ispace、英国国立レスター大学との共同研究で月面での越夜に挑む。放射熱を活用したヒーターの実用化を目指す
株式会社ispaceは、英国国立レスー大学との間で、月面での越夜に関する技術的な共同開発および、将来的な月面ミッションでの実証実験について合意した
ispaceは、ispaceの欧州法人であるispace EUROPE S.A.を通じレスター大学と、現在日本法人で開発中のシリーズ3ランダー(月着陸船)およびローバー(月面探査車)の拡張機能としてラジオアイソトープヒーターユニットを搭載し、月面での越夜に挑戦するための戦略的なコンサルティング契約を締結した。
同大学は、英国宇宙庁が助成するInternational Bilateral Fundのフェーズ1、2を獲得しており、将来の月面ミッションにおいて越夜技術を活用するミッションコンセプトを作成しているという。
月面では、気温が摂氏マイナス170℃まで下がる夜間が約2週間続き、その間一度も太陽が月面を照らすことはなく、また月面において太陽光エネルギーを利用した発電等も実施することができない。そのため、月面において長期ミッションを実現するためには、過酷な低温環境となる夜間を越えて活動を再開させるための新しい技術やシステムが必要不可欠になる。
レスター大学の宇宙原子力発電グループは、欧州宇宙機関(ESA)のEuropean Devices Using Radioisotope Energy(ENDURE)プログラムからの資金援助をはじめ、英国宇宙庁からも多大な支援を受けながら10年以上にわたり、ラジオアイソトープによる発電システムを研究開発してきたという。
この発電システムはラジオアイソトープの崩壊熱を利用して宇宙機に熱を供給でき、また熱から電気を作り、主要サブシステムに電力を供給することが出来る仕組みになっている。
プロジェクトリーダーで、レスター大学物理学天文学部のハンナ・サージェント博士は、次のようにコメントしている。
サージェント氏:レスター大学が国立原子力研究所と共同で開発した、ラジオアイソトープ発電に関する技術は、現在行っている様々な試験で非常に良好な結果が確認されています。ispaceとのプロジェクトでは、宇宙機が越夜を成功させるために必要な熱の供給にラジオアイソトープヒーターユニットを使用し、実証試験を行う予定です。 International Bilateral Fundのフェーズ1は、海外パートナーと共に電力のニーズや優先順位の理解促進用途で使用し、フェーズ2では、本ミッションに対するコンセプトの実現性を実証するために、検証に加えて実証実験を実施する予定です。 さらに、民間および商業宇宙産業全体に向けて、過酷な環境下における電力需要を満たす技術として示す機会となります。
株式会社ispace Founder&CEOの袴田武史氏は、次のようにコメントしている。
袴田氏:ispaceとレスター大学の協業により、月面での越夜技術を本格的な実証に向けてスタートできることを大変うれしく思います。月面での越夜は、今後の月面探査・活動において欠かせない機能になります。この機能がispaceのランダーやローバーに搭載されると、今後多くの月のプレーヤーに対して、より長期的かつ多様なニーズに対応した月面ミッションを提供できるようになり、シスルナ経済圏発展に非常に大きな一歩になります。 ispaceは現在、2023年10月に採択された、経済産業省が実施する「中小企業イノベーション創出推進事業」において交付された補助金を活用して、シリーズ3 ランダーの設計・開発を進めています。月プレーヤーのニーズに合わせてこのシリーズ3の機能を将来的に高めていくために、当越夜技術以外にも、今後も多くの企業や機関との協議を行ってまいります。
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