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贈り物にしたいマンガ【アニメ化で話題沸騰】『とんがり帽子のアトリエ』 才能を「特別なもの」にしない 東京藝大卒の漫画家が語る、子どもの可能性を遮らない“親の作法”

コクリコ

贈り物にしたいマンガ【アニメ化で話題沸騰】『とんがり帽子のアトリエ』 才能を「特別なもの」にしない 東京藝大卒の漫画家が語る、子どもの可能性を遮らない“親の作法”

世界各国で高く評価されアニメ化で話題の『とんがり帽子のアトリエ』の作者、漫画家の白浜鴎さんに、東京藝術大学で培われた「才能」への考えかたをインタビュー。自身のアトリエの貴重な写真も公開。

【▶画像を見る】白浜先生のお仕事場に潜入!

全世界で750万部発行、現在アニメ放映中の『とんがり帽子のアトリエ』作者である白浜鴎(しらはまかもめ)さんへの全3回のインタビュー。最終回となる今回は白浜さんの芸術的なルーツと、東京藝術大学で培われた「才能」への考えかた、そして、子どもたちの個性をどう見守るべきかという、教育にも通じる深い眼差しについて伺います。

【とんがり帽子のアトリエ】
累計発行部数750万部突破、アイズナー賞をはじめ数々の賞を受賞、世界各国で高く評価されているファンタジー作品。魔法への憧れを抱く少女・ココは、魔法使い・キーフリーと出会い、大きな秘密を知る。魔法使いたちが隠した「絶対の秘密」とは──。

「絵を描く」と「字を書く」に境界線はない

──白浜さんは東京藝術大学でデザインを専攻され、圧倒的な描写力で世界を魅了されていますが、ご自身の才能をどう捉えていらっしゃいますか。

白浜鴎さん(以下、白浜):よく絵のことを褒めていただくのですが、私自身は「でもみなさんだって絵を描いていますよね」と思っていて。

例えば漢字なんかは「象形文字」、つまりもともとは絵だったものが進化して字になったもの。文字は「図形を正確に書いて、何が書かれてあるかを視覚的に伝える」という点では、実ほとんど同じカテゴリのものだと思うんです。

もちろん、描写のレベルの差や写実的か抽象的か図形的か…などといった違いはあっても、その本質は変わらない。 私はほとんど「字を書いているつもり」で絵を描いています。

だから、絵が描けない…と思っている子も、毎日字を書いている(=絵を描いている)のに、どうして絵にだけ特別な壁を感じるの? あなたはもう描き始めているかもよ? と。認識を少し変えるだけで、世界の見え方はけっこう変わってきて、憧れていることにも挑戦がしやすくなると思うんです。

──「自分は特別ではない」というフラットな視点は、作品の隅々にまで注がれている、すべての存在への敬意や優しいまなざしにも繫がっている気がします。

白浜:そう受け取っていただけたら嬉しいです。私にもあまり「自分が特別だ」という意識はありません。もともと誰しもが技術を習得する可能性は備わっていて、ただ“興味”や“環境”が違うだけ。そういう視点を伝えるために、よりたくさんの種類の物語が必要なのかなと思っています。

「デザイン」と「マンガ表現」の関係

▲デスクに置かれた、インク壺とペン。作中のココたちが魔法を描くように、白浜さんの手によって、ここから新たな物語が紡がれていく。

──高校・大学と一貫して「デザイン」を専攻されていますね。油画などのファインアートではなく、デザインを選んだ理由は?

白浜:これはもう、単純に就職に有利だと思ったからです(笑)。あとは実家がそこまで裕福というわけではなかったこともありますね。

それから私は、映画や漫画といったエンターテインメントが大好きだったので、自己表現を突き詰めるファインアートよりも、より商業的に何かを伝える「デザイン」の方が、自分の好きな世界に近いような気がしたんです。

今にして思えば、ファインアートも必ずしも私が思っていた感じではないな、と思うのですが、当時はなかなかそこまでわからなかったですね。

──その「伝えるための技術」が、マンガの表現にも生きているのでしょうか。

白浜:そう思います。私はスケッチのような「状況説明のための絵」というのが得意な方で。プロダクトデザインを学んでいたこともあって、「いつ、どこで、誰が、何をしているか」が見た相手に100%伝わるような絵を好んで描いてきました。それが、マンガというメディアにはたまたま合っていたのかもしれません。

──上橋菜穂子さん『神の蝶、舞う果て』の装画など、他の作家さんの世界を絵にするお仕事も多いですね。

▲『神の蝶、舞う果て』(著・上橋菜穂子)。白浜さんは装画と、キャラクターデザインをてがけた。

白浜:上橋先生の作品は、日本のファンタジー好きなら誰もが通る道。『精霊の守人』だったり、『獣の奏者』だったり、『鹿の王』だったり……私も大好きだったので、お話をいただいた時は「えっ、ウソ! 上橋先生ですか!?」と信じられない気持ちでした。

