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釜石や大槌でもクマ出没増 人身被害も 関係機関、情報共有「知らないをなくしたい」

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 釜石・大槌地区ツキノワグマ管理協議会は21日、釜石市新町の釜石地区合同庁舎で本年度2回目の会合を開いた。例年は1度の開催だが、今年は人身被害が相次いでいることから、関係者間の情報共有を図ろうと回数を増やした。岩手県や釜石市、大槌町の鳥獣被害対策担当者、猟友会、農業や林業関係者など約20人が出席。広範で効率的な情報収集により市街地に出没した時に迅速に対応すべく知恵を絞った。

 県沿岸広域振興局環境衛生課の担当者が県内の出没状況を説明。今年はブナなどのドングリが大凶作のため、目撃や痕跡で確認されたクマの出没数は9月末時点で3368件と、前年同期の2049件に比べて急増している。人身被害は11月8日時点で死亡2人を含む43件46人(前年同期21件22人)。例年、出没のピークは8月で、9月には減少傾向となるが、今年は6月(873件)をピークに減ってはいるが、数字的には高い水準で推移している。

クマ出没に関する資料を確認しながら情報共有


 釜石市でも県と同様に出没数が急増。今年、これまでに確認されたのは284件で、昨年1年間(143件)の約2倍となっている。6月の65件をピークに1桁となる月もあったが、10、11月は50件前後と増加。それに伴い、人身被害も発生している。

 「2件になってしまった」。市水産農林課の宮本祥子さん(林業振興係長)が市内に残るクマの痕跡を示しながら人身被害の状況を話した。10月と11月に1件ずつ発生し、場所はともに甲子地区内。このうち、散歩中の80代女性がクマに襲われ負傷した10月のケースは、市がクマの出没を把握していない場所で起こった。事後に住民らに聞き取りをすると、「近くに柿の木があって以前からクマがうろついていた」というが、市には連絡していなかった。「行政だけでは情報を得られない。広く共有するには住民の協力が必要。報告が重要になる」と、苦い事例にやるせなさをにじませた。

釜石市内での事例を伝える宮本さん(奥)


クマのものとみられる痕跡を示して情報提供


 11月に発生したのは、以前から出没を確認していた柿畑。少し前に1頭を捕獲し、市では「被害はおさまる」と考えていた。だが、結果的に別の個体が害をもたらし、畑の様子を見に来た70代女性がけがを負った。2件とも柿の木が誘因物の一つと考えられ、宮本さんはクマのものとみられる爪痕がある幹、折られた枝、周辺に残されたふんの写真を表示しながら、「クマの出没を知らない状況を極力なくしたい。小さな変化でも気になることがあれば連絡してほしい」と求めた。

 出席者から、6月に出没が増えた要因や次年度の予測について質問が上がった。沿岸振興局の担当者は「急増の要因は把握できていないが、全県的に生息頭数が増えていると推測される」と回答。本年度の捕獲上限は686頭としているが、10月13日時点で捕獲数は591頭に上り、過去最多を更新。人身被害や市街地への出没が多発しており、「来年度は上限を110頭増やし、796頭とすることが決まっている」とした。

会合ではクマ対策をめぐって意見を交わした


 大槌町でも2件の人身被害が発生しており、町の担当者は「この時期になっても、まだ出没を前提にした対応をしなければならない。誘因物の除去も大事だが、一つ除いても次のリスクにつながるのではと感じる。いたちごっこのよう。どういうゴールを目指すのか、分からない」と困惑。釜石地方森林組合の関係者らはドングリが実る広葉樹を針葉樹林に増やす混交林に触れ、「植樹は時間がかかるが、検討していく必要があるのでは」と考えを伝えた。

 沿岸振興局保健福祉環境部の田村良彦部長は「普段から連携をとっているが、さらに強化したい。痕跡を早期に発見、共有して住民に還元し、人身被害の防止につなげていく」と強調した。

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