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倉敷アイビースクエア 近藤菜月さん ~ 倉敷が誇る「泊まれる文化施設」で、一人ひとりに合わせたおもてなしを(若手が紡ぐ倉敷仕事物語 Vol.10)/倉敷市

倉敷とことこ

倉敷アイビースクエア 近藤菜月さん ~ 倉敷が誇る「泊まれる文化施設」で、一人ひとりに合わせたおもてなしを(若手が紡ぐ倉敷仕事物語 Vol.10)

倉敷美観地区に位置し、観光名所としても名高い倉敷アイビースクエア

ホテルやレストラン、お土産ショップといった観光客でにぎわう施設から、倉紡記念館やアイビー学館といった文化施設まで、歴史ある複合観光施設として多くの人が足を運んでいます。

観光地にはわくわくした気持ちで訪れる人がきっと多いはずです。倉敷アイビースクエアで働く人たちは、どのようなおもてなしの心を持って、仕事に取り組んでいるのでしょうか。

倉敷アイビースクエアでホテルスタッフとして働く若手社員、近藤菜月(こんどう なつき)さんを取材しました。

株式会社倉敷アイビースクエアについて

倉敷アイビースクエアの入り口

株式会社倉敷アイビースクエア(以下、「倉敷アイビースクエア」と記載)は、1889年に建設された倉敷紡績所(現「クラボウ」)の本社工場跡地を改修し、1974年に開業しました。

約3万平方メートルの広大な敷地には、ホテルやレストラン、倉紡記念館、体験工房、ショップなどが集まっており、複合観光施設として全国的に知られています。

倉敷アイビースクエアのおもな事業は「ホテル事業」「文化施設の運営」「小売販売業」の三つです。

時代を超えて受け継いできた、美しい赤レンガづくりの建物は、近代化産業遺産や日本遺産にも認定されています。単に観光名所として運営するだけでなく、建物の保存など文化施設を守る取り組みもおこなっているのです。

倉敷アイビースクエアでは、明治時代から続く建物を活用し、この場所ならではの特別な体験を生み出しています。なかでもホテルは「泊まれる文化施設」として国内外から訪れる人が絶えません。

倉敷アイビースクエアで働く近藤菜月さん

近藤菜月(こんどう なつき)さん

取材に応じてくれたのは、宿泊部フロントサービス課に所属している近藤菜月こんどう なつきさんです。1997年生まれ、倉敷市出身です。

子どもの頃から旅行する機会が多かったという近藤さん。
就職活動では興味のあったホテル業界を希望し、自身の強みである韓国語を生かせる環境を志した末に、2020年に倉敷アイビースクエアに入社しました。

近藤さんの仕事内容について

近藤さんのおもな仕事は、チェックイン・チェックアウトなどをおこなうフロント業務や周辺の観光案内といった、宿泊客への接客全般です。

ホテルは24時間体制の運営のため、早番・日勤・遅番といったシフト制で勤務をおこないます。

日勤(※午前9時から午後6時を担当)の仕事内容について聞いてみたところ、メインとなるチェックイン・チェックアウト業務以外にも、細かな役割が数多くありました。

たとえば、タクシーの手配や手荷物の預かりといった接客業務から、会計の締め作業やメールチェック、遅番への引き継ぎといった事務仕事まであります。チェックイン前には客室を回り、お客さんを万全に迎える準備ができているかどうかも確認しているそうです。

観光案内では、倉敷美観地区を中心に、お客さん一人ひとりに合わせた観光スポットやお店を紹介しています。児島方面に向かうお客さんも多く、電車とバスのどちらを利用すると良いのか、最善のルートを提案します。まさに旅のコンシェルジュのような役割も果たしているのです。

そして、倉敷アイビースクエアのおもてなしに欠かせないのが、スタッフ間で徹底されている報連相です。スタッフ間で密に連携し、情報共有をすることで、「誰が対応してもお客様が快適に過ごせるように心がけています」と近藤さんは話します。

倉敷アイビースクエアとの出会い

近藤さんは就職活動をする際、ホテル業界と航空業界に軸を絞っていました。

そのきっかけとなったのは、海外赴任をしていたお父さんの存在です。
子どもの頃から、日常的に飛行機やホテルを利用する機会が多く、旅行ならではのわくわくする空間が好きだったと振り返ります。

さらに、自身の強みでもある韓国語を生かせる環境を探し、出会ったのが倉敷アイビースクエアでした。

倉敷市出身の近藤さんにとって、倉敷アイビースクエアは地元にある観光地。
存在はもちろん知っているけれど、施設をしっかり見て回る機会はあまりなかったそうです。

しかし、初めて参加した会社説明会で、担当者や職場の優しい雰囲気に心が強く惹かれます。その後、選考に進んだ際も、穏やかな空気感で面接が進み、他社の選考よりも心落ち着いた状態で話ができたそうです。

無事に内定が決まった近藤さんは、入社直前の3月に担当者からアルバイトに誘われました。アルバイト期間中に現場の雰囲気にも慣れ、仕事の流れも学び、いよいよ入社……と思いきや、入社直後の2020年4月に、新型コロナウイルス感染症の拡大という異例の事態に見舞われます。

倉敷アイビースクエアは1か月間休業となり、本来なら受けられるはずの研修もすべて中止となってしまいましたが、その代わりに先輩からマンツーマンの指導を受けられました。

「ていねいに指導された当時の時間は、今振り返ればある意味ぜいたくな研修だったかもしれません」と近藤さんは語ります。

近藤さんから見た、「職場」としての倉敷アイビースクエアの魅力とは?