キャラクターデザインではリテイクを重ねて、上橋先生の作品が持つ独創的で力強いイメージに近づけていきました。先生にイメージをいろいろと教えていただいて描いたものをお見せして、また直して……という感じですね。

▲『神の蝶、舞う果て』の主人公、ジェードとルクラン。(絵:白浜鴎 『神の蝶、舞う果て』webサイトより)

白浜:私はもともとイラストレーターとしての活動が先だったので、他の方の作品のイメージを膨らませる作業はリフレッシュの時間でもあるんです。なので、スケジュールが許せば、まだまだやってみたいですね。

──逆にというか、ご自身の作品がグッズやアニメになっていくこともありますよね。そこで「こう直してほしい!」ということもありますか。

白浜:違うと思ったときはもちろんNGを出しますが、あがってくるものが素晴らしいので……。あまり大きなこだわりもありませんし、魔法陣などはもともと子どもたちに真似して描いてほしいと思っていたので、いろいろな人に描いてもらえること自体、嬉しいです。アニメはもう、アニメーターさんに苦労をかけてばかりで……(笑)。

上映会で拝見したものも大迫力で素晴らしかったので、たくさんの方に見ていただけたらと思っています。作中のキャラクターであるフデムシのぬいぐるみがあるんですが、それをみなさんが連れてきてくれて、ペンライトのように振ってくださっていたのも嬉しかったです。

▲「フデムシ」は筆のような毛を持つ小動物で、主人公ココに懐いている可愛らしいキャラクター。白浜さんのアトリエには、ミニサイズのとんがり帽子を被ったフデムシのぬいぐるみが! ちょこんと座る姿がとってもキュート。

──子どもの才能を伸ばしたいと願う親たちへ、ご自身の経験からアドバイスをいただけますか。

一番大事なのは「遮らないこと」

白浜:子どもが興味を持ったことを「遮らないこと」が一番大事なのではないでしょうか。「女の子だから、男の子だから、これは合わないでしょう」と思い込みの型にはめないこと。

もちろん、性別のバイアスに縛られるな!という大人目線からの押し付けもよくないと思います。大事なのは本人の選択です。「博物館に行きたい」「お人形遊びがしたい」「恐竜の図鑑が欲しい」などと言った時に、「遮られない」という安心感を与えられたら、それだけで、その後の好奇心の幅は全然違ってくるのではないかと思います。

もし、やりたいことがもう決まっている子なら、早い段階でそちらに振り切るのも良いのではないかと思います。私は授業中もずっとノートを絵で取っていましたが、「やりたいことがもうあるのに、なぜ他のことをしなきゃいけないんだろう?」と疑問に思うような子供でした(笑)。

心が決まっている子には、「じゃあ、その道に進むために必要な勉強もあるんじゃない? 夢を叶えるためにはどんなルートがあるかな?」と、大人が一緒に未来の作戦を立ててあげるのも良いのではないでしょうか。

──最後に、周囲との実力の差に悩んだり、劣等感を抱いたりしている子ども(あるいは大人)へ、メッセージをお願いします。

白浜:劣等感や競争心は、どうしても抱いてしまうものです。私自身はかなり楽観的な性格なのですが、芸大に行くと言った時には親に、「そんなところへ行ったら、周り中うまい人だらけで、絵が嫌になっちゃうかもよ」と心配されました。

でも、世の中にある絵は…アニメも挿絵も美術館の絵も、当然全てうまい人が描いているというか、もう世の中には「うまい絵」しか存在しないじゃないですか。だから私としては、「なぜ今さらそんな当たり前のことを言うんだろう?」と思っていました(笑)。

『とんがり帽子のアトリエ』の中でも、できない自分にもどかしさを感じている子もいれば、他人と自分を比べて落ち込んでしまう子もいます。

でも、劣等感はうまく使いこなせば「やってやる!」というポジティブなエネルギーに転換できるもの。この作品が、皆さんの悩みを少しでも軽くしたり、学ぶことが楽しくなるきっかけになってくれたら嬉しいです。

取材・文/小川聖子
撮影/安田光優

白浜鴎 (しらはまかもめ)PROFILE
東京藝術大学デザイン科を卒業後、フリーのイラストレーター、漫画家として活動。『マーベル・コミック』や『DCコミックス』、『スター・ウォーズ』等のアメリカンコミックスの表紙も手がけている。他作に『エニデヴィ』(全3巻/KADOKAWA)など。  

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