大西泰斗先生トークイベント【目指せ!ネイティブ・スピーカー】〈一部抜粋版〉
2025年3月、「ラジオ英会話」講師の大西泰斗先生によるトークイベントが開催されました。タイトルは「目指せ!ネイティブ・スピーカー」。ここでは、先生の学習メソッドが詰まったその貴重なトークイベントの一部を、特別公開いたします! さらに、10月31日までに【テキスト音声】「ラジオ英会話」10月号をご購入いただくと、全文をご覧いただけます(11月上旬にウェブ記事のURLをご案内いたします)。この機会にぜひお買い求めください!
※この特典について、詳しくはこちらをご覧ください。
2024年度に学んだ「文法能力」は4技能全てに通底する
2024年度の「ラジオ英会話」では1年間かけて「文法能力」を作り上げてきました。この「文法能力」というのは、なにも文法だけに関わる能力ではありません。読解、つまり英文のリーディングにも活かすことができるというお話をするのが、今回の講演の目的です。もうひとつ、講演の後半では2025年度4月号から新たにコーナーを設ける「発音指導」についてもお話ししていきたいと思います。そんな感じでよろしいですか? 全然別の話もできますけど、大丈夫ですか? 最近の趣味の話とか聞きたくない? 大丈夫ですかね。じゃあ、早速始めていきたいと思います。
私たちが1年間かけて文法を身につけた上で一番大切なことというのは、英語は非常に単純な5つの基本文型でできているということです。全ての英文は5つの基本文型と「前に置く」「後ろに置く」という2つの位置取りで理解できます。この「5+2」のパターンさえ分かっていれば、基本的にあとは語彙力の勝負です。それが分かっていると、英文のリーティングにも役立てることができるというお話をするわけですが、まず私たちが1年間なにを学んできたのか簡単に復習します。
英語は「文型」が主導する言葉
それでは、まず基本文型についてみていきましょう。基本文型は5つの文型に分かれます。
英語というのは基本的にパターンの言葉です。だからパターン自体に意味がある。そのことが重要です。例えば、「give」という動詞。これは中学生に聞くと「与えるという意味の動詞です」と答えてくれるわけですが、別に「give」だから「授与型」になるわけではないんです。どんな動詞であっても「授与型」の文型であれば「誰々に何々をあげる」という意味になるんですね。それは文型が主導で文の意味を担っている英語という言葉の特徴なんです。例えば、下記の4つの英文はすべて授与型の文型で「誰々に何々をあげる」という意味になります。
I’ll teach you English.「私はあなたに英語を教えてあげる」
I’ll show you my photo.「私はあなたに写真を見せてあげる」
I’ll show you the way.「私はあなたに道順を教えてあげますよ」
He told me the story.「彼は私にその物語を聞かせてくれた」
「授与型」の英文であれば、それらの英文は同じように「授与」の意味を担う。それが英語という言葉の持っている非常に大きな特徴なんですね。
ところで、僕、最近痩せたんですよね。最近痩せて75キロくらいになったんですが、やっぱり屋根を修理しようと思ってその上に乗ったりすると、屋根がたわんでしまうわけです。屋根がたわんでいる状態、それを「give」といいます。そのたわんだ部分のことを名詞で「give」と言ったりするわけですね。あるいは「The roof gave under my weight.」のような言い方をするわけです。「give」という動詞は必ずしも「与える」という意味ではないんですね。「出す」というイメージです。「私の体重でたわんでしまったスペースを屋根が出しました」という見方をするから「give」が使われるんですね。だから、「I gave Mary a present.」のように「授与型」の文型に入れると「誰々に何々を出しました」、つまり「与えました」という意味が出てくるというだけの話なんです。文のパターンが意味を主導している言葉、それが英語です。
大事なのは「パターン」を見抜くこと
