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亀田誠治(東京事変)全青春をかけた「FM亀田」のこと。 #6

ほぼ日

東京事変のベーシストであり、椎名林檎、平井堅、スピッツ、GLAY、いきものがかり、JUJU、石川さゆり、ミッキー吉野、山本彩、Creepy Nuts、アイナ・ジ・エンド、yonawoなど、幅広いアーティストのプロデュースやアレンジを手がけてきた亀田誠治さん。
実は、音楽活動のおおもとには、個性的な少年時代の経験があるのだとか。
「ほぼ日刊イトイ新聞」の連載を全10回でおとどけします。
第6回は、今の亀田さんにつながる『全米トップ40』との出合いの話。


亀田
話が前後しますけど、1975年あたり、僕が小学5年生くらいのときに「BCL(Broadcast Listening)」、短波を使った海外放送受信が流行るんです。
めちゃくちゃマニアックな話ですが、ラジオ短波放送で、エクアドルとかオーストラリアとかの海外の放送局の放送を聞いて、「こんな状態で受信しました」という報告を送ると、絵はがきみたいなすごくかわいいカードを送ってくれるんです。「ベリカード(ベリフィケーションカード)」と言うんですけど。それを集めるのが全国的に流行ってたんです。
それで僕はナショナルの「クーガ」というラジオを買って、海外の放送を受信しているときに、3910kHzの短波で「FEN岩国」を受信するんです。
「FEN」というのは「Far East Network」、在日米軍放送局(米軍極東放送網)。今は「American Forces Network」、AFNなんですけど。
それで僕はこのFENで『American Top 40』という番組に出会うんです。つまり『全米トップ40』ですね。アメリカで人気の40曲を紹介する番組。そこで鳴っている音楽がむちゃくちゃかっこよくて、僕は夢中になります。
小学5年生で『全米トップ40』を聞きはじめて、でも小学6年生の9月に東京に転勤になっちゃったでしょう?
ところが東京では、AMの810で『全米トップ40』が聴けたんです。しかもラジオ関東では、湯川れい子さんが土曜日にその日本語版をやっていたんです。
‥‥ということは、待てよ?『全米トップ40』を英語でキャッチして、わからなかった部分は、れい子先生の日本語でもう1回聞ける。
両方とも週末の土日にやっていたんですけど、これが本当に、小学生の亀田少年のね、ある意味「仕事」になるんですよ。

亀田
とにかく、このチャートがおもしろい。日本の音楽とはまったく違う、アメリカでいま一番ヒットしている音楽をリアルタイムで聴くことができる。
それで僕は毎週、このチャートをメモりはじめるんです。1、2、3位から40位まで、「これは赤丸急上昇!」みたいな。これを毎週レポート用紙にメモしていくのが、楽しくて、楽しくて。
でも1978年頃からディスコブームがきて、『全米トップ40』に、だんだん自分の好きじゃない曲が増えていくんです。「また『サタデー・ナイト・フィーバー』の曲がナンバーワンかよ」みたいな(笑)。
今では好きなんですよ?でも当時は「なんでビリー・ジョエルが1位にならないんだろう?」とか、そういう気持ちが芽生えてて(笑)。
だけど僕はそこで「わかった!」となるんです。
母も言ってた。「自分で決めればいい」って。‥‥つまり「自分でチャートを作ればいいんだ!」と思いついたんです。

亀田
そこでぼくは自分の部屋に「FM亀田」という仮設放送局を作るんです。これは、選曲も、DJも、リスナーも、僕一人だけの放送局です。
まず、毎週土曜日はFENとラジオ関東の湯川先生の番組で情報を仕入れて、もとの1位から40位をしっかり網羅する。そのあとで土曜から日曜にかけて、自分が好きな1位から40位の「FM亀田オリジナルチャート」を作り、「FM亀田」に専念するわけです。
自分で選曲もして、DJもして、リスナーもする。1位にしたい曲があったら、自分で自分に向けてハガキを出す(笑)。
自分の部屋の前に「FM亀田」の看板も作って、両親は「誠治、部屋から出てこなくなっちゃったよ」みたいな。友達からも「お前何やってんの?」という。
で、僕は小学校6年から、彼女ができる高校2年生まで、毎週末、本当にこれだけに取り組んでました。全青春を「FM亀田」にかけてしまったんです。
だけどこのとき聞いたヒット曲のアーカイブは、たぶん何千曲。それが全部、いまも自分の頭の中で鳴ってます。
今でこそ少なくなりましたけど、昔はよく曲を作るときに、「あの曲のああいう感じに」と言って、サンプルを渡されることが、よくあったんです。そういうときも僕は「頭の中で鳴らせるから大丈夫」と言っていたんです。
そんなふうに、とにかく「FM亀田」を6年間やり続けて。

