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楊貴妃が愛したおしゃれ空間。暮らしに溶け込む“美”のアートとは

イロハニアート

世界三大美女の一人、楊貴妃。その美しさの秘密は容姿だけでなく、彼女が身を置いていた空間や、日々触れていたものが関係していたのかもしれません。楊貴妃はどのようなものに囲まれて日常を送っていたのでしょうか。

楊貴妃 上村松園筆

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この記事では楊貴妃が生きた時代のライフスタイルに注目しながら、身近にあった“美“のアートとその魅力をご紹介します。

美貌で国を滅ぼした?楊貴妃とは


楊貴妃の本名は楊玉環といい、中国・唐の第6代皇帝である玄宗の息子である李瑁の妃でした。しかし玄宗にその美しさに見初められ、後宮で最高位の「貴妃」となります。琵琶をはじめとする音楽や舞踊にも優れていたと伝えられ、まさに才色兼備の女性です。

唐玄宗

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そんな楊貴妃の存在は宮廷にも大きな影響を与えます。キーパーソンとなるのが安禄山と楊国忠という二人の男。楊貴妃に気に入られて彼女の養子となった安禄山は、出世を重ねていきます。

一方で楊貴妃の一族である楊国忠は、楊貴妃に夢中の玄宗に代わって政治の実権を握るようになります。安禄山と楊国忠の対立は深まり、やがて有名な「安史の乱」へ発展。唐を揺るがす大きな内乱へとつながりました。

楊貴妃図 絹本着色

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玄宗や楊貴妃は都を追われ、逃げる途中で兵士たちの不満が爆発。「すべての原因は楊国忠らにある」として楊一族が相次いで殺害されます。楊貴妃も責任を追求され、玄宗の擁護も虚しく最終的には処刑されてしまいます。

この出来事から彼女は国を傾けた美女、いわゆる“傾国の美女”と語られるようになりました。絶世の美女として現代でも知名度の高い楊貴妃ですが、時代や人々の関係性にも大きな影響を与えた重要な人物といえます。

唐の時代は文化の最盛期


楊貴妃が生きた唐の時代は、さまざまな分野で芸術が花開いた時代でした。色彩豊かな陶器から繊細な筆づかいの絵画まで、さまざまなアートが当時の人々の芸術性を今に伝えています。

独特の色彩と造形が生み出す「唐三彩」


三彩貼花 宝相華文 壺 (7-8世紀 唐)

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唐のアートとして特に有名なのが「唐三彩」です。鉛釉をかけて焼き上げた副葬用の陶器で、もともとは墓に納めるために作られたものでした。「三彩」という名前はクリーム・緑・白または、緑・赤褐色・藍の三色のデザインに由来しています。色を組み合わせて表現する独特の色彩感覚が特徴です。

ラクダに乗った西洋人

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形は壺や皿などの器物に加えて、皇帝・役人・女性・異国の人々といった人物像や、馬・ラクダ・羊・虎といった動物も存在します。多彩な形状から当時の豊かな芸術性が読み取れます。

宮廷文化を支えた画家たち


唐の時代は陶器だけでなく、絵画の分野でも大きな発展を遂げます。宮廷では閻立本や呉道玄など多くの画家が活躍しました。

当時発展した画法が山や川、渓谷といった自然の風景を描く「山水画」です。山水画とはもともと六朝時代に始まり、唐の時代に完成形となりました。

山水画の作者のなかでも注目したいのが玄宗の時代の官僚・李思訓です。彼には絵の才能もあり、『江帆楼閣図』などの山水画に加えて樹木画や神仙画も高く評価されています。

唐 李思訓 江帆樓閣

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李思訓には、玄宗の命によって大同殿に蜀道・嘉陵江の風景を描いたという逸話も残っています。同じく命を受けた呉道玄はわずか一日で描き上げましたが、李思訓は数か月をかけて丁寧に仕上げ、称賛されたと伝えられています。彼が描いた泉の絵からは、夜になると本当に水が流れるような音が聞こえたという言い伝えもあり、その画力の高さを物語っています。

