【大江戸散歩コース】日比谷・赤坂~江戸城鎮守の神社や有力大名の屋敷が並ぶ~
大河ドラマの影響か、今にわかに注目を浴びている江戸時代。その江戸期の古地図(切絵図)を見ながらの東京散歩がとても面白いことをご存じだろうか? 今回は、元治元年(1864)の「麹町永田町外桜田絵図」を手に歩く日比谷・赤坂周辺の散歩コースを紹介。タイムスリップを楽しむ特別な散歩体験を!
【日比谷・赤坂周辺の切絵図】
麹町永田町外桜田絵図
切絵図の右上にある「櫻田御門」「日比谷御門」などは江戸城の御門。江戸城の南東部には遠浅の海が広がり、そこを埋め立てて江戸城警護の有力大名の上屋敷が立ち並んだ。中央上部にある「井伊掃部頭」と描かれているのは、井伊直弼の上屋敷。このわずかな距離の間に桜田門外の変で襲撃されてしまった。地図左下は、「井伊掃部頭」や徳川御三家の「紀伊殿」「尾張殿」の中屋敷がある。紀尾井町や紀尾井坂の名前の由来だ。
右下の溜池の上にある「日吉山王大権現」は太田道灌が江戸城鎮守のために勧請した日枝神社のこと。浮世絵にも描かれている山王祭は徳川将軍家の庇護を受けて盛大になった。江戸三大祭の筆頭ともいわれ、江戸っ子が心待ちにしていた。
※掲載の古地図は、江戸の町を32区画に分割して作った切絵図を使用。すべて、麹町にあった金鱗堂が出版したもので、屋号である尾張屋清七から「尾張屋板(版)」と呼ばれる。鮮やかな多色刷りが特徴。
※切絵図内の白色の部分は【大名屋敷などの武家地・御用地】、赤色は【神社仏閣】、灰色は【町屋】、黄色は【道】、青色は【海・川・池】、緑色は【山林・土手・馬場・田畑など】を示している。
【散歩コース】
スタート:日比谷駅は地下鉄日比谷線で上野駅から19分・180円、地下鉄千代田線で大手町駅から3分・180円、地下鉄三田線で大手町駅から1分・180円。日比谷駅は地下鉄有楽町線有楽町駅に隣接する。
地下鉄日比谷線・千代田線・三田線日比谷駅→(すぐ)→日比谷公園→(9分/0.6㎞)→大岡越前守忠相屋敷跡→(10分/0.7㎞)→加藤清正邸・井伊掃部頭邸跡→(22分/1.4㎞)→日枝神社→(7分/0.5㎞)→三べ坂→(10分/0.7㎞)→弁慶橋→(4分/0.3㎞)→清水谷公園→(3分/0.2㎞)→紀尾井坂→(2分/0.2㎞)→近江彦根藩井伊家屋敷跡→(2分/0.2㎞)→ホテルニューオータニ日本庭園→(4分/0.3㎞)→尾張名古屋藩屋敷跡→(6分/0.4㎞)→JR・地下鉄四ツ谷駅
ゴール:四ツ谷駅からJR 中央線快速で新宿駅まで5分・170円、地下鉄丸ノ内線で新宿駅まで7分・180円、地下鉄南北線で目黒駅まで17分・210円。
今回のコース◆約5.5km/約1時間20分/約7400歩
歴々たる大名家の上屋敷が並ぶ「日比谷公園」
明治36年(1903)に日本初の洋風近代式公園として開園。江戸時代には各藩の上屋敷が置かれ、伊達政宗はこの地にあった上屋敷で逝去した。心字池周辺に江戸城の石垣が残っている。
「日比谷公園」詳細
日比谷公園(ひびやこうえん)
住所:東京都千代田区日比谷公園1/営業時間:入園自由/アクセス:地下鉄日比谷駅すぐ
名奉行が晩年に住んだ上屋敷跡「大岡越前守忠相屋敷跡」
講談や落語、テレビの時代劇でも知られる大岡越前の上屋敷跡。徳川8代将軍吉宗に抜擢されて江戸町奉行となり、公正で人情味あふれる裁きは広く愛された。現在、周囲には裁判所や弁護士会館がある。
「大岡越前守忠相屋敷跡」詳細
大岡越前守忠相屋敷跡(おおおかえちぜんのかみただすけやしきあと)
住所:東京都千代田区霞が関1-1/営業時間:見学自由/アクセス:地下鉄霞ケ関駅から徒歩5分
桜田門外の変はここから始まる「加藤清正邸・井伊掃部頭邸跡」
肥後藩(現・熊本県)主・加藤清正の屋敷跡。慶長9年(1632)の改易で屋敷も没収された。後に彦根藩(現・滋賀県)主の井伊家が幕末まで拝領する。井伊直弼はこの屋敷から江戸城に向かう途中に襲撃された。
「加藤清正邸・井伊掃部頭邸跡」詳細