近藤さんに、職場としての倉敷アイビースクエアの魅力を尋ねたところ、まず挙がったのは「社員全員がお客様の気持ちを常に考えていること」でした。

ホテルではお客さんによって臨機応変な対応が求められるため、単なるマニュアル通りの接客では、満足のいくおもてなしには届きません。スタッフ一人ひとりが、自分の個性を生かしておもてなしに励んでいます。

たとえば、お客さんと雑談をして親しみある接客をするスタッフもいれば、近藤さんのようにていねいで落ち着いた接客で安心感を与えるスタッフもいます。

ホテルにはリピーターのお客さんも多く訪れるそうです。来るたびに新たな接客を受けられることは、お客さんにとってリピートしたくなる理由の一つなのかもしれません。

レストラン「蔦」前の廊下

さらに、近藤さんは「お互いを気にかけながら仕事ができる環境」も魅力だと話してくれました。

困っている後輩に対して、本人が聞きに行くよりも早く、先に先輩が「大丈夫?」と声をかける場面が多々あるようです。近藤さんは入社当初、「会社では自分から聞かないと教えてもらえない」と思っていましたが、先輩たちの視野の広さと優しさに驚いたと言います。

ちなみに、会社説明会で感じた穏やかで優しそうな印象は、入社した今でも変わっていないそうです。

倉敷アイビースクエアに入社し、2026年で入社7年目を迎える近藤さん。倉敷を代表する観光名所で働く魅力について話を聞きました。

近藤菜月さんにインタビュー

倉敷アイビースクエアでホテルスタッフとして働く若手社員、近藤菜月(こんどう なつき)さんに話を聞きました。

近藤菜月(こんどう なつき)さん

数々のおもてなしは、お客様一人ひとりに合わせた接客から

──入社されてからお客さんと数多くの出会いがあったと思います。思い出に残っているエピソードはありますか?

近藤(敬称略):

お客様から初めてお手紙を頂いたことは、ずっと心に残っています。

数年前に、新婚旅行で来られた韓国人のご夫婦が宿泊してくださり、チェックインの際に独学で学んだ韓国語でご案内をしました。当時は今よりも韓国からのお客様が少なく、お客様も母国語での対応にとても驚かれていたと思います。

海外のお客様は、和食を召し上がりたいかたが多いので、夕食には倉敷美観地区にあるおいしい焼き鳥屋さんをご紹介しました。そちらのお店に実際に足を運んでくださったようで、チェックアウトの際には「おいしかったよ」と声をかけていただき、さらに、韓国語で「忘れられない旅になりました」と書かれたお手紙とお菓子も頂きました。

限られた短い時間のなかで、お客様の記憶に残るおもてなしができたことが心からうれしかったです

──近藤さんが接客で心がけていることはなんですか

近藤:

どんなに忙しくても必ず落ち着いて、ていねいな接客をするようにしています
私たちが焦ってしまうとお客様も落ち着かないので、言葉遣いはもちろん、所作も含め、きれいに見えるように心がけています。

また、フロントでの数分の会話や表情から、お客様が「早くお部屋で休みたいのか」、それとも「観光の相談をしたいのか」を瞬時に見極めることも重要です。難しい部分でもありますが、場数を踏んで、お客様に合わせて柔軟に対応していきたいと思います。

──お客さんが何を求めているのか、一瞬で考えるんですね。そのような柔軟な対応は、どのように身につけていくのでしょうか。

近藤:

お客様一人ひとりに合わせたおもてなしをするために、各スタッフが自分なりの接客を追求しているんです。

入社直後は先輩のやり方を真似することから始めて、そこから少しずつ自分なりの形を模索していきました。最初の頃は先輩を相手に、接客の練習を何度も繰り返しましたね。それでも初めてお客様の前に立ったときは、緊張で手が震えてしまったことを今でも覚えています。

ホテルはイレギュラーな対応が日常茶飯事です。とにかく数多くのお客様と接して、経験を積むことが大事だと思います。

ワンチームで生み出すホスピタリティ

──ホテルならではの大変さを感じることは何ですか。

近藤:

倉敷アイビースクエアという特別な場所だからこそ、高いホスピタリティを求められます。新婚旅行や修学旅行、「数十年ぶりに来た」というお客様も多く、その期待にお応えしないといけないプレッシャーが常にありますね。

また、6年働いた今でも、イレギュラーな出来事がほぼ毎日起きるんですよ。同じ業務の繰り返しではありますが、同じ接客はないと思います

──個人的に、接客業はお客さんからのご指摘が絶えない仕事だと考えていますが、もしあった場合はどのように対応していますか?

