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看護学校がピンチ!8割が定員割れ 看護師不足なのに…なぜ?

SODANE

看護学校がピンチ!8割が定員割れ 看護師不足なのに…なぜ?

3年前、教師による学生へのパワーハラスメントが問題となった北海道立江差高等看護学院。学校は運営体制を一新しハラスメント対策を行うなどして学習環境は改善されました。

しかし、新学期を迎えた新たな課題も。今年学校に入学したのは4人だけでした。

いま、江差高等看護学院だけでなく、北海道の地方の看護学校で定員割れが相次いでいます。地方こそ不足し、必要な看護師。いま何が起きているのか取材しました。

たった4人の新入生 江差高等看護学院

4月26日、江差高等看護学院で行われていたのは1年生の生物の授業です。自らメスを握って鳥の心臓を解剖するなど工夫を凝らした授業ですが、教室にいた学生はわずか4人。今年、学校に入学したのは彼女たちだけでした。

江差高等看護学院は看護師を育てる3年制の看護学校です。1学年の定員は40人で、本来であれば学校には3学年合わせて120人の学生がいます。しかし、入学者数は今年4人、去年6人、おととし8人で、いまは全学年あわせて20人にも達していません。看護教育では、複数グループに分かれた実習形式の授業も重要で、北海道は、教育の質を確保するためには最低でも1学年12人の学生が必要だとしています。しかし、江差高等看護学院はそれを大幅に下回っています。

現状について、夕下司学院長は「学生数が少ないことで逆に丁寧に指導が行えるというメリットがありますけれども、一方で、やはり実習形式の講義をするというのが非常に難しいという課題がありますので、そこは学年を超えた学生間の交流という形で進めていきたいと考えています。」と述べています。

知事の誠意はどこに・・・ 解決しないパワハラ自殺賠償問題

なぜ、入学者数が減少しているのでしょうか。原因の1つは、3年前に問題になった教師による学生へのパワーハラスメントです。学校は問題の反省から運営体制を一新し、ハラスメント対策を行うなど取り組みを進めてきました。その成果もあって、学校の環境は改善。学生たちも学びやすい環境になっています。

しかし、2019年に男子学生が自殺した問題はまだ解決していません。第三者調査委員会はパワハラを認定し、学校の学習環境と自殺との相当因果関係を認める結論を出しましたが、道は自殺に対する賠償には応じない考えを示しています。

鈴木知事が会見や北海道議会でこの問題を問われるたびに繰り返し述べているのが「誠意を持って対応する」という言葉です。しかし、亡くなった学生の母親は「誠意なんかないですよ、一切。逆に踏みにじられているとしか、言いようがないじゃないですか。」と語っています。さらに、学生の保護者らで作る父母の会も、「現場はものすごく改善されて、学院内もものすごく変わっているんです。ですので、やはり現場は改善しているのに知事の対応があまりにもちょっとお粗末ではないかと思っています。」と、学校が変わる中、道が足を引っ張っていると訴えています。

過去10年一度も定員を超えたことがない

ただ、入学者数の減少は、江差高等看護学院に限ったことではありません。いま、学生の大学志向、都会志向が強まり看護学校の定員割れが相次いでいます。

HTBが道内の看護学校と看護系大学47校の入学者数を調べたところ、看護系大学は定員に達しているところが多い一方で、看護学校は約8割に当たる27校で定員に達していないことが分かりました。

北海道内の看護大学や看護学校が加盟する北海道看護教育施設協議会の金子明会長は「大学はやはり人気が高い。大学は大きな都市に集中しています。なので、専門学校と大学を比べると、専門学校の方が地方に多くあるので立地としてはやはりなかなか難しいということがあります。」と現状を語っています。

看護師を目指す子どもたちも減っています。小学生のなりたい職業ランキングで2019年に1位だった看護師。しかし、去年は8位でした。金子明会長は「非常に勤務がコロナの影響で激務だということで何か悪い面だけが広がってしまったようなそういった印象は持っています。」とコロナ禍の影響があると分析しています。

この春、苫小牧市と伊達市にあった2つの看護学校が閉校しました。入学者数の減少などが理由です。地域医療の担い手を育てる看護学校。看護師不足が深刻な地方こそ重要にもかかわらず、地方で厳しい状況に立たされています。金子明会長は「看護の役割というのは人々の健康を守るそういった役割があります。そのためにも、やはり看護学校、看護大学も含めて、役割というのはますます重要になってくると考えています。」と看護師養成の重要性を語りました。

地域医療の担い手を育てる使命

地域医療の担い手を育てる、これは江差高等看護学院も同じです。道南の八雲町出身の渡部真緒さんは、将来、地元で看護師として地域医療を支えていきたいと考えています。「地域に根付いた病院での実習や過疎地域ならではの実際の医療を学ぶことが地元で看護師として働いた時に役に立つ、看護師として働く時の基盤になると考えてこの学院を選びました。」

パワハラ問題以降、地域との関わりを増やし、学生がボランティア活動に参加したり、対岸の奥尻町で実習をしたりするなど地域ならではの魅力あるカリキュラム作りに取り組んでいる江差高等看護学院。

そこで学びを深めている渡部さんは「人の命を預かる看護師になるという意味ではしっかり勉強することが私の義務なのかなと思っているので大変ですけれど頑張ろうという気持ちで今はやっています。」と笑顔で語ってくれました。

学生を確保するため、学校も試行錯誤しています。去年初めて地域住民を対象としたオープンキャンパスを開催したほか、入試制度の変更や高校でのPR活動などを行っています。それでも今年の入学者数は過去最低の4人に…これには地域特有の厳しい現実があります。

江差高等看護学院の地元、江差町の人口はおよそ6700人。0歳から14歳の人口は、看護学院ができた1998年ごろには1500人を超えていましたが、いまは500人ほどです。こうした状況もあり、江差高等看護学院は過去10年間一度も入学者数が定員を超えたことはありません。

同じ北海道南部にある函館市に4つ目の看護学校ができた2019年以降は競争が激化し、受験者数が減少。パワーハラスメント問題の影響もあり最近は1桁が続いています。夕下司学院長は「看護職員が充足していない地域で必要とされる看護職員を各地域に送り出していく役割を担っていると考えていますので、我々としてはこの地域にこの看護学校は必要だと考えております。」と学院の存在意義を語っています。

何ができるのか… 時代に合った学生集めを

存続の危機にある江差高等看護学院は南桧山地域唯一の看護師養成施設校です。北海道は今後も看護師の養成を続ける必要があるとしています。そのためには学生の確保が喫緊の課題です。パワーハラスメントの問題が明るみになって以降、鈴木知事は一度も学校を訪れていません。地域医療の未来に関わる重要な問題と捉えるのであれば、一度は知事が自ら足を運び、学校の変わった様子を見てアピールするというのも方法の1つではないでしょうか。

そして、情報発信の強化も必要です。例えばホームページが1つの手段。江差高等看護学院のホームページは北海道庁のホームページに内包されているため非常に行政的なデザインになっています。一方で、同じ北海道南部にある看護学校のホームページを見てみると、どこもグラフィックや写真を多用して明るい楽しいイメージを受けます。学生が学校選びをする時に必ず目にするであろうホームページ。こうしたところから変えていく必要があるのかもしれません。取材の中で夕下司学院長は「やれることはとにかくやる」と語りました。この問題に北海道がどこまで本気で向き合うのかが問われています。

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