加藤清正邸・井伊掃部頭邸跡(かとうきよまさてい・いいかもんかみていあと)
住所:東京都千代田区永田町1-1/営業時間:見学自由/アクセス:地下鉄有楽町線桜田門駅から徒歩3分
6月には江戸っ子が待ち焦がれる山王祭を開催「日枝神社」
文明10年(1478)に太田道灌が川越山王社を勧請したのが始まり。徳川家康の江戸移封以来、江戸城の鎮守として徳川家から崇拝を集める。
「日枝神社」詳細
日枝神社(ひえじんじゃ)
住所:東京都千代田区永田町2-10-5/営業時間:6:00~17:00(授与所・朱印所は8:00~16:00)/定休日:無/アクセス:地下鉄千代田線赤坂駅から徒歩3分
3大名の名前が坂名の由来「三ベ坂」
参議院議長公邸と青山通りの間にある坂。江戸時代に岡部氏・安部氏・渡辺氏の屋敷があり、名字に「べ」があることからこの名が付いた。坂の上には赤坂門の水番役の屋敷があったため、水坂ともいわれる。
「三ベ坂」詳細
三べ坂(さんべざか)
住所:東京都千代田区永田町2/営業時間:見学自由/アクセス:地下鉄永田町駅から徒歩3分
擬宝珠(ぎぼし)や木製の欄干が風情あり「弁慶橋」
江戸城の建築に携わった大工・弁慶小左衛門が造った名橋。江戸時代には神田にあったが、明治時代にこの地に移った。現在橋が架かる一帯には和歌山藩徳川家の麹町邸があった。
「弁慶橋」詳細
弁慶橋(べんけいばし)
住所:東京都千代田区紀尾井町~港区元赤坂/営業時間:見学自由/アクセス:地下鉄銀座線・丸ノ内線赤坂見附駅から徒歩1分
大名屋敷の境で湧く清水が由来「清水谷公園」
和歌山藩徳川家と彦根藩井伊家の屋敷の境から清水が湧き出したため、清水谷と名付けられた。広さ1万平方メートルを超える広大な園内には、この辺りで暗殺された大久保利通の哀悼碑や玉川上水の石枡がある。
「清水谷公園」詳細
清水谷公園(しみずだにこうえん)
住所:東京都千代田区紀尾井町2/営業時間:園内自由/アクセス:地下鉄銀座線・丸ノ内線赤坂見附駅から徒歩5分
3大名家の頭文字から名が付いた「紀尾井坂」
坂の両側に紀州徳川家・尾張徳川家・井伊家の屋敷が立っていたことから頭文字を取って「紀尾井」と名付けられた。紀尾井坂周辺では岩倉具視(いわくらともみ)が襲撃された喰違(くいちがい)見附の変が起きた。
「紀尾井坂」詳細
紀尾井坂(きおいざか)
住所:東京都千代田区紀尾井町/営業時間:見学自由/アクセス:地下鉄有楽町線麴町駅から徒歩6分
江戸城搦(から)め手の守備を担った邸「近江彦根藩井伊家屋敷跡」
ホテルニューオータニ敷地内の歩道に碑が立つ。江戸城喰違門内にあった井伊家の麹町邸は、中屋敷として使用されていた。中屋敷には、隠居した藩主や成人した世継ぎが住んだという。
「近江彦根藩井伊家屋敷跡」詳細
近江彦根藩井伊家屋敷跡(おうみひこねはんいいけやしきあと)
住所:東京都千代田区紀尾井町4-1/営業時間:見学自由/アクセス:地下鉄有楽町線麴町駅から徒歩9分
400年以上の歴史がある日本庭園『ホテルニューオータニ日本庭園』
加藤清正の下屋敷や井伊家中屋敷を経た庭園。約1万坪という広大な敷地を有し、池を中心とした池泉回遊式で四季折々の花を観賞できる。
『ホテルニューオータニ日本庭園』詳細
ホテルニューオータニ日本庭園(ほてるにゅーおーたににほんていえん)
住所:東京都千代田区紀尾井町4-1/営業時間:6:00~22:00/定休日:無/アクセス:地下鉄銀座線・丸ノ内線赤坂見附駅から徒歩3分
徳川御三家筆頭の中屋敷跡「尾張名古屋藩屋敷跡」
上智大学一帯は、尾張名古屋藩徳川家の中屋敷だった。寛永14年(1637)に拝領し、徳川家康の九男で藩祖・義直から16代にわたって屋敷が立っていた。紀尾井ホールの近くに痕跡を記す碑が立っている。
「尾張名古屋藩屋敷跡」詳細
尾張名古屋藩屋敷跡(おわりなごやはんやしきあと)
住所:東京都千代田区紀尾井町6-12/営業時間:見学自由/アクセス:JR・地下鉄四ツ谷駅から徒歩7分
取材・⽂・撮影=アド・グリーン
『古地図であるく 大江戸散歩地図』より