かわいい姿で人気の深海魚<ミドリフサアンコウ>を食べてみた 見た目は<フグ+カエル>?
ミドリフサアンコウはフグとカエルを足して2で割ったような見た目をした、アンコウ目・フサアンコウ科・フサアンコウ属の深海魚です。
深海魚というと“グロテスク”なイメージの魚もいますが、このミドリフサアンコウはかわいい姿で人気があります。
そして、このミドリフサアンコウは美味しく食べることもできるのです。
ミドリフサアンコウとは
ミドリフサアンコウChaunax abeiLe Danois, 1978はアンコウ目・フサアンコウ科・フサアンコウ属の魚類です。
アンコウ目の魚ではあるのですが、大型になり食用魚として有名なアンコウ(アンコウ科)とはまた別の科の魚です。体はピンク色で、体側には大きな黄緑色の斑点が散らばっていることで、深海魚の中では珍しくカラフルな魚といえるでしょう。
なお、学名Chaunax abeiのうち、種小名の「abei」というのは日本の阿部宗明博士にちなむものです。
フサアンコウ科の魚たち
アンコウ目フサアンコウ科の魚は2属、30種以上が世界中の熱帯~温帯域の深海から知られており、うち4種が日本近海に分布しています。
長いこと日本産のフサアンコウ科魚類は3種とされてきましたが、近年になってアカフウセンという種があたらしく日本から記録されました。いずれの種も体は小棘に覆われており、短い誘引突起をもっています。
日本産フサアンコウ属魚類4種の中でもこのミドリフサアンコウは最もよく見られるもので、私がこれまで見てきたフサアンコウ科魚類についても、ほとんどの個体はこのミドリフサアンコウに同定されるものでした。
ミドリフサアンコウとほかの日本産フサアンコウ属魚類では、ミドリフサアンコウは体中に緑色の斑点があることにより、ホンフサアンコウ、ハナグロフサアンコウ、アカフウセンと見分けられます。
水族館で飼育されることも
深海魚は水族館でもなかなかお目にかかれないものです。
一方、ミドリフサアンコウは比較的見られる深海魚で、たまに水族館で飼育されることもあれば、極稀に観賞魚店で販売されることもあります。しかし、飼育に関しては決して簡単とは言えません。
これは、そもそも状態よく漁獲される個体が少ないことに起因しています。本種は主に漁獲される底曳網漁業では、魚が深い海から上がってくるわけですから、水温や水圧が急激に変化してしまいます。
また、網の中に入っているほかの魚と一緒に上がってくるうちに、ほかの魚の棘やカニなど節足動物の足などにより傷つくこともあるため、弱ってしまうのも仕方がないのかもしれません。
ミドリフサアンコウの漁法
ミドリフサアンコウは深海の釣りでも釣れることはない、というわけではないのですが、基本的には底曳網漁業で漁獲されることがほとんどです。
三重県尾鷲で水揚げされているものに関しては、現地で重要な食用魚になっているようです。
筆者も沖合底曳網漁船にのせていただいた際に、ミドリフサアンコウが獲れたことがありました。
基本的には水深150メートル前後の平らな海底を曳いたときに網に入ることが多いように思われましたが、その生息水深は広く、水深75~500メートルほどの場所に生息しています。
分布域は青森県、富山湾、九州北部沿岸と千葉県銚子~九州南部、東シナ海で、海外では台湾と朝鮮半島南岸などに見られますが、琉球列島ではほとんど見られないようです。
ミドリフサアンコウを美味しく食べる
ミドリフサアンコウを含むアンコウ目の魚類は美味しい魚が多く、本種も食用とされています。
しかしながら、積極的に利用されるというよりは、底曳網漁業で獲れた個体を利用するという意味合いが強く、流通も稀です。
余すとこなく頂ける「汁物」
2013年に三重県尾鷲を訪問した際にミドリフサアンコウを入手しました。アンコウ科の魚は身のほか、肝臓や生殖巣、皮なども余すことなく食べられます。
しかし、フサアンコウ科の魚であるミドリフサアンコウの皮は小さな棘におおわれており、ビロードのようで、なかなか食べにくいものです。
そのため皮はあらかじめはいでしまいますが、方法は簡単で、ハサミで切れ込みを入れると簡単にむくことができます。身や鰭、肝臓、胃、生殖巣などを入れて味噌汁にしてみましたが、これが非常に美味でした。
身は柔くて美味しい「唐揚げ」
2021年に「深海魚直送便」のなかの「ヘンテコ深海魚便」というサービスを使用しました。
これは静岡県戸田で操業している底曳網漁業で漁獲されたもののうち、従来、廃棄されていた魚や甲殻類などを販売・発送してくれるもので、運が良ければ珍しい魚なども入っている可能性があります。
その中にミドリフサアンコウの小型(全長3~7センチほど)の個体が4匹入っていましたが、これらは味噌汁として食べるにはどうしても小さすぎるので、唐揚げにしてみました。
皮を剥いで、内臓をとった後、唐揚げ粉をまぶして揚げます。
身はやわらかくて美味しいものでしたが、頭部は硬くてうまく食べることはできませんでした。
ミドリフサアンコウをぜひ食べてみてほしい
ミドリフサアンコウはとても美味しいですが、広く流通しないため、なかなか入手の機会がない魚でもあります。
しかし最近は、ECサイトができたり、廃棄されてきた魚を利用しようという試みが各地で見られたりすることから、深海魚も以前よりは入手しやすくなりました。
ぜひともミドリフサアンコウの味を堪能してほしいと思います。
(サカナトライター:椎名まさと)
参考文献
小泉雄大・田城文人. 2020. 三重県沖で採集された斑紋を欠く日本初記録のフサアンコウ属魚類. 魚類学雑誌. 67(2):203–207.
中坊徹次編. 2013.日本産魚類検索 全種の同定 第三版.東海大学出版会.秦野.
岡本 誠・本村浩之編著.2024.日本の深海魚図鑑.山と渓谷社.東京.
冨山一郎・阿部宗明・時岡 隆.1958.原色動物大圖鑑2巻.脊椎動物魚綱・円口綱,原索動物.北隆館,東京.
山田梅芳・時村宗春・堀川博史・中坊徹次. 2007. 東シナ海・黄海の魚類誌.東海大学出版会,秦野.