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【INTERVIEW】イタリア在住35年、「土」と「光」と「闇」、そして守るべき文化が私を育てた―焼き物と絵本の〝凱旋〟秀作展を前に 岡井美穂(陶芸家&絵本作家)

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【INTERVIEW】イタリア在住35年、「土」と「光」と「闇」、そして守るべき文化が私を育てた―焼き物と絵本の〝凱旋〟秀作展を前に 岡井美穂(陶芸家&絵本作家)

陶芸家で絵本作家。雑誌の挿絵も描けば、100号の油絵も描く岡井美穂さん。イタリア国政府官費留学でイタリアに渡り35年。久しぶりに町田市成瀬で個展を開催する。イタリアの土から生まれた陶造形と絵本の原画が、海を渡って不思議な空間をつくりだす。展覧会を前に、岡井さんの制作の現場や展覧会に対する想いを伺った。

イタリアのアトリエでの岡井美穂さん
1965年神戸市生まれ。京都市立芸術大学卒業。1990年イタリア国政府官費留学生に選ばれ渡伊。ファエンツァ国立陶芸学院建築デザイン学科卒業。ボローニャ絵本原画展にて注目を集め、日本、イタリア、韓国、中国、台湾で絵本を出版。イタリア・フォルリ・アート賞受賞のほか、神戸長田文化賞など国内外で多数受賞。2016年出版の絵本「いちばーんのり」が日本絵本大賞候補に選ばれる。2021年幼児向け映像番組の放映開始。エッセイに「ボスコ通りの靴音」(K.K.ベストセラーズ)、絵本「きりんいす」(福音館書店)、「まっくらトンネル」(フレーベル館)他多数。

─ 活動の場がイタリア、その期間も35年ということですが、どんな経緯からですか。

岡井 京都市立芸術大学の美術学部では、陶芸を専攻しました。瀬戸や信楽の土を使い、決められた釉薬でしかも指示された温度で焼いた作品に満足できない日々でした。高校時代から映画が好きで、お気に入りのフェデリコ・フェリーニ監督のいるイタリアに行きたいという夢がありました。行くのなら単なる観光ではなく、その地にとけこんで学びたいと思ったのです。大学卒業後は美術の専門学校で教鞭をとりながら、官費で行ける留学生を目指しました。3年目にイタリア国政府官費留学生に選ばれ、「ファエンツァ国立陶芸学院」の建築デザイン学科に留学が決まりました。

─ 留学先の大学や、ファエンツァでの生活はいかがでしたか。

岡井 大学のあるファエンツァは、イタリア中部アペニン山脈の東麓にある人口6万人の小さな街で、ルネッサンス期から陶芸の街として栄え、豊かな文化が残されている地です。大学ではイタリア語だけで、英語も通じず文房具ひとつを買うのも苦労しました。2年になって建築の素材について研究していたとき、後に夫となる陶芸家の工房を訪れる機会があり、あらためてこの地の「土」の持つ魅力に惹きこまれたのです。ファエンツァの土は、非常に粒子が細かく滑らかで、今までにない「土」の感触にのめり込み、無我夢中で作品を造りました。その後ファエンツァの中央広場に近い場所にアトリエを構えました。


▲アペニン山脈から良質な白い陶土が豊富に採れたことにより、ファエンツァは陶器の産地として発展した。右は、小学校の体育館くらいの広さのある岡井さんの工房外観。

 
 アトリエにはイタリアの著名な美術史家であり、「ファエンツェ国際陶芸美術館」のボヤーニ館長なども時々見に来ては、「岡井の作品は、日本でもイタリアでもない。まさにオリジナルだ。作品は一つの統一感が生まれた時が傑作になる」と評価してくださり、イタリア各地の巡回展で作品を展示してもらえるようになりました。

