岡山県が季節ごとの「クロダイ」食味調査を実施 一番美味しい時期は何月?
かつては人気の食用魚だったクロダイ。最近は人気が下がっていますが、その地位の復権が必要とされています。
岡山でクロダイの食味調査
筆者は岡山県生まれなのでしばしば瀬戸内海の魚のニュースをチェックしているのですが、先日ちょっとおもしろい記事を見つけました。それは「クロダイの食味調査」が行われたというもの。
岡山県の水産研究所が先日、人間の舌をもとにした味覚センサーで、地元で水揚げされるクロダイの美味しさを調査したそうです。毎月9匹のサンプルを採取して旨味や味の濃さを数値化し、それが時期によってどのように変化するかも合わせて調べたといいます。
岡山のクロダイが美味しいのはいつ?
2022年5月から翌年4月までの1年間の調査の結果、旨味が最も増えたのは1月、味の濃さが最大だったのが12月だったそうです。そして逆に旨味が一番低下したのは9月、味の濃さが最小だったのは4月という数値が出ています。
これは釣りをする人からすると非常に納得できる結果と言えます。一般的にクロダイは春の終わりから初夏にかけて生殖巣が発達し、夏場に繁殖活動を行います。多くの魚は繁殖期が近づくと生殖巣に栄養を取られて身の味が落ち、また産卵後は体力を使い切って痩せてしまいます。
9月はまさに産卵直後で食味が悪く、しばしば猫も食べない「ねこまたぎ」と呼ばれます。4月は抱卵しているので好む人もいますが、身の味としてはやはり美味しいとは言いかねます。それがはっきりと表れた結果であると言えるでしょう。
なぜ今「クロダイ」なのか
ところでこのニュースを見て「なんでクロダイの食味なんか調査するんだろう」と思った人はいるのではないでしょうか。というのも、クロダイは一般的にさほど食味評価が高くないからです。
外洋に生息するマダイと違い、内湾や河川に生息するクロダイは環境の影響を受けて臭いものが少なからずいます。また身質もマダイと比べるとやや水分が多く、とくに東日本では珍重されていません。
しかし、西日本ではクロダイも身近な食用魚としてそれなりに流通しており、とくに岡山県では昔からマダイよりもクロダイを好むという人も少なくありません。丸ごとご飯に炊き込んだ「ちぬ飯」は人気の料理です。
また、最近このクロダイによる「漁業被害」が問題になっています。広食性であるクロダイはノリ、カキ、アサリなどの重要養殖魚介類を好んで食べるのですが、最近温暖化の影響で生息数が増えていると言われており、それによる経済的な被害が無視できなくなっています。
今回の食味調査では、あまり美味しくないと思われがちなクロダイの「美味しい時期」を公表することで食材としての地位を向上させ、結果として漁業価値の増大、それによる漁獲量の増加をもたらし、最終的には漁業被害を低減させたい、という目的もあるようです。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>