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石破首相とトランプ大統領が関税措置を巡って会談

文化放送

6月17日の「おはよう寺ちゃん」(文化放送)では、火曜コメンテーターで上武大学教授の田中秀臣氏と番組パーソナリティーの寺島尚正アナウンサーが、石破茂首相とトランプ大統領の会談について意見を交わした。

幸運なことにまだ顕在化していないですけど、いつなるか分からないですよ?

石破茂首相は16日(日本時間17日午前)、カナダでトランプ米大統領と30分間会談した。トランプ政権が日本に課した関税措置を見直すよう求めた。

石破首相は会談のなかで米国への投資を拡大する方針などを伝え、日米双方が利益を得る関係が重要だと働きかけた。
石破首相はこれまで、閣僚級協議に大きな前進があればG7前に米国に立ち寄り、トランプ氏との直接交渉で合意することも検討していたが、訪米は見送りとなった。両国の立場には、依然として隔たりが残っているためとみられる。関税措置の見直しに向けた動き、この30分の会談のなかで、どの辺りまで進んだのか?
また、石破首相は、日本製鉄による米鉄鋼大手USスチール買収計画がトランプ政権に承認されたことを巡り、「投資によって日米のパートナーシップを強化するという意味で、象徴的な案件だ」と歓迎した。

(寺島アナ)「ただ、これは関税交渉とは直接関係ないんでしょうか?」

(田中氏)「そうですね。日本側としては対米直接投資のメリットをずっと訴え続けているはずなんです。一つの事例としてあげているかもしれませんが、これは今回のトランプ関税以前の話で、トランプさんとしてはアンチ・バイデン政権ですから。バイデン政権のときにUSスチールの買収計画にストップをかけていた、と。それを自分が新しい交渉のやり方で、アメリカに安全保障上、色んなものを担保しながら、“実は私が持っている!”とアピールしたうえで認める。これはアンチ・バイデンのカード、つまり反民主党の政策のカードとしかトランプ政権は考えていないでしょうね。それを日本側も知っていますから、これを交渉の席で協調することは無いと思います」

田中氏はトランプ関税が持っている二つのカードを解説。

(田中氏)「一つは相互関税。“相手の関税に対応して、こっちの関税を上げる”ってことなんですが、日本からすると“こっちは関税上げてないじゃないか”と。アメリカ側は“日本はアメリカに対して貿易赤字を発生させている。それに対して関税を上げているんだ”という話です。これは経済的な理由ですが、経済学的には極めて非合理的です。もう一つのカードは安全保障を理由にしたものですが、中国に関しては精密なテクノロジーの流出を恐れているわけです。それは相互関税とは別枠ですよね? トランプさんの安全保障を理由にしたカードは第一次政権のときは中国にしか切らなかったんですけど、今回は同盟国全般に切っているのが特殊なので。いかに相手側に引っ込ませるか? なかなか交渉は難しいと思います」

田中氏は、日本が安全保障を理由に交渉する際の最終手段があると指摘。

(田中氏)「日本側も安全保障を理由にしたカードを切るのであれば、経済学的にはまったくナンセンスですが、日本が持っている莫大なアメリカ国債を売却する姿勢をちらつかせる。これは交渉外の席で別の大臣が言ってもいいと思います。それによってトランプ政権は米国債の金利が上がることを非常に警戒していますが、それを含めて交渉になんらかの進展があるのかもしれないし、逆に逆鱗に触れて交渉が決裂する可能性も秘めています。これは最終手段みたいなものでしょうね。ただ中国側とアメリカ側の交渉、これの詳細はまったく分かっていませんが、中国側はチラつかせた可能性があると思います」

(寺島アナ)「中国が米国債をね」

トランプ政権、ほぼすべての貿易相手国や地域からの輸入品に一律10%の相互関税を発動。これとは別に、自動車に25%、鉄鋼・アルミニウムに50%の関税を上乗せ。相互関税には国ごとの上乗せ日本は14%あり、その発動期限が7月9日に迫っている。
ただ交渉約であるアメリカのベッセント財務長官が各国との貿易交渉のため、90日間の停止を決めた相互関税の期限について、さらに貿易相手国によっては延長する考えをチラつかせた。

(寺島アナ)「これまでに合意を得られたのはイギリスだけですから、今後はおそらくトランプ大統領としても成果は欲しいでしょうからね」

(田中氏)「関税収入という実弾を欲しいわけですよ。減税政策の財源にしたい、と。財源というと怒る人もいらっしゃると思いますが、現実の政治としてそういった発想ですよね。なおかつ利下げもしてもらいたいと思っているんですよ」

(寺島アナ)「トランプ大統領、FRBに言ってますもんね」

(田中氏)「関税収入は毎月のように計上されますから、それをトランプ政権の成果として世論向けに打ち出したい、そして利下げもやる、ということをやっているので急ぐ理由が見当たらないんです。ある意味、延長しても困らないし実施しても困らない、という発想なんじゃないですか? 日本も含めて、こういうことをやられると焦れてくると思うので。経済的な理由以外で対抗措置、EUなんかは相互関税を拒否するために対抗的な関税引き上げを考えるかもしれないですし、日本側は真剣に追い詰められてしまったら、米国債の話を切るかもしれないですよね。でもそれは、先進国間に分断をもたらすことです」

(寺島アナ)「向こうだっていい気はしないですからね」

(田中氏)「そういった意味で非常にまずい展開ですよね。トランプさんがやっている政策って外交も安全保障面も含めて、日本にとってはマイナスのことが多いので。少なくとも今の石破さんじゃダメだね。これだけ危機的状況に近いので。幸運なことにまだ顕在化していないですけど、いつなるか分からないですよ? 先行き不透明な状態を続けていったら、企業もビジネスの判断をしにくくなりますから。石破さんも経済政策を積極的にやるべきだと思います」

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