▲岡井さんのアトリエの風景。上段右は釉薬の数々と、下段は作品を焼く窯

― その後、日本でもイタリアでも個展を開催され、絵本やエッセイの執筆などにも活躍の場を拡げられました。

岡井 ヨーロッパの数々の招待展に出展し、日本でも展覧会を開催しました。その中には、2009年に小田急百貨店新宿店のアートサロンで開催した「イタリアより花束を 岡井美穂 絵画・陶造形展」、近鉄百貨店阿倍野店でも個展を開催しました。もともと油彩を描くことが好きで、イタリアのボローニャで開催される「ボローニャ国際絵本原画展」に出展したことがきかっけで、日本をはじめイタリア、韓国、中国、台湾でも絵本が出版されるようになりました。その他にも、雑誌や新聞の挿絵、エッセイなども執筆しています。

左「いちばーん のり」ビーエル出版(BL出版) 2016年 11月★第21回日本絵本賞読者賞候補作品★ 右「おしゃべりこんぶ」フレーベル館 2015年 11月

─ 幅広いマルチな活躍ですが、作品への取り組み方は。
岡井 依頼されたテーマで制作することもあります。けれども主に作品の制作は、抽象的な言い方ですが、インスピレーションが天から降ってわいてくるという感じを大切にしています。私たちは天や宇宙と調和を保ちながら、生きている存在です。常日頃美しい世界には、向こうからいろいろなアプローチがあり、その一つひとつを受けとめることにより、つくろうとするものが突然目の前に現れるのです。常にそれらに耳を傾け、調和を保ちながら過ごす中で、目の前に現れたものを具現化しているという感じでしょうか。

陶造形の作品

─ 岡井さんの作品にはイタリアが投影していますか。
岡井 イタリアは世界遺産の保有数が世界一の文化大国ですが、私の住む家も1350年~1400年に造られたものです。街並みの雰囲気が変わってしまうので、バルコニーの手摺ひとつも、建築家を通して市の審査を受けなければ塗り替えることができません。家の下には、中世のアーチも眠っています。フェリーニ監督の映画の脚本もつとめた、脚本家のトニーノ・グェッラ氏とは、大変親しくさせていただき企画展の開催なども手がけました。彼はタルコフスキー監督の映画『ノスタルジア』の脚本にも名を連ねていますが、『ノスタルジア』では、明るいイメージのトスカーナの風景がひどく暗いのです。イタリアはまさに、光と闇があり、暗い冬の厳しさがあるから、人々が思いっきり陽気になれる夏がとても輝いて見えるのだと思います。北イタリアの生活は、一年を通じてそんなに明るいものではなく、石畳の生活は暗く重いところもあります。国をあげて守られてきた美しい建造物や街並みの全てが、私の作品に凝縮されています。

▲イタリア・エミリア=ロマーニャ州のファエンツァは、「ファイアンス焼き(マヨリカ陶器)」の語源となった世界的にも有名な陶芸の街。写真は岡井さんの工房がある近くの村の風景。華やかすぎる観光地化はされておらず、素朴でゆったりとした暮らす雰囲気を感じる。

 神戸にアトリエもありますが、作品の制作はイタリアでしかできません。目に映る色も、油彩の絵の具の色も、釉薬もイタリアの素材でなければ出せないものだからです。

─ 6月13日から久しぶりに個展が開催されます。
岡井 本展では、イタリアの土から生まれた陶造形と絵本の原画を展覧します。異なる環境の素材から生まれた作品は自ら不思議な空間をつくりだします。その空間で作品を楽しんでいただけたら幸いです。

イタリア・日常の美世界「岡井美穂 やきもの・絵本原画展」
会期:2026年6月13日(土)~6月26日(金)

時間:11:00~18:00 (ギャラリートーク 13日(土)17時より)

会場:ギャラリー成瀬17 TURRY‘SCOFFEE横 プラザナルセ2階(JR横浜線・成瀬駅徒歩2分) 
問い合わせ:042-705-684

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