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えいたそ×DIR EN GREY、あゆくま×バクシン、大阪☆春夏秋冬……アイドルとバンドが結ぶ強度|「偶像音楽 斯斯然然」第31回

Pop’n’Roll

えいたそ×DIR EN GREY、あゆくま×バクシン、大阪☆春夏秋冬……アイドルとバンドが結ぶ強度|「偶像音楽 斯斯然然」第31回

これは、ロック畑で育ってきた人間がロック視点でアイドルの音楽を好き勝手に語る、ロック好きによるロック好きのためのアイドル深読みコラム連載である(隔週土曜日更新)。

アイドル曲にロックミュージシャン、バンドマンが携わることは今となっては珍しくないが、昔を思い出せば、ももいろクローバー(“Z”じゃない時代)が「ピンキージョーンズ」(2010年)をリリースした際に、“作編曲がNARASAKI(COALTAR OF THE DEEPERS / 特撮)”という事実をきっかけに、ももクロ沼、そしてアイドル沼にハマっていた人間を何人も見てきた。

ギターがけっこうエグいんですよね…… ももいろクローバーZ「ピンキージョーンズ」

好きなバンドとアイドルが結びつくと何だかテンションが上がってしまうのは、今も昔も変わらずで。それは作曲編曲はもちろん、トラック演奏のクレジットもくまなくチェックしてしまう。そんな感じでロックファンの心をくすぐる最近の作品をいくつか。

成瀬瑛美(でんぱ組.inc) × 薫(DIR EN GREY)

でんぱ組.incのニューアルバム『愛が地球救うんさ!だってでんぱ組.incはファミリーでしょ』初回限定盤Bに収録されている、えいたそこと、成瀬瑛美ソロ曲「レジェンド・オブ・エイ」に、DIR EN GREYの薫がゲスト参加している。

えいたそといえば、バンギャル(ヴィジュアル系の女性ファン)のバイブル漫画『バンギャルちゃんの日常』(蟹めんま・著)に帯コメントを寄せているほど、自身もバンギャル文化に精通しているのは有名な話。かねてから憧れだったという経緯から薫の参加が決定したそうだが、DIR EN GREYのバチカン宮殿、いや、薫がこうして他者の楽曲に参加するのは貴重でもあるし、ましてや同曲はNARASAKI作編曲によるメロディックスピードメタルな楽曲であり、めちゃくちゃメロディアスなギターソロをキメているので、虜(DIR EN GREYファンの俗称)も悶絶であろう。

さらに、この楽曲でベースを弾いてるのは村井研次郎(cali≠gari ELLEGUNS COALTAR OF THE DEEPERS)ときたもんだ。NARASAKIワークスでよく見かける気鋭のドラマー、鎌田修平のグラインドコアっぽいエクストリームドラミングも見事であり、総じて息つく暇もない怒涛の楽曲に仕上がっている。えいたその確かな歌唱力ではあるんだけど、突拍子もないように聴こえてしまうボーカル力も魅力的。

DIR EN GREYと村井研次郎のアイドルソングでふと思い出したのはBerryz工房。ライブでも大盛り上がりの「一丁目ロック!」(アルバム『⑦ Berryz タイムス』収録 /2011年)のグルーヴをグイグイ引っ張っているエグいベースは村井研次郎で、こちらも後期におけるライブ定番曲「世の中薔薇色」(アルバム『愛のアルバム⑧』収録 2012年)のアレンジを担当したのが、DIR EN GREYのマニピュレーターだった宅見将典(ex.siren)である。ストリーミング配信されておらず、音を紹介できないのが残念である。

鶯籠 × RENO(ex.ViViD)

さて、えいたそ「レジェンド・オブ・エイ」はふなっしーの作詞であるが、ふなっしーは鶯籠のメジャーデビュー曲「FLY HIGHER AGAIN」の詞も手掛けており、意外にもアツくてエモい作家性は、なかなかに胸を打つ。

この「FLY HIGHER AGAIN」は、ヴィジュアル系バンド、元ViViDのギタリスト、RENOが手掛けた曲であり、鶯籠らしいエモーショナルさを存分に引き出している。ねちっこいギターと暴れまくっているベースラインが絶妙である。今年の2月に行なわれた鶯籠の2ndワンマンライブ<修羅場>で何年ぶりかにRENOをステージで観たのだが、ゲイリー・ムーアを彷彿とさせる粘っこいチョーキングと豪奢なプレイがすごくよかった。そうだ、ViViDといえば、先述の宅見将典がサウンドプロデュースをしていたな。そして、ベースのイヴも近年はアイドルのサウンドプロデュースをやっている。

あゆみくりかまき × バックドロップシンデレラ

打って変わって、ハッピーロックを高らかに掲げる、あゆみくりかまき。これまでもPABLO(Pay money To my Pain)やKuboty(ex.TOTALFAT)といった、ロックアーティストとのコラボ、プロデュースを受けてきたが、今回は何と“ウンザウンザ”と音楽シーンをかき乱しているバックドロップシンデレラ! まじかよ、“あゆみ”つながりか!?

