不登校の子に合う居場所探しはなぜ大変? 不登校の子のパパが救われた等身大の一冊
不登校や行き渋りに悩む保護者へ。出版ジャーナリストで、不登校の子どもがいる家庭の当事者でもある出版ジャーナリスト・飯田一史氏が、教育ジャーナリスト・おおたとしまさ氏の新刊を徹底解説。(全1回)
【画像を見る➡】新たな選択肢【学びの多様化学校】はフリースクールと何が違う?出版ジャーナリストの飯田一史さんは「不登校」の子どもがいる家庭の当事者。そんな飯田さんに、フリースクールを取り上げた新刊『フリースクールという選択』から得た選び方やフリースクールの実態など、親当事者ならではの目線で解説してもらいました。
飯田一史(いいだ いちし)
出版ジャーナリスト・ライター。中央大学法学部法律学科卒。グロービス経営大学院経営研究科経営専攻修了(MBA)。出版社にてカルチャー誌や小説の編集に携わったのち、独立。国内外の出版産業、読書、子どもの本、マンガ、ウェブカルチャー等について取材、調査、執筆している。
「学校に行かない」ときの選択肢はなにがある
自分の子どもが「学校に行きたくない」と言いだして行き渋るようになり、それでも学校に無理やり連れていってみたり、ご褒美で釣ってみたり、スクールカウンセラーや児童精神科に相談したり、なんだかんだと手を尽くしてもダメだ、となったときに親が思うのは「どうしよう?」だと思う。
「どうしよう?」というのはあまりにも漠然としているけれど、実際「このままずっと家にいるようになったらどうなっちゃうんだろう」など、漠然とした不安やとまどいが先に来る。
仮に学校に行かないとしても、具体的にどういう選択肢があるのか、何が自分の子どもにとってよさそうなのかをすぐにアタリを付けられる親はなかなかいないと思う。
写真:beauty_box/イメージマート
そこからあれこれ考えて、一定の要件を満たせば出席扱い制度の対象となるオンライン学習の『すらら』をやらせてみたり、行政がやっている教育支援センターや、民間のフリースクールを検討したりする。
でも、ピッタリくるものはそう簡単には見つからない。
「学校に行きたくない」「嫌だ」と言っている子どもに「学校っぽい何か」をあれこれ試したり、見学に行ったりするだけで一苦労。しかも、それで子どもに合わずに「これはダメか」「ここもか……」となってくると、さらに徒労感がつのってくる。
親としては、どの選択肢にどういう特徴(子どもによる向き不向き、メリット、デメリット、コストなど)があるのかをまとめた、宣伝臭のしないリアルなガイドが欲しいのだけれど、意外とそれを探すのも大変だ。
フリースクール選びの基準は? 4つのタイプを知る
しかし、フリースクールについてどのような基準や観点があるのかを取材をもとに整理したのが、教育ジャーナリスト・おおたとしまさ氏の新刊『フリースクールという選択』(講談社)だ。
『フリースクールという選択』(著:おおたとしまさ/講談社+α新書)
多くの人は、ひとまずは近場のフリースクールを検索し、検討するだろう。どれだけよさげな場所でも、通えなければ意味がない。しかし、近い場所があったとしても、お試しさせるだけでも一苦労だ。
本の冒頭には、フリースクールにいくつも行かせてみて、4校目で「合う」場所を見つけた親子の話が出てくる。そう、最初でピッタリ合うところと出会うのはむずかしい。
しかし、4校試すのも、なかなかしんどいわけである。2校目以降のお試しには子どもはうんざりしてくるし、期待値は地に落ち、子どものフリースクールに対する抵抗感は非常に強くなっていく。だからこそ、検討の優先順位のメドが付けられるだけでも、親としてはとってもありがたい。
また、おおた氏によると、フリースクールとひと口にいっても
1.個人商店的
2.大手チェーン店的
3.オンライン
4.独自の教育思想に基づくオルタナティブスクール
の4種類があると解説している。
教科の勉強をする時間を用意しているところもあれば、他の学びに力を入れているところもある。将来的にひとり立ちできるようにという考えで運営しているところもあれば、高校・大学進学のルートに乗れるように、というところもある。発達障害、学習障害の子を積極的に受けいれているところもあれば、そうでないところもある。