それでは、次に「説明ルール」についてみていきましょう。この間、NHKラジオでの英語講座スタートから100年を記念した番組に参加させていただいたんですね。パンサーの向井慧さんが司会をやってくださったんですけれども、僕が「説明ルールと指定ルールというのがあってさ…」と話をしていたら、「先生って、これ自分で考えたんですか?」と聞いてくださったんですね。もちろん自分で考えたわけです。僕は理論言語学をやっていたので「説明ルール」と「指定ルール」というアイデア自体は自分で考えたんですけど、そのアイデアを生み出した動機とか考え方みたいなものは、全部学生時代にトレーニングさせていただいた専門家から受け継いでいるんですね。私が見出した英語という言葉を全部覆うようなパターン。そのパターンは「前に置けば"指定"」「後ろに置けば"説明"」。そうしたパターンだということを今まで色々検証した結果、自信を持ってみなさんにお教えすることができるわけです。
みなさんは、人生においてパターンを見抜くということがどれだけ重要か気がついていますか? なにかを見たときに誰も気づかなかったパターンを見出すことができれば、それは人生の勝利者なんです。例えば、株ですね。「こういうパターンがきたら絶対上がりますよ」というのを知っているだけで億万長者になれるわけです。そう、誰も気がついてない、教えられていないパターンを見抜くという、そういうものの見方、教養の在りようというのがものすごく大事なんです。では、ここでみなさんに問題を出します。スーパーマーケットにはよく行きますか? 行きますよね。牛乳の棚、卵の棚、バナナの棚、食パンの棚…。いろいろな棚がありますよね。さて、その各棚には高級品から安いものまでありますが、ここで問題です。一番安い製品についている商品名の共通点はなんですか?
これがパターンを見抜くということなんです。あらゆるものをパターン化して「こういうシステムによってできているんだ…」と理解することがものすごく重要。はい、では2秒差し上げます。一番安いラインナップに共通している名前の特徴ってなんですか? あ、普段安いものを買わないという方、失礼いたしました…。
僕の答えはこうです…。「一番安い製品にはロマンチックな名前がついている」。安い製品は成分とか効用とかではなくイメージで売ろうとするから、どんどんほんわかしたロマンチックな名前になるわけです。ぜひ後ほどスーパーに行って、安い製品のラインナップを見てみてください。そういうパターンをあらゆることに見出すというのは、すごく重要なことなんです。ぜひみなさんも誰も気づいていないパターンを自分で見出してみてください。
今回の公開はここまで!この先は【語学テキスト音声】ラジオ英会話10月号を購入いただいた方限定で公開いたします
全文目次
・2024年度に学んだ「文法能力」は4技能全てに通底する
・英語は「文型」が主導する言葉
・大事なのは「パターン」を見抜くこと(本記事ではここまで)
・「説明は後ろ」と「指定は前」というだけの話
・「話す」ことはパターン通りに配列すること
・「読む」ことは書き⼿のパターンを⾒抜くこと
・日本語でも英語でも「パターンマッチング」している
・ネイティブは「チート」して発音している
発音に関するトークもたっぷりお届けします。
※11月上旬にメールにて、特典が読めるウェブ記事のURLをご案内いたします。
【語学テキスト音声】ラジオ英会話10月号ではさらに、巻末の大人気コーナー「英語らしい発音のヒント」の完全版音声も収録しています。詳しくは以下のバナーをクリック!
講師プロフィール
大西泰斗(おおにし・ひろと)
筑波大学大学院文芸言語研究科博士課程修了。英語学専攻。オックスフォード大学言語学研究所客員研究員を経て、現在、東洋学園大学教授。NHK テレビ「3 か月トピック英会話~ハートで感じる英文法」「しごとの基礎英語」「大西泰斗の英会話☆定番レシピ」などの講師を務める。著書に『話すための基礎が身につく 音読×英文法 基本文型編/時表現・助動詞編/関係詞・仮定法編』『ハートで感じる英文法決定版』(すべてNHK 出版)、『一億人の英文法』(東進ブックス)、『総合英語FACTBOOK』(桐原書店)、『それわ英語ぢゃないだらふ』(幻冬舎)など多数。