【名言集】技術が移ろう時代にこそ読みたい、エンジニアに贈る“テックな賢者”の金言たち
技術は日々進化し、使うツールも、働き方すらも移り変わっていく。変化の激しいテクノロジーの世界で働いていると、知識も手法もあっという間に古びてしまうような不安感に襲われることもあるだろう。
しかし、「よく考え、誠実に作る」という姿勢だけは、時代を越えてエンジニアの根幹にあり続けるものだ。そしてエンジニアという“人”の中にある迷いや情熱、そして信念には、普遍的なものがあるに違いない。
あらゆる物事の流れの速さに押し流されてしまわぬよう、これまで『エンジニアtype』が取材してきた業界の賢者たちの言葉から「時代を問わず胸に刻みたい金言」 を厳選して紹介しよう。
きっとそれは、キャリアに迷ったときの羅針盤となり、新しい技術に挑む勇気をくれる“生きた知恵”となるはずだ。経験と信念が凝縮された言葉の数々から、あなたの心を動かす一節を見つけてほしい。
目次
【未踏の父・竹内郁雄】(優れたエンジニアとは)いくらでもテクノロジーの浮気ができる人【LINEヤフー・川邊 健太郎】やらない理由を10個探すより、やれる理由、やりたい理由を10個挙げるような生き方をしてほしい【「Ruby」生みの親・まつもとゆきひろ】思い通りにならないことが失敗かどうかなんて、すぐには分からない【ひろゆき】「分かり合える」と信じることを諦める【ドクター・中松】資本主義ではなく、“知本主義”でいかないとね
【未踏の父・竹内郁雄】(優れたエンジニアとは)いくらでもテクノロジーの浮気ができる人
登大遊、落合陽一を生んだ、未踏の父・竹内郁雄に聞く「優れたエンジニア」に必要なことtype.jp
登大遊、落合陽一など数々のスーパークリエータを輩出してきた、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)の「未踏IT人材発掘・育成事業」。その立ち上げから携わってきた統括プロジェクトマネージャーの竹内郁雄さんに「優れたエンジニアとは?」という疑問をぶつけたときに出てきた言葉がこれだ。
編集部:優れたエンジニアには共通した何かがありますか?
竹内さん:千差万別、いろいろな人がいます。「こういうタイプの人に限る」とはなかなか言えないですよ。多種多様でなければ面白くないしね。
ただ、未踏を終えた後に成功している人には、共通する部分がある気がします。彼らはスキルのもう一段階上の、メタスキルを持っている。
スキルを素早く習得する能力というか、スキルを使いこなす能力というか。メタスキルがある人は、それまで使っていたのとは別の言語でも問題なくやれる。別の分野に移っても活躍できる。要するに、自分の持つ技術の活かしどころをいくらでも変えることができます。
竹内さん:(中略)メタスキルを持つ人とは、別の言い方をするなら、目移りしやすい人です。
隣の芝生が青く見えると、すぐにそっちへ行きたくなる人。今はWebのことをやっているけれども、仮想通貨が出てきたら「そっちも面白そうだな」というように。ふっと横道に逸れる。そうやって本業とは別に勉強ができる人のことです。いくらでもテクノロジーの浮気ができる人、とも言えます。
隣の芝生に移るというのは、簡単なようでいて、実は誰にでもできることではない。隣の芝生が綺麗に見えても、「実は酸っぱいんだ」と自分に言い聞かせて手を伸ばそうとしない、イソップ童話のキツネのような人もいる。良さそうに思えても「自分には関係がない」と自己規制してしまう。
いいエンジニアにはそういうところがない。無鉄砲に行けてしまう。そういう人が未踏には多いです。
「出る杭を伸ばせ」というスタンスを持つ未踏の父・竹内さん。記事では無鉄砲さが抑制されがちな社会の中で見出している希望についても語ってくれた。
【LINEヤフー・川邊 健太郎】やらない理由を10個探すより、やれる理由、やりたい理由を10個挙げるような生き方をしてほしい
LINEヤフー川邊代表「夢中になること”だけ”が価値になる」AI時代を生きる若手へ送る、後悔しないキャリアの築き方type.jp
「これからの社会は、人類にとって『未体験ゾーン』の始まり」
LINEヤフーの代表取締役会長・川邊 健太郎さんは、大きな変化に直面している社会をそう表現した。
「失われた30年」と言われながらもそれなりに安定し、「自分は人生で何を成し遂げたいのか」という問いを深く考えずとも生きていけたこれまでの日本から一変。不確実性が高まり、先を全く見通せない時代となった今を生きていく若手エンジニアに向け、川邊さんは次のようにエールを送る。
川邊さん:先が見通せず、決まったレールがなくなったことは、裏を返せば「何にでもなれる」ということ。ですから、やらない理由を10個探すより、やれる理由、やりたい理由を10個挙げるような生き方をしてほしいです。
「こうあるべき」という答えがないからこそ、まずは人生を主体的にデザインした上で、「この生き方を実現するには、どの仕事や会社を選択すべきか」を考える必要があります。
川邊さん:「早く成長したいから、自分を鍛えられる会社に入ってハードに働きたい」「自分の力で勝負したいから、就職せずに起業する」という考え方もあれば、「仕事はあくまで人生の一部でしかないので、自分は人間らしい働き方ができる会社を選ぶ」という人もいるでしょう。
