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「スター・ウォーズ:ビジョンズ」参加、神山健治監督が語る初めての「スター・ウォーズ」

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好評配信中の「スター・ウォーズ:ビジョンズ」から「九人目のジェダイ」より/(C)2021 Disney and its related entities c Lucasfilm Ltd.All Rights Reserved.

現在ディズニープラスで配信中の「スター・ウォーズ:ビジョンズ」。7つのスタジオが贈る9つの物語。そのなかで「九人目のジェダイ」(Production I.G)を手がけた監督の神山健治さんが語る「マイファースト『スター・ウォーズ』」。

なお、現在発売中のニュータイプ11月号では、「スター・ウォーズ:ビジョンズ」のB2ポスターが付属! ポスターの裏には神山健治監督をはじめ、各作品の監督のインタビュー&コメントを掲載。より深く作品を知ることができるぞ!

――神山さんが「スター・ウォーズ」に触れたのは、いつ、どれくらいの年齢の時でしたか?

神山 僕が最初に「スター・ウォーズ」を観たのは、第1作目の「スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望」が日本で公開された時ですね。だから、1978年で、年齢は12歳か13歳、確か中学一年生だったと思います。日本は公開が本国から1年遅れたので、公開前から随分といろんな雑誌で取り上げられていて、すでに話題になっていましたね。僕らの世代は「これはすごいものがやって来た」とビビットな反応をしていたんですが、大人たちは「何だこれは?」みたいな冷めた感じだったと思います。

――では、封切り後すぐに劇場で観られたわけですね。

神山 公開されてすぐに映画館に観に行きました。映画自体もすでに当時は大好きだったので、ひとりで映画館にも行っていたんですが、『スター・ウォーズ』の公開中は毎週日曜になると映画館に通っていましたね。トータルで何回くらいいったのかな? 通ったのは3、4回とかだと思いますが、当時は映画館が入れ替え制では無かったので、1回行くと2回は観ていました。ただ、田舎は同時上映の映画があったので、あの時は『サスペリア2』が上映されていて。『サスペリア2』を観てから『スター・ウォーズ』に戻るのは、気持ちの切り替えが難しくて困ったのを覚えています(笑)。でも、それだけ『スター・ウォーズ』を観たくて。1ヶ月くらい上映していたので、やっている間中の週末は通っていた気がしますね。そこまで映画館に足を運んだのも初めてじゃないかな。

――どのような部分に、足しげく通わせてしまう魅力を感じたのでしょうか?

神山 字幕を読まずに、映像だけを追いかけていても面白かったんです。映像を観るだけで何か、凄いものを浴びているような感じというか。当時の字幕では、「フォース」という言葉が使われていなくて、「理力」と訳されていたんですよね。「それって、どういう意味なんだろう?」って思ったのをよく覚えています。いわゆる「超能力」ではないらしい。友達と話をしながら、英語では「フォース」と言っているよね……というような、細かい部分を確認しようと、友達と一緒に観に行ったりとかしてました。そのうち、自分だけで行くようになって、毎回観ながら、いろんなことを確認しようとしていた感じです。そうしている段階で、すでに将来は『スター・ウォーズ』を作る人になろうと思っていて、雑誌の記事の切り抜きをして資料を集めたりしていましたし、映画を作るスタッフの名前に興味を持ったのも、『スター・ウォーズ』が最初かもしれません。

――中学生くらいだと、どういう人が作っているのか興味を持つタイミングでもありますね。

神山 作り手側に興味を持つのも変な感じですよね。『スター・ウォーズ』の世界に引き込まれているのと同時に、冷静に「これを作る人にもなりたい」と思っている。そういう感覚は『ウルトラマン』の頃にもあって、幼稚園の時に「ウルトラマンになりたい」という気持ちと「ウルトラマンの中に入る人になりたい」という気持ちが同時にあるみたいな。多分、僕らの世代の男の子はみんなそうだったんじゃないかな。また、『スター・ウォーズ』は作品内で描かれる世界観にもすごく惹かれていたんだと思います。『スター・ウォーズ』の前には『宇宙戦艦ヤマト』が大ブームになっていたけど、世代的にそこまでハマれなかったんです。当時は小学校4年生とか5年生だったので、親と一緒じゃないと映画館に行けなかったので、作品を俯瞰で見ることができず、夢中にはならなかったんですが、『スター・ウォーズ』は世代的にもちょうどよくて、すごくインパクトがあったんだろうなと。

