3季連続準Vの琉球ゴールデンキングスが歩んだ激動のシーズン…節目迎えるも、来季も「らしさ」継承へ
創設10年目の節目となったBリーグの2025-26シーズン、琉球ゴールデンキングスは3シーズン連続の準優勝となった。3季ぶりの優勝にはあと一歩届かなかったものの、チャンピオンシップ(CS)ファイナル進出も5シーズン連続となり、歴史に残る結果を残したことは間違いない。 今季を総括するうえで、チャンピオンシップ(CS)に入る前に印象的な言葉を発した選手がいた。加入1年目だった佐土原遼である。 レギュラーシーズン最後のホーム戦となった4月26日の佐賀バルーナーズ戦後のコメントだ。 「タイトルを全て獲るという目標を持ってキングスに来ましたが、天皇杯はベスト8で終わり、EASLは3位でした。西地区優勝もできなかった。個人的には不甲斐ない結果になっていると思っています。でも、CSではそれらが伏線となって、優勝するための過程になると思っています」 この日、あまり「優勝」という言葉を発してこなかった桶谷大HCも「このチームなら優勝できると思っています」と言い切るほど、チーム状態は仕上がっていた。 ただ、佐土原のコメントにもあったように、この段階に辿り着くまでには、今季は例年にも増して浮き沈みの多いシーズンだった。
折り返し時点では「自分たちに強さはない」
前シーズンの主力を維持し、日本代表歴のある佐土原を補強したものの、ホームで迎えた開幕節で横浜ビー・コルセアーズに2連敗。佐土原はファイティングイーグルス名古屋時代、エースとしてボールを持つ時間が長かったため、ヴィック・ローとのポジション調整に時間を要した。 さらに、10月にはパワーフォワードのケヴェ・アルマが電撃退団し、12月にハンドラータイプのデイミアン・ドットソンが途中加入した。主力選手のタイプが変わり、連係を深めたいところだったが、東アジアスーパーリーグ(EASL)への参戦もあって練習日が限られ、チームの構築に苦しんだ。 前半戦の30試合終了時点での成績は18勝12敗。CS進出圏外で折り返した。 直後に迎えた集中開催の天皇杯全日本選手権ファイナルラウンドは、準々決勝でシーホース三河に85-92で敗退。ディフェンスが崩れ、ルーズボール争いでも劣勢に陥り、点差以上に内容は完敗だった。 桶谷HCも「今の自分たちに強さはない。どのチームにも負ける可能性がある。一つひとつの戦いの中で全てを受け入れていかないといけないと思っています」と危機感を口にしていた。
千葉Jに劇的勝利、ペイントアタックの意識向上
上昇気流に乗るためのターニングポイントとなった試合が2つある。 一つ目は、天皇杯後にオールスターブレイクを挟み、アウェーで迎えた1月25日の千葉ジェッツ戦だ。終盤の最大14点ビハインドから土壇場で追い付き、残り2秒でローがミドルシュートを決め切って劇的な逆転勝利を飾った。 ファイナルの前日会見に出席した岸本は、転機となった試合としてこの一戦を挙げ、こう振り返った。 「僕たちはそれまでの戦い方が不安定で、勝ち星が伸びない時期を過ごしていました。でも、オールスターブレイクを挟み、チームとしていい準備をして、いい結果がついてきた。自分たちが上向くポイントだったと思います」 「いい準備」を象徴したのがディフェンスの連係向上だ。誰がカバーに行くのか、パスを振られた後に誰がシュートチェックに行くのかなど、それぞれの共通認識が深まり、強固さが増した。それまでは過密日程で練習ができていなかっただけに、改善が顕著だった。 終盤戦で強みとなったペイントアタックへの徹底力が増したのも、この頃だ。点差が開けられても、安易に3ポイントシュートに頼りすぎることなく、岸本やロー、松脇圭志、ドットソンらが積極的にドライブで切り込むようになった。 仮にシュートが外れても、相手ディフェンスが崩れた状態のため、ジャック・クーリーとアレックス・カークがオフェンスリバウンドを取りやすい状況が生まれ、セカンドチャンスポイントにつながった。
EASL3位で「我慢」の成功体験得る
