「おいしい」は「幸せ」をかなえる。守谷で牧場を営む『藤井商店』は、人にやさしくお肉にやさしく
1955年、東京都墨田区東向島で精肉店として創業。「おいしい」は「幸せ」をかなえる『藤井商店』は現在、守谷で牧場を営みながら、小売店と生産者、両方の視点を持って日々奔走する。業界全体、ひいては地域全体を幸せにするために。
先代は守谷がルーツ、故郷への恩返し
東向島の本店は、昔ながらの「街のお肉屋さん」。それがなぜ、守谷で牧場を営むことになったのだろう。
「仕入れ先だった養豚場が廃業することになって、そこを引き継ぐことになりました。先代は守谷がルーツでしたし、故郷への恩返しです」
そう話してくれたのは、亡き先代の意思を継ぐ2代目・藤井勲さんだ。
1965年に豚から始まり、約5年後には牛の肥育を開始。1990年になると食肉加工をスタートし、そこで生産から販売まで行う一貫システムが整った。当時、小売りをするのは本店だけだったが、近隣住民から「ここでも買えるようにしてほしい」と要望があったそう。2009年、敷地内に食肉加工の工場を建て、直売所として守谷支店をオープンした。
取り扱うのは自社商品だけではない。「実は、守谷で出店したことで地元の生産者から相談されるようになって」と藤井さん。例えば、平成26年度農林水産祭天皇杯を受賞した『ドリームファーム佐藤牧場』(常総市)は独自の方法で優れた常陸牛を飼育しているが、いい販売場所がなかなか見つからなかったという。
そこで『藤井商店』が独占販売を買って出た。価値あるものをそれに見合った金額で仕入れ、適正価格で販売。小売店だが生産者でもある藤井さんは、頼りがいのある「相談窓口」なのだ。それでいて、消費者にほぼ卸値で渡せるのは生産から加工、販売まで一貫して行うからこそ。「これを広げることで業界全体を盛り上げたい」と藤井さんは真剣だ。
平日にもかかわらず直売所には行列ができる。大量買いする人も多く、どうやら隣近所に「『藤井商店』に行くけど、何かいる?」と声をかけ、ついでにおつかいするのが恒例だとか。特別な日にはちょっといい肉が食卓に乗ったり、この辺りでは家族団らんに『藤井商店』の肉は欠かせないらしい。
「おいしいお肉は、みんなを幸せにしてくれます!」
藤井商店 守谷支店(ふじいしょうてん もりやしてん)
住所:茨城県守谷市野木崎1822/営業時間:10:00~18:00/定休日:日(不定あり)/アクセス:つくばエクスプレス・関東鉄道常総線守谷駅西口からモコバス市役所・板戸井ルート「くるまやさん前」行き17分の「根崎」下車1分
取材・文・撮影=信藤舞子
『散歩の達人』2026年7月号より
信藤舞子
ライター
北海道弟子屈町生まれ、札幌市育ち。現在は東京在住。雑誌、WEBメディアを中心に、街歩きや旅、日本の文化について執筆する。なかでもおやつには目がなく、近著は『東京おやつ図鑑 和菓子編』(交通新聞社)。レコードや着物も好き。