ナポリタンの名店が閉店 「喫茶タンゴ」49年の歴史に幕
レアールつくの商店街の「喫茶タンゴ」が1月31日で閉店した。
常連客で連日にぎわい、マスターの高橋英昭さん(68)と妻の直子さん(67)の2人で仲睦まじく営み続けてきた同店。ナポリタンの名店として有名で、食べ放題や歌声喫茶も評判だった。
今年の10月で開店50周年を迎えるはずだったが、建物の老朽化や後継者がいないことなどを理由に閉店を決断。英昭さんは「もちろん寂しい部分はありますが、ここまで続けられて満足しています」と笑顔で語った。
客の提案がメニューに
直子さんの両親が創業した同店創業時のメニューは、コーヒーとトーストのみだったという。ただ、客の「カレーうどんが食べたい」などのリクエストに応え続けたことで、徐々にメニューが多彩に。直子さんは「自分たちで考えたものはほとんどなくて、ぼーっとしていたらどんどん増えていった」と笑う。店内のインテリアもほぼ客が持ち寄ったもので、直子さんは「お客さんと一緒に営業している感じでした」と嬉しそうに語った。
同店の名物にもなったナポリタンは、発祥のホテルニューグランド=中区=を独立したシェフからの直伝。レシピには一切手を加えず、パスタを最低3時間以上茹で置きすることで生まれる太めでもちもちした食感が好評で、上に乗るスクランブルエッグとの組み合わせが大人気だった。ランチに訪れた会社員からは「シャツにケチャップが飛ばないナポリタン」としても喜ばれ、「作り方を教えてほしい」と講習会の開催をせがまれるほどだった。
今年に入って閉店の報が流れると昔の常連客らが集った。最終日には店の外まで行列ができ、「寂しくなるね」など多くの惜しむ声が聞かれた。英昭さんは「妻と従業員と長い間営業してきたから、しばらくはゆっくり過ごそうと思います」と優しく笑った。そして、最後の客を夫婦で見送り、49年の歴史にシャッターを降ろした。