省エネから考える住まいの話!次世代のおうち事情とは
長く快適に住み続けられるのが理想の住まい。光熱費高騰や環境負荷軽減の観点から、近年注目されているのが省エネ住宅です。今回はZEH(ゼッチ)基準のおうちにお住まいのMさん(八千代市)を訪問!実際の住み心地を教えてもらいました。(撮影/堀智昭)
ZEHとは、Net Zero Energy House(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)の略称です。省エネ性能に加えて太陽光パネルや蓄電池を搭載して「創エネ」も行い、消費するエネルギーよりも生み出すエネルギーが上回る設計の家のこと。その中でもより高性能なのがZEH+(ゼッチプラス)です。
温度差のない暮らしで家族みんな健康に
2年前にZEH+の注文住宅を建てたMさん一家。
その前は賃貸住宅で暮らしていて、そろそろ持ち家を…と検討し始めたころは注文住宅にこだわらず、マンションや中古物件なども視野に入れていたそうです。
「キャンプやスノーボードなどのアウトドアが趣味なので、車に荷物を載せ下ろしする時のことを考えるとマンションは大変だねってことで選択肢から外して。中古物件も、リフォームとその後のメンテナンスにかかる費用を考えたら、新築でもそんなに変わらないなとなって、新築戸建てに絞りました」と振り返るご主人。
「新築戸建てということで土地探しから始めるので、コスパを考えると大手のハウスメーカーよりも地元の工務店で建てる方がいいと思って、同じ八千代市内に本社のあるエステージさんにお願いすることになりました。エステージさんがZEHを標準仕様にしていたので、それでZEHについて勉強し始めました」
ご主人の家づくりに関する情報収集手段は、動画サイトのYouTube。
「ちょうど新型コロナの緊急事態宣言の時期で、家にいる時間が多かったので、めちゃくちゃ見ましたね(笑)。間取りも3Dで作れる無料ツールがあるので、自分で作ってみたりもしました」
最終的に、ZEHよりさらに高性能なZEH+で家を建てたMさんですが、その一番の決め手は?と尋ねると…
「一番はランニングコストが抑えられることですね。24時間エアコンつけっぱなしにしたかったんですよね。夏でも冬でも室温を22~24℃に保って暮らせたら快適だなって。
それで毎日の電気代を考えて、当時はまだ今ほど高くなかったんですが、これから上がると予測されていましたし、家の断熱性能と気密性能を高くしておくと冷暖房費を抑えられるということで。
本当はもう少し広い家にしたかったんです。リビングももう少し広いといいな、と思うんですが、これから30年40年暮らすトータルコストを考えて、そこに予算を充てるよりも壁の断熱性能を上げた方がいいと思ったので、ZEH+で建てました」
実際、Mさん宅の2023年の電気代は、真夏でもひと月約7000円、冬は同じく約2万円。
オール電化なので光熱費はこれだけ。24時間エアコン稼働でこの額は驚きです。
1階のリビング・ダイニング・キッチンと書斎、2階の主寝室、子ども部屋、洗面脱衣所までが大きな吹き抜けでつながっていますが、稼働しているエアコンは1台のみ。
それだけで家じゅうを快適な温度に保てていて、あっちが寒い、こっちは暑いというようなことがないそうです。
窓には高い断熱率を誇るトリプルガラスを採用し、隙間風のないはめ殺しタイプや、スリット型で極力面積を小さくして熱の流出入を抑えています。
外からの視線が気にならないサイズと位置に設置してあるので、カーテンも不要、シャッターも不要。
ベランダもありません。洗濯物は吹き抜けの2階の廊下に干しているそうです。
「吹き抜けの天井にシーリングファンが付いていて、24時間換気システムがしっかり働いているので、洗濯物は部屋干しで乾きます。お天気に左右されないのがいいですよね。家じゅうどこにいても快適で、室内温度が24時間365日一定なので、例えば冬の朝に『寒くて布団から出たくない~』とか、そういうのが一切ないですし、寝具やパジャマなども冬用・夏用に変える必要がない。家事の負担が減って、楽ですね」と奥さま。
ZEHのお家には結露もないそうですが、実際どうですか?と尋ねると、
「結露! そうそう、結露ないんですよ。以前の賃貸マンションは全部出窓だったんですが結露がひどくて、冬は毎朝起きたら全部の窓を拭いてました。カーテンもびちゃびちゃになるし、カーテンも服もすぐカビが来てダメになっちゃうし、体にも絶対良くないな~と思っていたんです。
でも、いま聞かれるまで結露のことすっかり忘れていました! この家に住み始めてから結露を気にしたことがなかったです。ここでも家事の負担が一つ減ってますね」と笑って話してくれました。
さらに奥さまに、間取りでこだわったところを聞きました。
「寝室にクローゼットを置きたくなかったんです。どちらかが寝ているときに、先に着替えをする方がバタバタするのが嫌で。なので、クローゼットを廊下に設置して、そこから脱衣所、お風呂という導線にしてもらいました。私がメイクをするスペースも廊下にあります。これも、廊下も室内も脱衣所も同じ温度だから可能な間取りでした」
それ以上に、メリットに感じていることが、
「家族みんなが健康に過ごせていることです。暑い寒いに悩まされないし、花粉の影響も受けないし、子どもが寝ている間に掛布団を蹴っ飛ばしても風邪を引かないし、常に換気されているから空気がきれい。デメリットは、わが家が居心地良すぎること。実家に帰省した時も、ホテルに泊まった時も『早くわが家に戻りたい』って思っちゃって」
省エネ性能を上げてることは、家族の健康を守ること。
Mさん一家の暮らしに、次世代の住まいの「本当の価値」を教わりました。
最後にご主人に、これから家づくりを考えている人にアドバイスをお願いしました。
「自分も、動画サイトがメインではありますがいろいろと勉強して家づくりを始めて、いま満足しているんですけれど、それでもZEH住宅のメリットとか、高断熱・高気密の住み心地の良さを伝えるのは難しいなって思います。
住んでみないと分からないことが多いんですよね。ただ光熱費が安くなるだけじゃないメリットがたくさんあるんですが、どうしても初期費用がかかるので、そこにとらわれてしまいがち。
30年、40年のトータルコストで考える発想の転換ができるかどうか。
そのために大切なことの一つが、工務店選びかなと思います。よくある失敗談で、最初に問い合わせした工務店やメーカーでそのまま建ててしまって後悔する人が多いって。うちは10社くらい比較して渡り歩いて決めたんですが、本当に納得できる家づくりができるかどうか、話を聞いてくれるか、より良い提案をしてくれるかどうかとか、よく考えて決めて、しっかり話し合って進めることができたら伝わるのかなと。
また、それを見極めるためには、こちらも知識を持ってないと、ということになるんですけど。私のように動画サイトから始めてみるのも気軽だし、意外と分かりやすいので、お薦めです」