「まずは寝たい、上の子との時間がほしい」産後の願いを特別空間で…道内初の新しい「産後ケア」
出産後の母親の不安に寄り添い、子育て経験豊富な助産師が、産後の体調管理や育児相談などの支援をする「産後ケア」。
母親を大変な日常から解放しようと、道内で初めて、ホテルでの産後ケアが行われています。
石松萌さん(34)。
日常の子育ては、まさに「戦い」です。
生後3か月の長男は、抱っこすると泣き止み、抱っこをやめると泣き始める、の繰り返し。
晩ご飯を作っていたはずなのに、なかなか進めることができません。
母親の萌さんは、抱っこしたまま片手で米を研ぎます。
今度は3歳の長女から「ママこっちやってよー」の声…。
「何をやってほしかった?」「お米研いできていいですか?」
声がけをしながらの作業です。
その後も2人の子どもの相手をしながら、なんとか長女の晩ご飯が完成しました。
しかし、それでも萌さんの仕事は終わりません。
長女のご飯の手伝いをしながら、長男を寝かしつけます。
夫は仕事を早めに切り上げ、夜は育児や家事をしているといいます。
寝かしつけても、長女が大きな音を出すと、長男が起きてしまいます。
「だから座れないんですよね、基本的には座る暇ないし、トイレ行く暇ないしみたいな」
ようやく、長男を寝かしつけて、やっとイスに座れました。
「めちゃくちゃかわいいけど、それとこれとは別ですよね…」
母親業は年中無休。
長男が生まれてからは、長女との関わり方で悩みも出てきました。
「あんまりしたくないんですけど、『待っていて』と言わなきゃいけないことが多くなっちゃって」
そんな萌さんの、今の願いは、ずばり「寝ること」。そして…
「やっぱり、長女との時間を持ちたいかな」
切実なこの願いを叶えてくれる場所がありました。## 産後ケアを特別な空間で…
それが、新たな取り組み、「産後ケアホテル」です。
2023年11月、札幌のホテルで「プレ産後ケアホテル」が開かれました。
お試しの「産後ケアホテル」となったこの日は、4組の家族が宿泊しました。
「産後ケアホテル」は、ホテルの一室で助産師が24時間赤ちゃんを預かってくれます。
そして育児の相談にものってくれます。
お母さんは自分の時間を楽しんだり、外出をしたりして自由に過ごすことができるのです。
久しぶりに赤ちゃんの育児から解放されたお母さんは、なんだかやわらかな表情に。
「久しぶりにゆっくりできて、なんか早く子どもに会いたくなりました」と笑います。
これは、道内では初めての取り組み。
Cocokara(ココカラ)の代表、高橋奈美さんです。
「非日常の空間で、ママがゆっくりできるような場所があってもいいなと思ったので、新しい形の産後ケアっていうところも含めて、私は『産後ケアホテル』をやりたかった」
こう話す奈美さんも、2歳の一人娘の子育てに追われる母親です。
出産直後、夫は自営業で出張も多く、自宅で娘と2人きり。
奈美さんの心と体は限界を迎えました。
抱っこをし続けても、朝までほとんど眠れない日々…。何も考えられなくなった日もあったのだといいます。
「もう無になっちゃったというか、このまま死んでも全然怖くないやって思っちゃった瞬間がありましたね」
奈美さんは、慣れない育児と睡眠不足が重なり、「産後うつ」に陥りました。
それは「まさか自分が」という感覚。
「今までメンタルでやられたことも全くなくて、全然産後ケアなんか関係ないだろうと思っていたんですけど、いざ始まってみると、想像以上にしんどかった」
そんなときにインターネットで知ったのが、「産後ケアホテル」でした。
でも、北海道で調べても、「産後ケアホテル」はありませんでした。
そのとき、自然と「ないなら作ろう!」と思ったのだそうです。
久しぶりの「静寂」長女のとびきりの笑顔
そして2024年1月30日、3回目のプレ産後ケアホテルが開かれました。
「はるちゃんだけのママとパパになるの楽しみだよね。ホテル行くんだよ。楽しみ?」
3歳の長女と3か月の長男がいる石松萌さんも念願の初参加です。
長男を助産師に預け、久しぶりに一人の時間…。
「誰の声も聞こえない、静かなことがないからすごく変な感じです」
仕事帰りの夫・慶康さん(35)と、保育園から帰ってきた長女も合流しました。
長女も久しぶりのパパとママの「独り占め」がとってもうれしそう!
「産後ケアホテル」は5月まで、月1回以上のペースで開催する予定です。
6か月以下の赤ちゃんを預かってくれるこの産後ケアホテルは、母親だけでなく、家族全員が利用できるといいます。
萌さん一家は翌日にホテルのビュッフェでの朝食も楽しんだということです。
さらに夜はゆっくり外食。
その次の日は、長女と萌さんの2人で映画や温泉を楽しんだようです。
萌さんは3年半ぶりの映画だったのだとか!
育児は、夫もするのが今の時代当たり前ですが、産後ケアホテルは、母親だけでなく、家族が利用できるのもいいですよね。
Cocokaraの高橋奈美代表は、母親の宿泊費を支援するため、クラウドファンディングを行って、2024年6月以降、本格開業を目指して活動を続けるといいます。
文:HBC報道部
編集:Sitakke編集部あい
※掲載の内容は「今日ドキッ!」放送時(2024年1月31日)の情報に基づきます。