非行や犯罪に走りやすいのは環境?遺伝?【眠れなくなるほど面白い 図解 遺伝の話】
非行や犯罪は環境?それとも遺伝?
若年期とそれ以降で傾向が変わる
非行や犯罪といった反社会的行動についても、遺伝との関係を示すデータがあります。これらの行動に走りやすいかどうかは、もともとの遺伝的素質が影響しているわけです。ただ、これは若年期とそれ以降とで状況が変わってきます。
若いうちは“若気の至り”という言葉があるように、勢いや誘惑でつい非行に走ってしまうこともあるでしょう。15歳未満の家出、虐待、器物破損、窃盗のデータによると、この時点では遺伝の影響はゼロで、共有環境と非共有環境のふたつが非行に影響しています。育った環境や付き合う仲間などによって、非行に走るかどうかが変わってくるといえます。
それが、15歳を過ぎると状況が一変します。社会規範への不従順、攻撃的行動、衝動的行動、不倫の4項目について見ると、遺伝の影響が大きく現われ、逆に共有環境の影響はなくなります。分別がつくようになってからの非行や犯罪は、悪いとわかっていながらもやってしまう行動であり、これにはもともとの遺伝的素質が関わってくるわけです。ただ、前項の依存症のところで述べたように、遺伝的素質を持っていても環境次第では結果が変わってきます。また、犯罪といっても政治犯や思想犯などは文化や社会状況次第であり、これらは一概に遺伝子の影響とはいえない側面もあります。
非行と遺伝の関係
非行への遺伝と環境の影響度(15歳未満)
非行への遺伝と環境の影響度(15歳以上)
非行や犯罪への遺伝の影響は、15歳未満とそれ以降とで変わってきます。15歳未満では共有環境に左右されますが、15歳以降では遺伝の影響が大きくなってきます。分別がつくようになってからの行動は、遺伝的素質が現われやすいことが見て取れます。
若いうちは共有環境、それ以降は遺伝の影響が大きい
遺伝と環境の交互作用
遺伝的素質があっても、必ず非行や犯罪に走るわけではありません。環境次第で非行しやすくなったり、逆にしにくくなったりします。このように、遺伝と環境が合わさって影響することを「遺伝と環境の交互作用」といいます。
【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 遺伝の話』著:安藤 寿康