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高齢者の就業率が過去最高に!高齢就労では雇用条件の確認が大事

「みんなの介護」ニュース

長谷川 昌之

今、皆さんの職場や皆さんの地域では、生き生きと働かれている高齢の方を多く見かけると思います。

以前は60歳や65歳で定年退職という方が多くいらっしゃいましたが、2023年ではどうなのでしょうか?

今回は、毎年国から発表されるデータとともに、高齢者が働くことについてご説明したいと思います。

高齢者就業の現状

総務省統計局では、毎年敬老の日を迎えるに当たって「統計からみた我が国の高齢者」のデータをまとめています。

今回の注目される点は、高齢者(65歳以上)人口が1950年以降初めて減少に転じたことです。

ただし、総人口における高齢者人口の「割合」は過去最高(29.1%)で日本の高齢化率は世界と比較しても2位のイタリア(24.5%)、3位のフィンランド(23.6%)より約5ポイント以上も高くなっています。

一方、高齢就業者数は、2004年以降19年連続で増加し、912万人と過去最多となっています。就業者の総数に占める割合でも、13.6%と過去最高となり約7人に1人となっています。

その中でも65~69歳は50.8%、70~74歳は33.5%と、いずれも過去最高となっています。

高齢就業者がどの分野で勤務しているかを見てみると「卸売業・小売業」が127万人と最多。次いで「サービス業」105万、「医療・福祉」104万人、「農業・林業」101万となっています。なお「医療・福祉」の高齢就業者は10年前と比べ約2.7倍に増加しています。

高齢者に医療・福祉の仕事が人気のワケ

2020年度の「高齢者の生活と意識に関する国際比較調査」(内閣府)によると、60歳以上でも働き続けている理由は、「収入を得たいから」が最も多い結果となっています。続いて「働くことにより健康的な生活を送れるから」「仕事が自身の活力になるから」となっています。

これらの理由に加え、医療・福祉関連に就業する高齢者が多い理由を考えてみたいと思います。

医療・福祉が身近なことになったから

一つには、高齢になると、医療や介護福祉の必要性をより身近に感じられるようになることが挙げられます。

高齢になればなるほど、自身の病気や怪我のリスクは高まります。また、配偶者や家族などが病気や怪我になり、入院や介護の必要に迫られる経験も多くなるでしょう。

そんな万が一のために、事前に関連する仕事をして備えておきたいのではないでしょうか。個人的にももしもの時の事を考えて事前にその関連する仕事に就くのはとても有意義なことだと思います。

医療・福祉の仕事にやりがいを覚えやすい

もう一つは、医療・福祉の仕事は人の役に立っていると感じやすい仕事だという点。医療・福祉の仕事は身体介助などの仕事以外にも業務内容は多岐にわたります。その中で、自身ができる範囲でサービスを提供することが可能です。

また、ダイレクトに患者・利用者やその家族から「ありがとう」「助かったよ」など、感謝の気持ちを聞くこともできます。そんな温かい言葉に触れたときに大きなやりがいを感じるのではないでしょうか。

私たちが何気なく行っている動作でも、患者さんや利用者さんにとっては難しいことが多くあります。ありふれた日常生活の場面を支援する仕事のため、患者・利用者と一緒に過ごす時間も多いです。共有する時間が長い分だけ、感謝の言葉をかけてもらう機会も多いですし、それがやりがいにつながっているのだと思います。

高齢就労のメリット・デメリット

貯金を崩さずに済む収入や社会とのつながりが大きなメリット

私は東京都町田市で高齢者支援に携わっていますが、その中で高齢者の収入面の不安は強まっているように感じています。

人生100年時代とも呼ばれますが、実際には昨今の物価上昇によって、これまでの年金暮らしというモデルが崩れつつあります。端的にいえば「年金だけで暮らしていく」ことが難しくなっているのです。もちろん貯金を取り崩して生活をされる方もいますが、働けるうちは働いて、できるだけ貯金を崩したくないと考える方が多いのではないでしょうか。

高齢でも働き続けることには「収入を得る」という生活を支えるという点はもちろん、社会とのつながりを継続できる点が大きなメリットになります。

定年などにより仕事をリタイヤされたとき、特に男性は地域でつながりが少なく、家に引きこもってしまう方が多いです。就労されているときは日々会社に通勤しており、日ごろから地域での活動に積極的に参加されることが少ないからです。

その方がいざ仕事を退職し、地域で過ごそうにも肩身が狭いと感じることがあるのです。もし仕事を継続できる状態であれば、働きながら移行期間として地域での仲間や友人を少しずつ築いていけば、社会とのつながりが絶たれることなく生活をしやすくなります。

会社でも地域でも役割をもって社会とつながることは、人生において非常に重要なことです。社会からまったく必要とされていないという孤立感が、精神的な健康に大きなダメージとなるのは想像に難くないでしょう。

また収入を確保して、年金の受給時期を繰り下げることにより年金額が増額されるという制度的なメリットもあります。

日本年金機構の「繰下げ増額率早見表」によると75歳まで年金の受給を繰り下げると増額率は84%にもなります。

仮に75歳でリタイアしたとすれば、金額は約2倍近く増額されるため、より暮らしやすさを感じるかもしれません。

デメリットは雇用条件のミスマッチ

高齢者が働き続けるデメリットとしては、雇用条件が挙げられます。多くの企業が定年を定めていますが、その後の雇用に関しては大企業でも方針が異なります。

例えば、定年後の再契約時は給与額が見直しされ、同一の仕事をしているにもかかわらず、同一の条件では働くことができなかったり、仕事自体が以前と異なり、仕事がしにくくなってしまったりします。また、再雇用については1年単位と定めていて本人が働き続けたい意向に必ずしもマッチングしないこともあります。

最初に雇用する側・される側での取り決めの確認は細部において(各種社会保険加入の有無など)重要かと思います。

望む場所で働き続けたいにもかかわらず、最終的には物別れに終わり、お互いに良い気持ちで結末を迎えられない可能性があるからです。

私は、最初のスタート地点でしっかり取り決めさえ行えていれば、高齢者が働くことで得られるメリットは大きいと考えています。

そのうえで、ご自身がどこで・どうやって生活を送りたいのかを事前に元気なうちから考えておくことは非常に重要です。考え始めるのが早いほど、さまざまな手段を講じることもできると考えます。

社会や地域とつながりながら望む場所で生活を継続することは、ご自身の幸福度向上につながるはずです。ぜひ今日から考え始めてみてください。

【参考文献】
統計からみた我が国の高齢者-「敬老の日」にちなんで-(総務省統計局)2023/11/9
第9回高齢者の生活と意識に関する国際比較調査(内閣府)2023/11/9

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