結成記念日である5月5日にリリースされた配信限定EP『Grateful』収録の「ビリーでGO!」は、バックドロップシンデレラの4thアルバム『ジャクソン』(2012年)収録の「国語のテスト」を、あゆくまに当て書きしながらセルフオマージュした楽曲。原曲は、でんでけあゆみにしか歌えないような奇天烈な節回しなのだが、そこは、さすが歌に定評のあるあゆくまの3人。見事なまでに起用さとユーモラスさで自分たちの歌として昇華させている。

所々に映り込む豊島“ペリー来航”渉のアフロヘアよ……「ビリーでGO!」

大阪☆春夏秋冬 × masasucks

パンク、メロコア、ロックステディからスカなど、ゴキゲンなロックサウンドをかき鳴らしているのが、大阪☆春夏秋冬のニューアルバム『BRAVE SOULS』だ。しゅかしゅんらしい、というか、まさにこういうアルバムを待ってたんだ!とガッツポーズしたくなる快作。世の情勢もあって、CDリリースが7月29日に延期されたが、全曲配信は予定どおり5月13日より開始されている。

前作のミニアルバム『ガチ上がるハイテンションまで夢じゃないこの現実』に続いて、masasucks(FULLSCRATCH the HIATUS RADIOTS J(LUNA SEA)BAND)によるサウンドプロデュースは、アイドルだと言われなければ、女性ボーカルのロックバンドを聴いてるようで、カラフルなアンサンブルに溶け込むパワフルな歌が清々しい。MAINAの歌声は表現力に磨きが掛かり、語尾の処理やちょっとした擦れ具合いなど、なんともいえない色気が増してグッとくる。

静岡から地元大阪までロードバイクで滑走する様子が盛り込まれている「Brave Soul」MV

アルバムリード曲「Brave Soul」は、Mrs.WiENER(ミセス・ウインナー、通称:ミセチン)のすあま(Vo/Gt)による楽曲。ストレートなサウンドにキャッチーなメロディ、時折挟み込まれるスカパンクテイストがフックとなっている。KEMURIの津田紀昭による「mellow mellow(メロメロ)」は、KEMURI好きが聴けば思わずニヤリとしてしまう楽曲である。演奏したる、有松益男(Dr)、コバヤシケン(Sax)、須賀裕之(Tb)という新旧KEMURIメンバーの集結もアツすぎる。そこに、masasucks(Gt)、ANTON(Ba/ FULLCSRATCH RADIOTS)、SAKI(Tp)という布陣が固めている。

ほかにも、アイニ(Prg/ SMORGAS)、山﨑聖之(Dr/ ex.HUSKING BEE fam LOW IQ 01 & THE RHYTHM MAKERS…)、SUNE(Dr/ GOOD4NOTHING)、moAi(Dr/ Dizzy Sunfist)、浜田将充(Ba/ LEARNERS)、雲丹亀卓人(Ba)、KENTA(Tb/ GELUGUGU)……といった錚々たるメンツが、がっつりと骨太なロックサウンドを次々とくり出していくのだから、ブチ上がらずにはいられない。

2nd FULL ALBUM「BRAVE SOULS」全曲視聴トレーラー

大阪のインディーズバンド・SUNSHINE DUBのカバー「SUNSHINE LOVE」や、英詞曲「Start Over」など、意欲的な楽曲が多く聴きどころ盛り沢山であるが、個人的にツボだったのは「Get up for your right」の黙々とひたすら速く刻まれるドラムと、のっぺりとしたディストーションギターがたまらない80sライクなハードコアパンク具合いで、令和時代にアイドルからこんな楽曲が出てくるとは衝撃である。そこから「Let you fly」への流れも良い。

インディーズ時代からの代表曲「BABY CRAZY」「Let you fly」はライブでお馴染みの、待望の最新バージョン(両曲ともにインディーズ時代より、楽曲キーが半音上がっている)が先頃、配信リリースされたが、その2曲ともに本作に合わせてリマスタリングされており、より鮮明な音像となっている。

前作でほぼ固まったグループの方向性を確固たるものとし、さらに意欲的な姿勢を見せながら余裕すら垣間見える。全10曲に濃縮された多彩さで、何度もリピートしたくなるアルバムだ。

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