李思訓ら画家たちの活躍は、唐の文化をより豊かなものにしていきました。唐にはそれまでの中国絵画の歴史をまとめた記録『歴代名画記』などもあり、当時がいかに芸術の成熟していた時代であったかが分かります。

楊貴妃も愛した生活の中の“美”


楊貴妃が生きた唐の時代のアートは特別な場所に飾るだけでなく、暮らしのなかに自然と溶け込んでいました。生活に使う道具一つにも素材や装飾へのこだわりがあります。

今回はお風呂・香炉・鏡・宝石など、唐の日々を彩っていた身近なアートを見ていきましょう。

華やかに演出されたお風呂


華清宮は唐代の離宮および温泉宮です。玄宗がもとは息子の妃であった楊貴妃(当時は楊玉環)を住まわせたのち、貴妃として迎えます。唐代の漢詩には、楊貴妃がこの華清宮で湯浴みしていたことも記述されています。

華清池

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華清宮には現代でいうお風呂が多数存在しましたが、それらは単に体を清めるだけのものではありません。

湯船には美しい石が敷き詰められ、銀や香木でつくられた船が浮かび、櫂は宝玉で飾られていたと伝えられています。さらに、仙人の住むといわれる島をかたどった山々が湯の中に配されるなど、華やかな演出がなされていました。

流れる湯には宝石が混じることもあったとされ、その贅沢さは楊貴妃に相応しい“美”のアートそのものです。

飾りたくなるデザインの香炉


唐では良い香りがすることが美人の条件とされ、香を焚くのが習慣でした。楊貴妃もその代表的な存在です。ムスクの香りを好み、自然と全身から良い香りがする特別な体質であったといわれています。

香を嗅ぐ素敵な道具香炉

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そんな唐の暮らしに欠かせなかったのが香炉です。部屋に置かれた香炉は、香りを楽しむ道具であると同時に、インテリアのような役割も担っています。

唐三彩の多くは副葬品ですが、香炉のような生活雑貨も一部つくられています。思わず飾っておきたくなるような美しいデザインのものも存在しました。独特の色合いと立体的な造形は、香りとともに屋内でのリラックス時間を演出していたことでしょう。

背面の装飾が美しい銅鏡


銅鏡は青銅でつくられた鏡のことです。古くから使われてきた道具ですが、その主な役割は現代の鏡のように姿を映すことではありませんでした。古代中国では呪術のために使用する、特別な道具であったとされていた重要なアイテムです。

ライオン葡萄鏡

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唐の時代には背面の装飾が美しい銅鏡が登場します。なかでも「海獣葡萄鏡」の背面には葡萄の唐草文様が広がり、その間に龍・獅子・麒麟・孔雀など、さまざまな生き物たちが彫り込まれています。

ちなみに「海獣」とは異国の動物を指し、当時の異文化交流も感じられます。モチーフとなっている葡萄もシルクロードを通じて伝わったもので、豊穣や繁栄の象徴とされていました。

アクセサリーや楽器を彩る宝石


唐の時代には金・銀・銅でつくられた簪が、髪をまとめる実用品としてだけでなく、美しさを演出するアクセサリーとして身につけられていました。簪の頭部には多彩な文様が施されるなど、デザイン性の高いものも多く見られます。

当時好まれていた宝石は翡翠と真珠です。翡翠は清らかさや知恵、強さ、不老不死を象徴しています。真珠は月から生まれ太陽に育まれたものと考えられ、光と影2つの力をあわせ持つと信じられていました。

新潟県糸魚川市で採取された軟玉

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宝石による装飾は楽器にも施されていました。楊貴妃が持っていたとされる打楽器・磬は、藍田で採れる緑玉が磨き上げられたもので、見た目にも華やかな仕上がりであったと伝えられています。音だけでなく演奏する姿の美しさまでも意識されていたことが分かります。

【まとめ】ちょっと素敵なものを選ぶだけでアートに


楊貴妃も愛した “美“のアートは、特別な芸術作品を飾るというよりも、日々使うものを楽しむことです。香炉や鏡、アクセサリーといった身近な道具もこだわりが込められ、唐の時代の暮らしには自然とアートが存在していました。

現代でも「ちょっと素敵だな」と思えるものを選ぶだけで、日常がアートに結びつくのかもしれません。

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