――その後、『帝国の逆襲』や『ジェダイの帰還』もリアルタイムで観られたわけですね。

神山 そうですね。どちらもすぐに観に行きましたね。その後、『機動戦士ガンダム』が放送されたということもあって、だんだんと日本にいて『スター・ウォーズ』を作るなら、アニメだなと思うようになりました。当時の僕は、『スター・ウォーズ』を作るためにハリウッドに行こうというような考えは持ってませんでしたし、もしかしたらハリウッドという言葉さえ知らなかったんじゃないかと思います。『スター・ウォーズ』を作る人になりたいけど、日本の特撮では太刀打ちできないと理解していた頃でもあるんですよね。特撮ファンには怒られてしまうかもしれないけど、『スター・ウォーズ』ブームを受けて作られたと思われる『宇宙からのメッセージ』なんかを観ると、日本人が宇宙船のコックピットで芝居するとダメだなと感じたりもしたわけです。あれが、多分僕らの世代の洋画コンプレックスの始まりでもあったと思うんですけどね。でも、『機動戦士ガンダム』を観た時に、アニメだったら受け入れられるかもしれないなって。アニメだったら、金髪のキャラクターや日本人じゃない名前のキャラクターが出て来てもおかしくならない。以前、何かのインタビューで監督の富野由悠季さんか、脚本家の星山博之さんのどちらかが「アニメは、日本人が作れる洋画なんだ」と仰っていて、まさに言い得て妙だなと思いましたね。それは、一方で我々の洋画コンプレックスをさらに正当化してしまった言葉でもあったんですが(笑)。そんな時代だったので、「『スター・ウォーズ』を作る」から、「『スター・ウォーズ』みたいなものを自分で作る」という気持ちに変化していった感じですね。

――つまりは、その思いがアニメ業界に入るきっかけ的な部分になっているわけですね。

神山 結果的には『機動戦士ガンダム』がアニメ業界に入るきっかけではあるんですが、「こういうものを作りたいんだ」という最初のインパクトは『スター・ウォーズ』からですね。

――そうした思いがある意味叶って、『スター・ウォーズ』作品として制作した『九人目のジェダイ』ですが、劇中でジェダイ騎士の戦いを描く上で苦労された部分はありますか?

神山 ジェダイのアクションに関しては、作画をする上で、やはりアニメーターには大変な思いをさせてしまったかもしれないです。その一方で楽しんでくれたとも思ってはいます。ライトセーバーのアクションシーンなどはアニメの華だったと思うので。特に近年のアニメでは、意外と剣を交えて戦うというシチュエーションは描かれてこなかった部分のような気がします。最近は、剣を使って戦うファンタジー系の作品も増えてきましたが、つい数年まではそうした作品はほとんど作られていなくて、どちらかと言うと現実の中にファンタジー要素が入ってくるのが主流で。それが、ここ2、3年はファンタジーブームみたいになりましたけど、そうした状況にあったせいか、チャンバラアクションは描いたことがない人が作画スタッフにも多くて、わりと時間はかかってましたね。チャンバラだけじゃなく、スピーダーバイクのアクションも素晴らしいものになっていますが結構大変だったんじゃないかな。メカも描いたことがないという人が多くなっているような気がします。

――確かに、いわゆる達人同士のチャンバラシーンは、アニメではあまり観た記憶がないですね。

神山 全ての『スター・ウォーズ』作品を並べても、ワンシーンであれだけチャンバラを長くやっているのは、珍しいみたいですね。ガチで、ライトセーバーの達人同士が戦うシーンは少なくて。達人同士でしっかりと戦うのは、『エピソード1/ファントム・メナス』のダース・モールとオビ=ワンたちの戦いくらいで。むしろ、劇中ではジェダイが銃撃を打ち返すような感じの方が多い印象ですよね。自分としては、もっと達人同士の殺陣を観たかったから、今回はそれをやろうという思いもありましたね。