亀田
あとは方眼紙に、放送局「FM亀田」の設計図を描いていたんです。
「FM亀田」はDJもやるでしょう?選曲もやるでしょ?で、社長も僕。

だから‥‥もう書いちゃおう(笑)。
書かずにいられなくなってきた。
たとえば方眼紙に、こんなふうに書くんです。

(ホワイトボードに書いていく)
ここが放送するサテライトスタジオ。
ウルフマン・ジャックとか、
海外のDJがラジオをやっている図を
思い浮かべながら、
「ここはスタジオで、こっちに富士山が見えて、
こっちからは東京タワーが見える」
みたいなシチュエーションを描くわけ。

亀田
そのとき描いていた計画だと
「FM亀田」は
33階建ての高層ビルの33階にあって、
ここに社長室。
僕が社長だから、ここにいるわけです。

DJも自分で、ここがレコード室。
「ここはアーティストや来客が集まれる
ロビーにしよう」なんて言って、
方眼紙にこんな設計図を書いていました。

DJとしての仕事もあるじゃん?
だから忙しいんです。
でも「FM亀田」の設計もして(笑)。

会場
(笑)

亀田
わけもわからず、この放送局を
「どこに建てようかな?」と思って、
小学校6年とか中1ぐらいのとき、
チャリで新宿に下見しに行くんですよ(笑)。

当時はまだ西新宿に高層ビルが
5本ぐらいしかない時代だったんです。
だから新宿まで行って、
目立つビルを見ては妄想が膨らんで
「このビルの33階がいいな」みたいに
考えていました。

‥‥で、これ。
ここからがすごい話なんですけど。

4年前に辞めちゃったんですけど、
僕、J-WAVEさんで5年間
「FM KAMEDA」っていう番組を
やらせていただいていたんです。

僕がラジオ好きだと聞いたJ-WAVEの方が
「じゃあ月~木の帯で、亀田さんの切り口で
音楽の魅力を語る番組をやりませんか?」
って言ってくれて、
「FM KAMEDA」という名前にして。

それで「やった、ラジオで喋れる!
あの時代に思い描いた、自分で選曲して
自分でかけたい曲をかけられる番組だ!」
と思ってJ-WAVEさんに行ったんです。
そしたら‥‥。

J-WAVEさんのスタジオが
六本木ヒルズの33階にあって、
窓から富士山と東京タワーが見えたんですよ。

会場
おおおーーー。

亀田
もう心臓が飛び出るかと思った。本当に。

一同
(拍手)

亀田
だから「夢がかなう」というよりも、
なにか、夢にも思っていなかったことが
夢になった感覚でした。

[1978年「FM亀田」の前で。]

(出典:ほぼ日刊イトイ新聞「 僕と音楽。亀田誠治|(6)「FM亀田」」)

亀田誠治(かめだ・せいじ)
1964年生まれ。
これまでに椎名林檎、平井堅、スピッツ、GLAY、いきものがかり、JUJU、石川さゆり、ミッキー吉野、山本彩、Creepy Nuts、アイナ・ジ・エンド、yonawoなど、数多くのアーティストのプロデュース、アレンジを手がける。
2004年に椎名林檎らと東京事変を結成。
2007年と2015年の日本レコード大賞にて編曲賞を受賞。
2021年には映画「糸」にて日本アカデミー賞優秀音楽賞を受賞。同年、森雪之丞氏が手がけたロック・オペラ「ザ・パンデモニアム・ロック・ショー」では舞台音楽を担当。
近年では、J-POPの魅力を解説する音楽教養番組「亀田音楽専門学校(Eテレ)」シリーズが大きな話題を呼んだ。
2019年より開催している、親子孫3世代がジャンルを超えて音楽体験ができるフリーイベント「日比谷音楽祭」の実行委員長を務めるなど、様々な形で音楽の素晴らしさを伝えている。

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