。そういう意味では毎年の積み重ねが大事ですね。

前部屋さん:今の造り方をしばらく続けて、まずこの地域の皆さんに安定した美味しさをお届けしたいですね。経営者の方からは「一気に投資した方がいいよ」とアドバイスをいただくんです。大きく舵を切らないといけないんだろうなと思いつつ、まだ投資する資金がないので模索中です。

——これから私たちが「ツバメビール」を楽しめる機会は増えそうですね。

前部屋さん:去年よりも生産量を増やせているので、皆さんに「ツバメビール」を知ってもらえるように積極的にプロモーションしないとですね。夏の繁忙期を迎えるのは今年がはじめてなので、リクエストにしっかり応えられるように製造したいと思っています。

ツバメビール

工場・販売所:燕市粟生津272-1 AOUZE BASE

店舗:燕市西太田844-1 Next Genaration Town内

tel/050-5482-3139

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