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“先進国”日本の格差は同一労働同一賃金で埋まるのか

キャリコネニュース

格差はどうなる?

2020年4月から働き方改革の一環で始まった「同一労働同一賃金制度」。正規・非正規の雇用形態にかかわらず、同じ仕事をしていれば、同じ待遇を受けるべきとするこの制度で、労働者間の格差は埋まるのか? 経済アナリストの森永康平氏は「そのハードルは依然高い」と考えている。

海外で目にする貧富の格差

私がインドネシアの首都ジャカルタに駐在していた時、日本では見ることがないような貧富の差を目にしました。

ある日、華僑の知人の自宅に招かれたのですが、その自宅の豪華さに心底驚いたのをいまでも覚えています。資産家だとは聞いていましたが、きれいな大理石の床の上には、いかにも高級な家具、1部屋の広さも天井の高さも桁違い。知人の彼はインドネシアで生まれ育ったのですが、米国の大学を出て、インドネシア語はもちろん、中国語も英語も流暢に話すグローバルエリートでした。

一方で、そこから徒歩20分ほどの場所にある私の通っていたオフィスや住んでいたアパートの周辺はというと、大通りにはきれいな高層ビルが立ち並んでいるものの、1つ路地裏に入ってしまえば風景は一変。道路は舗装されておらず、道端にはゴミが散乱していて、建っている家もバラック小屋ばかり。

一番驚いたのは、35度以上の炎天下において、まだ生後数か月の赤ん坊を抱いた母親が自分の前に空き缶を置いたまま、ずっと座っていたことでした。通勤時も退勤時も同じ場所にずっといたのです。大人でも炎天下で何時間も座っていたら体調を崩すのに、赤ん坊が大丈夫なのだろうかと心配になったのをいまでも忘れません。

先進国日本にある格差とは?

これから成長しようとしている発展途上国、とりわけ二十数年前のアジアではこのような光景を目にすることは珍しくはありませんでした。

では日本のような先進国には格差がないかというと、そうではありませんよね? 日本で格差の話になるとよく出てくるのが、正規雇用と非正規雇用だと思います。

日本ではいま、全労働者の約4割の人が非正規雇用で働いていますが、私の知人にも何人も非正規雇用の人はいます。
その知人から聞いた話でショックだったことは、何年も付き合っている彼女と結婚をしたいが、なかなかプロポーズができないという話でした。

詳しく理由を聞いてみると、やはり非正規雇用は不安定な立場なので、相手の両親が結婚を反対しそうだということと、彼女が結婚をしたら子どもが欲しいといっているものの、いまの自分の年収では2人で暮らしていくだけでも精一杯だから、ということでした。どちらの話もお金が絡んできています。

では実際に非正規雇用の人たちの平均給与は正規雇用の人たちの平均給与の何割ぐらいなのか? 皆さんはご存知でしょうか?

国税庁が発表した「民間給与実態統計調査結果」によれば、2018年時点における正規雇用の平均給与は503.5万円で、非正規雇用の平均給与は179.0万円です。つまり非正規雇用の平均給与は正規雇用の平均給与の約4割(35.6%)にすぎないのです。

ちなみに、国税庁が発表した「民間給与実態統計調査結果」で、2018年時点における平均給与を男性と女性で分けてみると、男性が545.0万円、女性が293.1万円となり、女性の平均給与は男性の半分ほどしかないことがわかります。

これらの数字をグラフにしてみると下記のようになります。正規雇用と非正規雇用、男性と女性の間には大きな壁があることがわかるでしょう。

同一労働同一賃金って何?

このような格差をなくすため、日本でも働き方改革の一環で2020年4月から 「同一労働同一賃金」 という取り組みが大企業を中心に始まりました。

これは同じ仕事をするのであれば、雇用形態が正規か非正規かどうかは関係なく、同じ賃金が支払われるべきというだけでなく、正社員だけに与えられた手当や制度も公平にしましょうということです。

同じ仕事をしていれば、同じ待遇を受けるべきというのは当たり前のように感じるかもしれませんが、実際には「同一労働同一賃金」が実現するのは相当ハードルが高いと思われます。

2020年10月に非正規労働者たちが「同一労働同一賃金」を求める裁判(大阪医科薬科大学事件、メトロコマース事件)で逆転敗訴しました。

訴え出た原告側の非正規労働者たちは、正社員と同じ仕事をしているのに賞与(大阪医科約化大学事件)や退職金(メトロコマース事件)がないのはおかしいと主張しましたが、最高裁はいずれも「不合理である(筋が通らない)とまで評価することができるものとはいえない」と判断したのです。

日本では仕事の線引きも曖昧?

ではどうして日本ではこういうことが起こるのでしょう?

私は日本企業、外資系企業、外国企業それぞれで働いた経験がありますが、日本と海外で明らかに違うのは仕事内容の指定が明確かどうかということ。そこに問題があるのだと私は思います。

日本企業は新卒で人を採用し、定期的に部署や職場を転々とさせて仕事を覚えさせていきます。それは海外でも似たようなところはありますが、日本企業の場合、転職してきた中途入社の人も転々と配置転換することがあります。

一方で、海外の場合はジョブディスクリプションといって、「あなたはこれをやってもらうために雇います」ということが明確になっています。

たとえば私が日本企業で働いていた時は、モノをいかに売るかといったマーケティングの戦略を練る時もあれば、事業開発の仕事をすることもありましたし、新規事業の立ち上げの際は契約書の管理やウェブサイトのデザインの作成など、会社の一員として上司から依頼されたことには全て対応していました。

しかし、外資系企業で働いていた時は、転職活動の際に応募した職種以外の仕事は一切しませんでした。マーケティングの専門家として入社したら、事業開発やウェブサイトのデザインなど、その他の仕事は依頼されません。つまり、仕事の内容とそれに対する対価が海外では明確なのです。

とはいえ、新卒一括採用、年功序列、終身雇用といった日本企業の文化が徐々に消失していっていることを考えると、日本も近い将来、外国企業に似たような制度になっていくのだと思います。ちなみに、私は決して日本の企業文化や経営方針がダメだといっているのではなく、あくまで日本と海外の違いを指摘しているだけであることは強調しておきます。

※本記事は『誰も教えてくれないお金と経済のしくみ』(森永康平/あさ出版)の内容を一部再編集したものです。

■プロフィール 森永康平(もりながこうへい)
金融教育ベンチャーの株式会社マネネCEO、経済アナリスト。
証券会社や運用会社にてアナリスト、ストラテジストとしてリサーチ業務に従事。
その後はインドネシア、台湾、マレーシアなどアジア各国にて法人や新規事業を立ち上げ、各社のCEO および取締役を歴任。現在は複数のベンチャー企業のCOO やCFO も兼任している。日本証券アナリスト協会検定会員。著書に『誰も教えてくれないお金と経済のしくみ』『いちばんカンタン つみたて投資の教科書』(ともにあさ出版)や父・森永卓郎との共著『親子ゼニ問答』(新書/ KADOKAWA)、『MMT が日本を救う』(新書/宝島社)などがある。

Twitter:@ KoheiMorinaga

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