シャンパーニュのレジェンドが造る日本酒 第5弾『アッサンブラージュ 5』がリリース
シャンパーニュ「ドン ペリニヨン」の元醸造最高責任者、リシャール・ジョフロワ氏が富山県で仕込む日本酒「IWA5」。その最新作『アッサンブラージュ 5』がリリースされるにあたり、京都・嵐山の「京都吉兆 嵐山本店」でお披露目会が催された。
「IWA 5」はリシャール氏が長年培ってきたシャンパーニュ造りの技法をサケ造りの世界に取り入れた革新的な日本酒だ。異なる酒米や、酵母の異なる原酒、生酛、過去に仕込んだサケを保存しておいたヴァン・ド・レゼルヴならぬサケ・ド・レゼルヴなど、さまざまな原酒を“アッサンブラージュ”して造り上げる。
普通の酒造メーカーなら毎年、タイプの異なるサケを数種類仕込むのが通例だが、リシャール氏が造るのは「IWA 5」のみ。最初に彼が手がけた「IWA 5」を『アッサンブラージュ 1』とし、2、3、4と来て、今回が5番目のアッサンブラージュというわけだ。実際、これには20以上の異なる原酒がアッサンブラージュされているという。
「すべてゼロからスタートした」と5つ目のIWA 5を世に出したリシャール氏は述懐する。
「土地を探し、スタッフを見つけ、なんとか最初のサケを仕込んだのが5年前。なぜ日本でサケ造りを始めたのかとよく聞かれるが、日本にはたくさんの愛する友人がいる。愛が私のモチベーションであり、愛とはクレージーなものだ。私は今、サケ造りにクレージーになっている」
かつてドン ペリニヨンのイベントをここ京都吉兆 嵐山本店で開催した経緯があり、以来、リシャール氏とは20年以上の付き合いという総料理長の徳岡邦夫氏。
『アッサンブラージュ 5』を口にして「ほかの日本酒と違って濃くて強く、旨味がある。今回の料理は旨味と旨味の調和を第一に考えた」と語る。
飲料のサービスは京都吉兆とアドバイザー契約を結んでいる日本一ソムリエの一人、岩田渉氏が担当した。岩田氏は『アッサンブラージュ 5』を「高次元にバランスの取れた日本酒で、まるで球体」と表現。
「さまざまなニュアンスがあり、そのニュアンスをドット(点)とすれば、キャンバスの中をさまざまな色のドットが埋め尽くしているかのよう。これだけ多彩なニュアンスがあるので、料理とのバーサティリティー(汎用性)も高い。いろいろな味わいが一つにまとめられた八寸にも、どこかしらで焦点が合う」と述べた。
またこの会では、30年におよぶ研究の結果、2013年に商業化に成功した宮崎県産のキャビア「ジャパンキャビア」がコラボレーション。昆布醤油漬けのキャビアがしばしば登場したが、「シャンパーニュよりも合う」と好評だった。
そして参加者を驚かせたのが、燗した『アッサンブラージュ 2』。3世代前のIWA 5を55℃の熱燗にしたものだ。
「お燗することによって奥深さが見事に表現された」と岩田氏。これには熟成による発展も寄与していると指摘する。
実はIWA 5の特徴の一つに、これもまたシャンパーニュ造りと関係が深い“熟成”がある。『アッサンブラージュ 5』も、アッサンブラージュ5のベースとなるのは2022年の米から造られた原酒で、最低16カ月の瓶熟成を経てリリースされたもの。
「アッサンブラージュで完璧なバランスが取れていることが先決。そうでないと熟成には耐えられない」とリシャール氏がドン ペリニヨンの醸造と同一のロジックを述べたのは興味深い。
「IWA 5は新しいタイプのサケで、新しい価値観を日本酒の世界にもたらすもの」と徳岡氏は言う。
IWA 5はまさにゲームチェンジャーの可能性を秘めている。日本の星付きレストランのみならず、アメリカでもすでに、トーマス・ケラーやドミニク・クレンといったスターシェフのレストランで扱われているという。
text by Tadayuki YANAGI
【問い合わせ先】 info@iwa-sake.jp