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奥智哉インタビュー「全エンタメ作品の中で一番の衝撃」【 ドラマ『十角館の殺人』】

ウレぴあ総研

撮影/河井彩美

「映像化不可能」と言われ続けてきた綾辻行人の傑作ミステリー小説『十角館の殺人』が、実写ドラマ化され、3月22日(金)からHuluで独占配信される。

【奥智哉】ドラマ『十角館の殺人』インタビュー&場面写真

角島(つのじま)にある十角形の外観を持つ“十角館”と呼ばれる屋敷で、半年前、天才建築家・中村青司が亡くなった。現在は無人島となった角島に、大学のミステリ研究会の面々が訪れた頃、“本土”にいた元ミステリ研究会メンバー・江南孝明(かわみなみ・たかあき)の元には中村からの手紙が届く。死者からの手紙の謎を追う江南は、その過程で出会った島田と共に中村の死の真相に近づいていくが……。

本作で自身初の主演を務めることになった、江南を演じた奥智哉。江南を“コナン”と呼ぶ島田役の青木崇高とタッグを組んでの撮影現場では、さまざまな学びがあったと振り返る。演じた奥自身が「僕がこれまで触れてきた全エンタメ作品の中で一番の衝撃でした」と述べる事件の真相を伏せつつ、本作への想いを語ってくれた。

自分がどんなことをしても全部受け止めてくれる

――本作への出演が決まったとき、「プレッシャーを感じた」とコメントされていましたが、一番大きな要因は何でしたか。

今回、ベテランの役者陣の方とお芝居をさせていただくシーンが多かったので、そこはやはりプレッシャーでした。でも実際にご一緒してみると、同世代とはまた違った刺激を受けることができました。

同世代だと、自分も何かやってやろうとか、そういう気持ちが湧くと思うんですけど、ベテランの方だと、自分がどんなことをしても全部受け止めてくださるし、それをまた違う形で返してくださるので、逆にプレッシャーが安心感に変わって。一緒にいてくださるだけで気持ちが楽になって、自然体でいることができました。

――初の主演作となりますが、その点はどう受け止めましたか。

最初は全く実感が湧かなくて、撮影中も自分が主演だから空気を作っていこうとか、そういう気は張らずにいました。内片(輝)監督からも、「とにかく楽しんで、気楽にいてほしい」と言われていたので。肩に力が入るようなことはなかったです。

――逆に作品の先頭に立って宣伝活動をしている今のほうが、「主演」を感じますかね?

そうですね(笑)。あとは、情報解禁の後、周りから「主演」ということに触れられたときに感じます。

学生時代からの友達が原作を好きで、「主演やるんだ!」って驚かれたときは、恥ずかしさもありつつ、どこか誇らしい気持ちもありました。友達に対しては「やっと主演やれましたよ」みたいな、以前から、みんなに活躍している姿を見せたいという気持ちはあったので、うれしさはありました。

――本作は「映像化は不可能」と言われてきた小説の実写化となりますが、原作・脚本を読んだときはどのように感じましたか。

僕は恥ずかしながら原作を存じ上げなかったので、今回の出演が決まってから読ませていただいたのですが、真相がわかったときの衝撃度はすごかったです。僕がこれまで触れてきた映画、漫画などの全エンタメ作品の中で一番の衝撃でした。

ただそれを映像化すると考えたときに、「確かに、難しいかも」と、不安にはなりました。小説という世界だからこそ成立してる部分が大きいと思ったので。

――私は敢えて原作を読まずに映像から観させていただいたのですが、かなりの衝撃度でした。映像でも成立していると思います。

本当ですか? 良かった(笑)。けど、僕もこの話の鍵となる方のお芝居を実際に現場で見させてもらったときに「これなら大丈夫だろう」って、安心しました。

知的欲求に対して、素直で貪欲なところは似ている

――物語の舞台は1980年代となります。そのために意識したことはありますか。

言葉遣いは気を付けました。今どきの人の話し方にならないように。あと、髪型はちょっと全体的にボリュームがあって、前髪は流すのではなくぱっつん気味でちょっと巻いて。当時、流行っていた髪型なんですけど、「江南のキャラとも合っているな」と思いました。

――江南の部屋中にも80年代ならではのアイテムがありますね。

(ダイヤル式の固定)電話は持ってみたらすごく重かったです。受話器を置いたときの“ガチャン”という音が、聴いたことないはずなのに、なぜか懐かしい感じがありました。

それから、部屋に置いてあるものから江南がどんな人なのかを想像できる部分もあって。大学生の一人暮らしなのにテレビが置いてあったり、家具もしっかりしていたり、「意外と裕福な家の子なんだろうな」とか。

新聞のスクラップや、棚にも本がたくさんあって。僕が普段は絶対に読まないジャンルの本もあったので、脚本を読んだ時点では、自分と江南は似ているところがあると思っていたんですけど、かけ離れているのかもと思ったり。

マネキンとか、人体模型もあって、それに帽子をかぶせて使っていたり。なかなか変態チックな趣味をしてるなと(笑)。「僕が思っていたよりも江南は奇人かも」とか、部屋から感じることも多かったです。

――ご自身と「似てる」と感じた部分は、どういうところですか。

根が子どもっぽいというか。一度気になったことをとことん突き止めようとするところは、僕にもあるなと。江南は最初に受け取った手紙が気になって、そこからどんどん事件に夢中になっていきますけど、僕も一度気になることがあると、それについてずっと考えたり、調べたりしてしまうので。知的欲求に対して、素直で貪欲なところは似ているなと思います。