チーム状態が上向くなか、選手や桶谷HCがよく口にしていた「我慢」が結果につながる成功体験となったのが、マカオでアルバルク東京と対戦したEASLの3位決定戦だ。 この試合も第4クオーターの残り5分を切って6点ビハインドと、追う展開だった。じりじりと点差を詰め、残り約20秒で1点差。この土壇場で、A東京のセバスチャン・サイズがまさかのファンブルでフリーのゴール下シュートを外し、逆速攻を仕掛けた。 残り7.2秒。レイアップシュートに行った佐土原が1歩目で急停止して相手ブロックを交わし、冷静に得点を決め、勝利を呼び寄せた。 前日に宇都宮ブレックスと対戦した準決勝では、終盤に逆転負けを喫していたキングス。それを念頭に、桶谷HCは「強いチームは我慢をしながら最後に決め切る。準決勝と同じようなシチュエーションでしたが、最後まで切れることなく、やり切った結果がこの勝利につながったと思います」と手応えを口にしていた。 EASL終了後、レギュラーシーズンを13勝3敗という好成績で駆け抜けたキングス。強固なディフェンス、ペイントアタックへの高い意識、我慢強さという武器に磨きがかかり、9大会連続9回目のCS進出を決めた。 苦しんだ前半戦の反省を生かし、後半戦で一つひとつの課題を克服していったこの過程が、記事冒頭で触れた佐土原の「伏線」というコメントと、桶谷HCの深い自信につながったのだろう。
ファイナル後、岸本と桶谷HCは晴れやかな表情も
CSでは盤石の強さを発揮し、いずれもレギュラーシーズンで負け越していた三河と名古屋ダイヤモンドドルフィンズをスイープ(1敗もせずにシリーズを制すること)。特に、名古屋Dとのセミファイナルはホームの沖縄サントリーアリーナで行い、5シーズン連続のファイナル進出という偉業の喜びを地元ファンと共有したことは、特筆に値する。 ファイナルではレギュラーシーズン全体1位の長崎ヴェルカを相手に、第1戦を71-69で勝利。第2戦以降は、相手のスイッチと積極的なダブルチームを駆使したディフェンスに苦しみ、2連敗で優勝を逃した。 3シーズンぶりの優勝には手が届かなかったが、今季もリーグで最も長いシーズンを戦い、ファンに多くの興奮を届けたキングス。第3戦後、会見に臨んだ桶谷は「負けて虚しいな、悲しいなという気持ちです」とは言ったものの、表情には晴れやかさもあった。そして、こう語った。 「長崎が僕たちを上回ったことが全てだと思います。ここまで連れてきてくれた選手、スタッフ、キングスに関わる関係者の皆さんに感謝したい。あとはやっぱり、ファン、地域の皆さんが僕たちを支えてくれたから、ファイナルまでこられたと思っています」 岸本は「儚さと言いますか…。悔しさともまた違う変な気持ちです。長崎が自分たちより素晴らしいチームだったことが結果として出たので、それを受け入れて、これからの人生にしっかり生かしていきたいなと思います」とコメント。そのうえで、大一番に向かう過程の大切さに目を向けた。 「ここに向かうまでの時間は僕にとって財産ですし、本当に楽しくて、充実していました。自分を擁護するつもりはないですし、もちろんうまくいかないこともありましたけど、優勝に向かうための時間がすごく大事で、なんなら、自分はそこが一番好きな時間だったのかなと思っています」 苦しい経験も確かな前進も含め、その過程を楽しみ、充実した時間を過ごす。それはチームと同様に、ファンにとっても大きな財産となったはずだ。
岸本と桶谷HCが退団も…キングスらしさ継承へ
シーズン終了後には、衝撃のニュースが待っていた。14シーズンにわたってキングスを支えた岸本と、5シーズン連続ファイナル進出をけん引した桶谷HCの退団である。その他にもローやカーク、ドットソンら主力級の退団が発表されている。 来季からは、キングスの「永久欠番」の一人であるアンソニー・マクヘンリー氏がアシスタントコーチからアソシエイトヘッドコーチとなり、実質的に指揮を執ることになる。岸本を筆頭に中心選手の一部は移籍するものの、近年の隆盛期を支えるジャック・クーリーや小野寺祥太、松脇圭志らの残留は発表され、終盤戦で存在感を増した佐土原も契約を継続した。 ファイナルを終えた後、佐土原は「難しいシーズンでしたが、みんなが毎日チームのことを考えた結果、ケミストリーが生まれてここまで来ることができました。そのことを誇りに思っていますし、来シーズンにつなげていきたいと思います」と語っていた。 取材のミックスゾーンで小野寺が発した言葉も印象的だった。 「開幕戦の連敗から始まり、どうなることかと思いましたけど、こうやってファイナルまでこられたことはチームの自信につながります。最後に勝てなかったことは、何が足りなかったのかをしっかり考えてやっていきたいなと思っています」 岸本やローといった看板選手、そして桶谷HCの退団で、キングスが一つの節目を迎えることは間違いない。それでも、苦しさも歓喜も、ともに経験してきた残留組の選手たちが、来シーズン以降も全員で戦う姿勢や我慢強さといった「キングスらしさ」を継承していくはずだ。