職業訓練校って本当に役立つ? 3ヶ月でWEBスキルを学んだリアルな感想
職業訓練校──
就職を目指す求職者が、仕事に必要な知識や技術を無料で学べる公的な制度。ハローワークに行くとよく目にする「謎にお得っぽいアレ」である。
実は私、失業中にちゃっかり職業訓練校に通っていた。
正直、「本当に役に立つのか?」と半信半疑だったのだが……結果としては思った以上に有意義で、そして予想外に楽しかった。今回はそのリアルな体験をレポートしたい。
・職業訓練校に入校したきっかけ
以前の記事で触れた通り、私は失業保険を受給しながら完全なる「無職ライフ」を送っていた。
家から一歩も出ず、誰とも話さない日が続き、人間としての機能が限界まで低下。このままでは社会復帰できないと焦り、外に出る理由を探していたとき、ふと思い出したのが職業訓練校だった。
どうせなら新しいスキルを学びたい。そんな気持ちからWEBデザインのコースをチェックしたところ……どこも募集締切が当日であることに気付く。
こうしちゃいられねえ! と、慌ててハローワークに駆け込み、なんとか滑り込みで申し込みを済ませた。
数日後、無事に合格通知が届き、晴れて「訓練生」となった。
ちなみに、入校にかかった費用は教科書代のみ、だいたい1万円程度だ。失業中でカツカツの身には、ありがてえ!
・早稲田電子IT教育センター
今回お世話になった学校は「早稲田電子IT教育センター」。名前の響きからして頭が良くなりそうだ。
私が受講したのは「AI活用×Webサイトクリエータ科」の3ヶ月コース。
HTML、CSSのコーディング基礎から始まり、Photoshop、Illustratorの基本的な使い方、そして流行りのAIを活用したサイト制作まで、「3ヶ月で詰め込みすぎだろ」とツッコミたくなるような密度の濃さだ。
授業は1日6コマ(1コマ50分)、みっちり缶詰状態の学習である。学生時代を思い出すぜ。
また、この学校には企業実習付きのコースや、PHPやWordPressの基礎を学べるコースなど、ほかにも多様なカリキュラムがある。気になる方は「公式HP」を覗いてみるといいだろう。
・職業訓練校の人たち
入校初日、私は迷ったすえスーツで行った。しかし、教室に入って数秒で悟った。浮いている、と。周囲はTシャツやパーカーなど、超ラフな格好の人ばかりだった。
また、勝手ながら「訓練校にはクセの強い人が多いのでは?」などという失礼極まりない妄想すらしていたのだが、蓋を開けてみれば、そんなことは全くなかった。
クラスは15名程度。年齢は20代から40代が中心だが、中には定年後に「趣味と実益を兼ねて」という、人生の達人みたいな方もいた。みんな真面目だし、良い意味で「普通」の人たちである。偏見を持っている自分が一番ダメな人間だったのかもしれない。
そして、職業訓練校は「先生の質にムラがある」という噂を聞いていたので、そこも身構えていたのだが、結論から言うと、先生がめちゃくちゃ素晴らしかった。
デザイン初心者の私でもスッと理解できる説明。例え話はわかりやすく、質問にも丁寧に答えてくれる。忖度抜きに、人に教えることへのプロ意識を感じた。
・授業の内容
ここからは肝心の授業内容だ。
なお、あくまで私が通っていた当時のカリキュラムであり、現在とは変更されている可能性もある。その点だけはご了承いただきたい。
1ヶ月目はHTML、CSSの基礎の基礎から、IllustratorやPhotoshopの「イロハ」まで学ぶ。先生の教えもあって、何の抵抗もなくついていくことができた。
しかし、2ヶ月目から状況は一変する。HTML、CSSの実践に加え、JavaScriptやjQueryといった、呪文のようなコードが登場し始め、授業についていくのが修行めいてくる。「3ヶ月でスキルがつくのか……?」と不安がよぎり始めるのもこの頃だ。
ある程度知識が身についたところで、中間課題(個人制作)として、「自力でのサイト作成」が課される。そして中間課題が終わると、そのまま3ヶ月目へ突入。
休む間もなくグループ課題に入り、3〜4人のチームでひとつのサイトを制作することになる。ひとりでは気付かなかった視点やアイデアに触れられたのは、良い刺激だった。
終盤にはAI活用の授業があり、その後、これまでの学びをフルに活かして最終課題(個人制作)に挑み、フィニッシュとなる。
余談だが、私の最終課題は、せんべろが売りの架空の酒場「大衆酒場ろくでなし」というWEBサイトを作成した。完全に好みが出た。
そんなこんなであっという間に終わった3ヶ月間の学校生活は、想像以上に楽しかった。授業の時間は、失業中の焦燥感から解放してくれる癒しの時間でもあった。
修了の日には本当に寂しくて、帰り道で少し涙腺がゆるんだのはここだけの秘密だ。
・3ヶ月でデザイナーになれるのか
さて、気になる「3ヶ月でWEBデザイナーとして就職できるのか?」についてだが、結論から言うと、正直ハードルは高い。
個人的に学校の質は本当に良かったし、学べる内容も充実していた。ただ、クリエイター職は実務経験が重視される世界で、未経験からいきなり飛び込むには狭き門だ。
人気職ゆえライバルも多いし、AIの普及によってデザインの価値や仕事の形が変わりつつある現状も無視できない。3ヶ月の訓練だけでプロの現場へ、というのは正直難しいと言わざるを得ない。
とはいえ、「基礎固めの場」としては最高だった。「デザインってこういう考え方で成り立っているのか」と理解できたし、未知の分野に足を踏み入れるワクワクを久々に味わえたのは大きな収穫だ。
そして何より、デザイン職ではなかったものの、私はこの学校をきっかけに出会ったクリエイティブ会社に縁がつながり、現在はそこで楽しく働いている。この3ヶ月が人生のターニングポイントになったのは間違いない。
・まとめ:職業訓練校はいいぞ
職業訓練校は、「新しいスキルを身につけたい」「再就職に向けて力をつけたい」と考えている人にとって、ありがたい制度だと思う。
講座の質や環境はコースによって差があるものの、学ぶ意欲さえあれば、失業中という限られた時間を有意義に使える仕組みになっている。
気になるコースや学校があるなら、思い切って飛び込んでみてほしい。
参考リンク:早稲田電子IT教育センター
執筆:大島あさ未
Photo:RocketNews24.