――ただ、江南は周りのキャラクターと比べると、わりと常識的で普通の人でもありますよね。

ミステリ研究会の中でも、主役感はなくて、脇役と言うか、名だたるミステリー作家に憧れてはいるけど、ホームズにはなれない(助手の)ワトスンタイプですね。自分でもそれを自覚しているようなセリフもありましたけど。

僕は江南がミステリ研究会を辞めたのも、「自分はホームズのようにはなれない」というコンプレックスが原因の一つにあるのかな?とも思っていました。そういうところからも、江南のキャラクター像を拾っていきました。

僕が原作で味わったあの衝撃をドラマでも味わっていただけたら

――現場では江南と一緒に謎を解いていく島田潔役の青木崇高さんと一緒にいる時間が長かったと思います。青木さんからは「お芝居だけでなく、人としての在り方についても教えてもらった」とコメントされていましたね。

まずお芝居のことで言うと、江南が人の話を聞きながらメモを取るシーンで、メモを見ながら書くのではなく、相手の目も見ながら書くのがリアルな反応だと教えてもらいました。そういう細かいことまで見てもらっていました。

あとは、とにかく自分が何かを体験したときに湧いた感情を大切にするようにと。そのために一人旅を勧められました。

一人旅は全部自分で決めなくちゃいけないし、その場、その場で瞬時に判断しなくてはいけないことも多いから、そういう経験を培うことで、役者としても、人としても成長できるんじゃないかと。まだ一人旅はしたことがないのですが、青木さんからは「いきなり海外もいいかも」と言われました。

――海外は行ったことはあるのですか。

12歳のときに、親戚が住んでいたこともあって、シンガポールに行きました。でも当時の記憶がそんなになくて(苦笑)。なのでこれからどんどん新しいことに挑戦していきたいです。

――本作を視聴者の方にはどのように楽しんでほしいですか。

原作と違うところで言うと、江南と島田のキャラクターがより立っていて、二人の掛け合いがたくさんあるので、そこは楽しみにしていただきたいです。島にいるメンバーの緊迫した空気と、本土にいる江南と島田のコミカルなやり取りとのギャップも見どころになると思います。

個人的には、江南と江南の住んでいるアパートの大家役の濱田マリさんとのシーンもとても面白いので、緊迫したシーンが続く中での箸休め的に楽しんでいただけたらと。いろんな見どころがあるので、最後まで飽きずに観ていただけるんじゃないかと思います。

――まだ原作を読んでいない方には、まずは読まずに観ていただきたいですよね。

そうですね。原作を読んでからでも楽しんでいただけるとは思いますけど、できれば僕が原作で味わったあの衝撃をドラマでも味わっていただけたらうれしいです。

初めて「ちゃんとお芝居ができた」

――奥さん自身は謎解きやミステリーは得意ですか。

めちゃめちゃ苦手です。原作を読んでいるときも、「これって時系列どうなってるんだっけ?」みたいに、戻って読み返したりしていました(苦笑)。

あと、空き時間に青木さんや、共演者の皆さんと謎解きゲームをやったこともあったのですが、皆さん、ポンポン答えていくのに、僕だけ全くわからず、置いてけぼりになっていました。
頭の回転が遅いのか、それとも頭が硬いのか……。でも、そんな僕でも原作は楽しく読めたので、どんな方にも楽しんでもらえると思います。

――漫画をよく読まれるそうですが、ミステリー系は読まないのですか。

いえ、ミステリー自体は好きなので、そういうジャンルの漫画も読みます。ただ漫画だと絵があるから、小説よりは情報が多いし、伏線もわかりやすいじゃないですか。だから漫画のほうが好きなんですけど、今回の『十角館の殺人』に関して言えば、小説だからこその衝撃度もあるから、何でも漫画のほうがいいというわけでもないです。

――本作を通して、俳優として今後の糧となりそうなことはありましたか。

一番の収穫は、今まで感覚的にやってきていた、お芝居の基本でもある「相手の芝居を受けてそれに反応する」ということを、言語化して理解できたことです。監督がそこを噛み砕いて、細やかに教えてくださいました。

これまでやれていなかったわけでないとは思うんですけど、何となくでやっていたところがあって(苦笑)。自分の中で腑に落ちたというか、落とし込めた感覚で、ようやくここで初めて「ちゃんとお芝居ができた」という気持ちになりました。

それは青木さんが僕に合わせていろんなパスを投げてくださるので、そのおかげも大きかったと思います。青木さんのお芝居に素直に反応していく中で、いろいろと試すこともできました。

例えば、顔を上げるという動作だったら、そのまま顔を上げるんじゃなくて、目線を上げてから顔を上げたほうが、映像で観るときにはよく見えるとか。そういう細かな技術的なことも教えていただけたので、それは今後の糧になると思っています。

奥さんがインタビューで、「僕がこれまで触れてきた全エンタメ作品の中で一番の衝撃でした」と語ったシーンがどのように実写で表現されているのか、原作を読んでいただいてる方はその目で確かめていただきたいですし、まだの方はその衝撃を受けてみてほしいです。

また事件の真相だけでなく、江南、島田を始め、そこに至るまでに繰り広げれられる登場人物たちのやり取りもしっかりと描かれているので、いろんな角度から楽しんでいただける作品になっています。

ちなみに、今回、少し長めのヘアスタイルで写真撮影に臨んでくださった奥さんですが、髪型のことを聞いてみると「次の作品のために伸ばしているんです」とのことでした。そちらのドラマ『君とゆきて咲く ~新選組青春録~』(テレビ朝日系、4月24日スタート)も楽しみです!

作品紹介

Huluオリジナル「十角館の殺人」
2024年3月22日(金)AM10時からHuluで一挙独占配信(全5話)

(Medery./瀧本 幸恵)

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