近藤:

まずは二度と同じミスを繰り返さないためにも、スタッフ間で情報を共有し、チェックアウトの際に必ず笑顔でお帰りいただけるように、スタッフ全員で細やかな声かけをしています。

私の個人的なエピソードとして、入社1年目の頃に、タクシーの手配順で配慮が足りず、お客様からお叱りを受けたことがありました。タクシーをお待ちいただいてる間に、後から来られたお客様のタクシーが先に到着してしまったんです。順番が前後する可能性があることを事前にお伝えすれば良かったのですが、当時はその配慮ができていませんでした。

このときの経験から、細かなひとことを添える大切さを学びました。お客様からのご指摘は、サービスをより良くするための貴重な機会だと前向きに捉えています。

──上質なおもてなしには報連相が欠かせないのですね

近藤:

そうですね。お客様ごとの担当がないので、どのスタッフが対応しても一貫したサービスを提供できるよう、徹底した「報連相」が根付いています。

お客様の細かな情報や起きた出来事などは、どんなに忙しくても隙を見て、口頭やメモ、社内ツールで共有し、スタッフ全員が状況を把握できるようにしています。

倉敷アイビースクエアの未来をともに作る仲間とは

──希望していたホテルの仕事に就いてみて、入社前とのギャップを感じたことはありますか?

近藤:

入社前は華やかなイメージがありましたが、想像以上に体力が必要な現場でした。1日中立ちっぱなしだったり、重いスーツケースを運んだりと、力仕事がとにかく多いです。慣れないヒールを履き続けるのも、最初の頃は大変でしたね。

良い意味でギャップがあったのは、社内の人間関係でした。厳しい上下関係はなく、親身で優しいかたばかりで、気軽に話ができる関係性ができています。

──職場はどのような雰囲気ですか?

近藤:

ホテル部門では10代から60代までと幅広い世代のかたが働いていますが、年齢を問わず、フラットに意見交換ができる職場です。新入社員や中途入社のかたでも、なるべく早くチームに馴染めるような環境づくりに全員で取り組んでいます。

また、スタッフ全員の視野が広く、お客様はもちろん、一緒に働く仲間への気配りも欠かしません。私も新入社員の頃に先輩から優しくしていただいたので、今度は私が後輩にその優しさをつないでいきたいと思っています。

──近藤さんが考える、アイビースクエアのホテル業務に向いている人はどのような人だと思いますか。

近藤:

「旅行でわくわくする気持ち」に共感できる人だと思います。

実は私自身、もともと人と話すことがあまり得意ではありません。ただホテルや空港といった、旅行ならではのわくわくする雰囲気が大好きで、今の仕事を選びました。

当ホテルを訪れるお客様は、楽しみや癒やしを求めて来られるかたがほとんどです。だからこそ、まずは自分自身がその場所にわくわくできて、お客様の気持ちに寄り添えるかどうかが何より大切だと思います。

自分らしく咲く。仕事で悩んだときの「転職」以外の選択肢

──近藤さんにとって倉敷アイビースクエアとはどのような存在ですか?

近藤:

毎日通う職場ではありますが、倉敷の歴史が詰まった場所であることを忘れずに働きたいと思っています。

お客様の言葉で、倉敷アイビースクエアの良さを再認識することも多いです。「人生で一度は泊まってみたかった」や「20代の頃から憧れていたホテルなんです」といったお言葉を頂くたびに、倉敷アイビースクエアが素敵な場所であることを改めて実感します。

貴重な環境で働いている自覚を持ちながら、これからもおもてなしを磨いていきたいです。

──同世代の若手に向けて、メッセージをお願いします。

近藤:

私は「置かれた場所で咲きなさい」という言葉を大事にしています。

入社直後は楽しく続けられると思った仕事でも、長く勤めていくと、転職を考える時期がやってくることもあるはずです。ただ、今の環境で自分ができることを探していけば、同じ場所でも頑張れる道が見えてくるかもしれません

私の場合は、韓国語の習得や落ち着いた接客技術など、自分が成長できるポイントを見つけられたことで、憧れていた今の仕事を続けられています。

「転職をして環境を変える」といった選択肢はもちろん、「置かれた環境で頑張る」という選択肢も、一つ持っておくと良いのかなと思います。

おわりに

取材中、筆者は近藤さんの穏やかな話し方に安心感を覚えました。誠実で落ち着いた接客は、初めて倉敷を訪れた人たちにとって、心強い旅のサポーターとなっているはずです。

さらにスタッフ間で徹底されている「報連相」など、お客さんの目に見えない部分で積み重ねている準備が、上質なおもてなしにつながるのだと思いました。

入社して数年経つと、キャリアについて悩む人も増えると思います。現在の環境で、どうすれば自分が成長できるのかを模索すること。近藤さんが考えた長く働き続けるコツは、業界・職種を問わず、通じるものがあります。

今後も自分らしく成長を続ける近藤さんを応援していきましょう。

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