――音楽に関してもジョン・ウィリアムズを意識したような楽曲を使用されていますね。

神山 今回の仕事をやるとなった時に、スタッフ周りで一番最初に声を掛けたのが、戸田信子さんだったんです。戸田さんとは『ULTRAMAN』から一緒にやらせていただいているんですが、仕事をするにあたっていろいろとお話をさせていただいたんですが、戸田さん自身が、どうやって音楽を勉強してきて、音楽に対してどんな考えを持っているのか? そういうことを一番長い時間話をした作曲家さんだったというのもありまして。戸田さんは、子供の頃からすごくサウンドトラックに慣れ親しんでいて、いつしか作曲家を目指していたそうなんです。その後、アメリカに留学されるんですが、留学が決まる前にアメリカに行かれた際、憧れのジョン・ウィリアムズのコンサートに行ける機会があって。コンサート後には、ファンの方たちが出待ちしてプレゼントを渡すのが決まりみたいになっているらしいのですが、戸田さんは急遽行くことになったからプレゼントを用意してなかった。そこで自分で書いたスコアにリボンを付けて渡したそうなんです。本人も「だいぶ無茶しました」と言っていましたけど。その後、帰国が迫ったタイミングで滞在していたホテルに連絡があって、「ジョン・ウィリアムズだけど、ちょっと面会したい」と連絡がきたらしいです。

――驚くような展開の話ですね。

神山 ですよね。それで半信半疑ながら、教えられたテルに行ったところ、ジョン・ウィリアムズが部屋で待っていてくれて、戸田さんが渡したスコアをその場で弾いてくれたと。すごい話ですよね。そんな話もご本人から聞いていたので、「戸田さん、実は『スター・ウォーズ』案件の仕事が決まったんだけど、音楽お願い出来ますか?」と最初に声をかけたんです。

――それが、ジョン・ウィリアムズをリスペクトした楽曲につながるわけですね。

神山 戸田さんは毎年ジョン・ウィリアムズの楽曲をご自身が主催されている楽団のコンサートで演奏されているほどのジョン・ウィリアムズマニアでもある。そうしたこだわりもあるので、今回作っていただいた楽曲はホール録音でもあるんですよね。

――場面転換のワイプも『スター・ウォーズ』のオリジナルを尊重したものになっていましたね。

神山 制作が押して、絵も全然間に合っていなくて、ワイプのタイミングをラフ原の段階で決めている余裕もない中、編集を担当してくれたのが植松淳一さんだったんです。植松さんは、僕の編集スタイルを確立する上で一緒に試行錯誤を重ねてきた恩人なのですが、久しぶりに仕事をして、ワイプ表現なんかも場合によっては諦めようかとしていた僕に「『スター・ウォーズ』なんだから、やらなくちゃダメだよ」と、定尺が出ない中でテストを繰り返してくれました。あのワイプは、植松さんが編集だったからできた部分でもあるんですよね。とりあえず充てておいて、後から再編集で調整するというやり方をしていて。そういう意味では、スタッフにも恵まれた作品ですね。

――今回のプロジェクト全体をやり遂げた感想をお聞かせください。

神山 ある種、改めて新人の時みたいに、脚本、設定、コンテをほぼ全部自分で考えてやるということができました。どうしてもプロジェクトが大きくなると、いろんな人にお願いしなくちゃいけない部分があったり、全部を自分でやっていくことは難しくなってくるんだけど、時間が少なかったからこそ、それをもう1回自分で全部面倒をみることができた。年齢と共にどの分野でもスピードは落ちていくんですが、今回は脚本を書くスピードも上がりました。普段の仕事では、今やっている作業の2工程先の作業を同時に考えながら手を動かしているんです。それを人に頼むと、頼まれた人が理解する頃には実作業に追いつかれてしまっている。だけど、自分でやると、2個前の作業を無駄なく仕込むことができた。今回、久しぶりに脚本、コンテを自分ひとりでやってみたことで、まだ自分のスキルの伸びしろがあるのが判ったのも良かったですね。最近の仕事のやり方に関しては、いかに自分で抱え込まず人にやってもらうかというのがテーマだったんですが、逆にひとりでやり切ることも、まだできるんだなと。あとは、何よりも『スター・ウォーズ』の仕事が楽しかった、それにつきますね。

【取材・文:石井誠】

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