どんなライフプランを描くにせよ、大事なのは自分の意思で納得感を持ってその道を選択することです。
AIの進化に伴って「仕事ができる人」という概念が揺らいでいく未来。川邊さんの言葉はエンジニアたちの背中を押してくれるだろう。
【「Ruby」生みの親・まつもとゆきひろ】思い通りにならないことが失敗かどうかなんて、すぐには分からない
Rubyの父、まつもとゆきひろもマネジメントで大失敗!?そこから学んだ“苦手をあえて克服しない”戦略type.jp
「他人の価値観に左右されやすい」「評価されないことや、失敗が怖い」
そんな不安感から、新たな一歩が踏み出せない。そんなときに思い出したいのが、この一言。「Ruby」の生みの親として知られるまつもとゆきひろさんの言葉だ。
この言葉の背景には、Ruby誕生時の実体験があった。
まつもとさん:Rubyを発表したのは1995年ですが、リリースから10年ほどは鳴かず飛ばず。今ほど知られた存在ではありませんでした。それでも開発を続けてこられたのは、人の気持ちと同じように、技術の人気もコントロールできないことが分かっていたからです。ですから、がっかりすることはあっても落ち込むことはありませんでした。成功も失敗も裏腹だという考えを持っていたのも大きかったかもしれません。
(中略)
要は、思い通りにならないことが失敗かどうかなんて、すぐには分からないものなんですよ。
まつもとさん:その時は「失敗したな」と思っても、長い目で見れば良い経験になっていることってありますよね。それに最初から成功すると考えるなんて、そもそも見積もりが甘過ぎます(笑)。たいていの失敗はあとからいくらでも挽回できますから、小さなつまずきを重く受け止め過ぎないことは大事だと思いますね。
「100年も経ったらあなたのどんな失敗だって覚えている人はいない」と笑うまつもとさんに、心がふっと軽くなる。行き詰ったときには、ぜひ全文一読してほしい。
【ひろゆき】「分かり合える」と信じることを諦める
【ひろゆき】人間関係のストレスで潰れる前にエンジニアが“諦めていい”3つのこと「他人ルールからさっさと降りて、自分ルールで生きればいい」type.jp
こちらも「他人からどう思われるか」を気にし過ぎてしまうときのお守りにしたい言葉。『2ちゃんねる(現5ちゃんねる)』の創設者であり、多方面で活躍するひろゆきさんは、「他人」との付き合い方について、こう持論を語ってくれた。
ひろゆきさん:自分と他人の考えや感覚が違うことに怒りを覚えたり、イライラしたりするのって、かなり病的なことだと思うんですよ。だって「全ての人は自分と同じ考えを持って当然」ってことを前提にした思考だから。でも、現実にはそんなことあり得ないじゃないですか。
(中略)
いい大人なのに「なぜオレの気持ちが分からないんだ!」とか「あんだけしてやったのに、感謝の言葉さえない!」と、腹を立てる人がいます。
そういう人には「どんだけ自分の理解力を過大評価しているんだよ」って思いますね。正確に把握できるわけないじゃないですか。赤の他人の気持ちなんですから。
ひろゆきさん:普通に考えたら、他人と同じ価値観や考えを共有するのって、すごく難しいことなんですよ。「分かり合える」と信じることを諦める。まずはそこから、人間関係は楽になるんじゃないですか?
なかなかここまで割り切れない、と思う人も多いだろう。それでも、人間関係のストレスで潰れてしまいそうなときにはこのマインドが自分自身を救ってくれるかもしれない。
【ドクター・中松】資本主義ではなく、“知本主義”でいかないとね
「発明はお金じゃない、愛だ」ドクター・中松 92歳、“アイデアが出過ぎて眠れない”衰えない発想力の源type.jp
最後に、90代を超えてなお活躍し続ける発明家、ドクター・中松さんの金言を紹介したい。
「発明の心というのは、孝行です。つまりはLove」だと語る中松さん。東京大学にいた頃にフロッピーディスクを発明し、IT産業の発展に貢献してきた中松さんから、未来を担うエンジニアに向けた愛あるメッセージで今回の記事を締めくくろう。
中松さん:ソフトウエアエンジニアがイノベーションを起こすには、幅広く勉強をする必要があります。極端にいえば、理科系だけじゃなく、法律などの文化系まで勉強する。これを私は“文ジニア”と言っています。「文化系のことにも通じたエンジニア」という意味です。皆さんにはぜひ“文ジニア”になっていただきたい。
そして資本主義ではなく、“知本主義”でいかないとね。元来エンジニアはお金儲けが下手くそだったり興味がなかったりしたはずなのに、最近はお金儲けをしようとする不埒な奴がいるよね。でも、重要なのはお金よりも知識です。
中松さん:知識を得るために本を読むのは結構ですけど、特に文化系の知識、つまりは人の心を知るのに、カチカチの理論だけでは不十分。ロジックや合理性を突き詰めるのは構わないけど、温かさや人に喜びを与えたいといった気持ちを忘れてはいけない。
やっぱりね、冷たいエンジニアじゃダメですよ。エンジニアは人との付き合いが下手くそな人が多いですけど、人間の社会に入っていかないと。パソコンやスマホばかり相手にしていても意味ないですから。体にも悪いしね。
誰かの言葉に励まされながら、また手を動かす。その繰り返しの中で、少しずつ、自分だけの答えが形を成していくのだろう。あなたにとってもふと読み返したくなるような言葉をお届けできていたら幸いだ。