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和食の魅力を世界に発信!店主が夢を込めた「心ぬくもる日本料理」《福岡市中央区》

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ながおか

言葉に言霊が宿るように、料理にも料理人の魂が宿るもの。「日本料理 ながおか」の場合、それは「和食の素晴らしさを世界に発信したい」という店主・長岡周吾さんの情熱です。氏が慈しみを込めた約12品16500円のコースは、それだけの価値がある和食にはあると証明したパスポート。もちろん僕らにとっても、この美味を愉しむことは“日本に生まれた幸せ”を再確認する旅でもあるのです。

青年時代はバックパッカーとして何年も海外を放浪。その行く先々で和食に出会いますが、ほとんど天ぷらや寿司ばかりなのを残念に思った長岡さんは、「ならば自分が料理人になって和食の魅力を広めよう」と決意します。
帰国後は東京やオランダのホテルオークラなど様々な店で技を磨き、2010年「大人のごちそう 周」を薬院にオープン。野菜を主役に据えたコース料理は早々とファンを掴み、実は僕もその一人でした。「お久しぶりですね」と笑顔で出迎えた長岡さんの表情には、以前にも増して充実感が浮かんでいました。

2016年に移転し、西中洲に構えたこの素敵な店舗も意欲を支える一つでしょう。メインは広々としたカウンター席で、全体が洗練された舞台のような艶やかさです。

2部屋ある個室も雰囲気抜群(室料無料)。仕切りを外せば10名まで利用できる上質な空間です。

過去に海外で結んだ縁もあり、コロナ禍以前は外国人の客も多かったそう。そんな国内外の人々を魅了する「ながおか」のコースは、月替わりで振る舞われます。

3月のこの夜は、生カラスミとおこわで始まりました。口に運ぶや「あぁ、美味しい」。米に移した桜の香りがパッと広がり、カラフルな“日本の春”が鼻腔を吹き抜けます。それを包みこむ、塩分を抑えたカラスミの柔らかな食感も口福そのもの。和食ならではの優美さが鮮烈な1品目です。

お椀は千葉産ハマグリと菜の花のアオサ汁。これまたふくよかな香りと風味が舌に沁みます。千葉産だけでは出汁が甘くなるため、加布里産ハマグリを(出汁のためだけに)取り寄せ微調整するというこだわりに舌を巻きます。
お造りはヨコワマグロのトロ、タイの昆布締め、ウニの3点盛り。吟味し尽くした魚介のうまみは、食べ終えるのが惜しまれるほどでした

雛祭りをイメージし、桃の枝とぼんぼりを添えた八寸も旬の滋味が凝縮していました(写真は2人前)。ふきのとうとホタルイカの天ぷら、車海老のしゃぶしゃぶ、イイダコの桜煮、赤貝の酢の物、糸島・持田農園のトマト、えんどう豆のカステラという内容で、その味はどこまでも心を奪います。何より秀逸なのが、最高のポテンシャルを引き出した食材自体のうまさ。「火加減や蒸し加減一つで、食材は想像を超えた美味しさになります」と長岡さん。「そのための仕込みも試行錯誤の連続ですが、そこにたどり着けた時の喜びは何ものにも変え難いですね」。

続いては、信楽焼で供された胡麻豆腐と和牛ロースの吟醸煮。長岡さんの考案だという吟醸煮は、酒蔵からもらった酒粕と味噌で軽くロースをしゃぶしゃぶしたものです。これが煮物とは面白い発想ですが、うまさもかなりのもの。発酵食のふくよかな香りととろみが和牛を包み、うっとりするような贅沢感で味蕾を刺激します。

そして意外にも、クライマックスは締めの土鍋ご飯で訪れました。三潴郡大木町で作られる合鴨農法の無農薬米を、強火で炊きあげた銀シャリはふっくら艶やか。これほど甘く、凛とした米があるのかと夢中でかきこみました。一緒に出されたご飯のお供も、それだけで晩酌セットになる充実ぶりです。

すると長岡さんが「いまご飯をよそってくれたのが、この米を作った農家さんですよ」と驚きの一言。「前に『ウチの米はお客さんに喜ばれてるかな』と聞かれ、『では現場を見られます?』と答えたことから、週に2~3度手伝いにみえるようになったんです」。長年“作り手の顔が見える料理”を目指す長岡さんにとって、農家さんと客を引き合わせ、誰もが笑顔になるこの場面はまさに会心の一瞬でしょう。それはなんとも心ぬくもる光景でした。

そして食後に残るのは、和食ならではの穏やかで快い余韻。これを世界に伝えんとする長岡さんの夢は、もちろん今でも続いています。「この店から発信するのも良いけれど、いつかは各国で料理を作れたら」とにっこり。「だって、一度限りの人生ですから」。

《日本料理 ながおか》
福岡市中央区西中洲3-20 LANEラウンドビル1F
092-406-9181 完全予約制

※掲載しているメニューや価格は取材時のものです。訪問する際にはお店のSNSや電話等でご確認ください。

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