全国22校のフリースクールが紹介されており、フリースクールにもいろいろなタイプがいる。「こんな子には向いているけれど、こういう子は向いていない(またはご遠慮いただいている)」と、スクールの運営当事者から語られている。
写真:cake_and_steak/イメージマート
そもそも不登校、行きしぶり自体、その理由や背景がひとによって千差万別だし、子どもの状態や希望も違う。だから個々のフリースクールによって「合う/合わない」「向き/不向き」があるのだ。「4校目でやっと見つかった」になるのも当然と言えば当然なのだ。
とはいえ、実際には何ヵ所も連れまわすのは本当に大変だから、事前によく話して、スクール側の方針やカリキュラムと、親や子ども側の期待や願望にズレが少ない状態でお試しをして、入るのがベターだろう。
この本を読むと「フリースクールにもいろいろあるがゆえに、親が事前にイメージしているフリースクール像と、個別の事業者が提供している考え方にズレが起きやすい」と、前もって知っておける。
「学校」か「フリースクールか」の二者択一ではない
それから、この本で書かれている大事な情報としては、
・週に何日かは学校に行き、週に何日かはフリースクールに行くのは制度的にも問題ない・フリースクールに限らず、居場所(依存先)をいくつか掛け持ちするという発想も重要・いま不登校でなくても、どういう選択肢があるのか知っておくにこしたことはない
・不登校でなくても、求める教育があるからフリースクールを選ぶ、という選択肢もある
といったものがある。
親が、子どもが、日々過ごす場所として考えるときには(「かかる金額」や「送り迎えなどの負担」という親側の都合は置いておくとして)、
1.子ども自身のやる気、メンタル的にどうなのか2.勉強、学習の内容やレベル感、進め方が合っているか、望んだものに近いかどうか3.友だち、人間関係ができるかどうか
があると思う。
これらすべてが揃う、唯一のピッタリくる場所を見つけようとするのは難しい。とはいえ、分散させて補うほうが、もし合わなかったというときのダメージも少ないのかもしれない。
『フリースクールという選択』には、フリースクール側も試行錯誤をしながら運営していることや、大手でもなければ基本的には潤沢な資金・リソースがあるわけではない(大半のフリースクールは小規模)という正直なところも、インタビュー取材を通じて運営者の口から語られている。
だから保護者側もフリースクールを「お客さん」として利用するというより、相談し、協力しながら子どもを育てていく人がいる、仲間がいる場所としてとらえたほうがいい、という。
親だって学校の先生だって塾の講師だってフリースクールの運営者だって「何も問題ない」「絶対大丈夫」と思って子どもと接している人は少ない。みんな完璧ではないし、悩みや不安を抱えながらも、真剣に子どもと向き合っている。
その真剣さや考え方、教えたいことや接し方が人によって違うからこそ、合う場所を見つけるのがむずかしい。教育、子育てとはそういうものだと思う。
写真:takasu/イメージマート
私の友人や知り合いの不登校経験者には、中卒で家業の左官屋を継いだ人、イラストレーター、公認会計士兼現代詩人、大学講師などがいる。現実を見回せば、ひとり立ちして働いている人も、いくらでも見つかる。
ただそれでも、親にしても子にしても「自分の子どもも、なんとかなるだろう」「自分もなんとかなるだろう」と思えるようになるまでが大変なのである。
『フリースクールという選択』は、読んだらお悩みが万事解決してぴったりのフリースクールが見つかります、子どもがハッピーになります、というものではない。そういうウソくさいものを、多くの親も子どもも求めてはいない。
フリースクール側のいわば等身大の姿が見えることで、選ぶ際のヒントになるし、なにより、いろいろな考えや形でフリースクールを運営している人たちがいて、いろいろな親と子がいて、フリースクールを卒業した後、それぞれに人生を歩んでいるとわかることで、少し気がラクになる。そんな一冊なのである。
文/飯田一史
“フリースクール探し”で最初に読む本、登場! 『フリースクールという選択』(著:おおたとしまさ/講談社+α新書)