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住宅価格高騰と空家の増加という奇妙な状態をどう解釈するか

LIFULL

大都市を中心に住宅価格の高騰が続く日本。住宅市場でいま、何が起こっているのか

生活の必需品である住宅価格の高騰が止まらない。住宅価格は、住宅に対する家計の需要と供給の関係で決定される。しかし、住宅の需要と供給は住宅サービスに関する実需の側面だけではなく、不動産資産や金融資産も含めたポートフォリオ選択という側面もあるため、金融市場の影響を必ず受ける。つまり、住宅は株式や債券と同様、将来の価格上昇が見込める資産として、家計のみならず投資家の投資対象となる。このような「必需品」である住宅が「投機」の対象となって、家計の住宅取得が妨げられる可能性があることに大きな批判が寄せられる。

特に近年、外国人投資家が投資物件あるいはセカンドハウスとして物件を所有するケースも多く、それに伴って発生する住宅需要が、住宅価格高騰の一因だという指摘が行われることもある。しかし、資本移動もサプライチェーンもグローバル化し、激しい人口減少にさらされている日本では、ヒト・モノ・カネのいずれも海外からの流入を予定しなければ、経済、社会を保つことが難しいという現実を、まず認識しておく必要があるだろう。それでも「アフォーダビリティー」と呼ばれる、国民の住宅取得、賃貸に対する総体的なアクセス可能性を、深刻に捉えるべき時期に入ったと受け止めるべきではないか。

住宅価格高騰の要因とは

それでは今回の住宅価格高騰は、いわゆる「実需」に裏付けられたものなのだろうか、それとも住宅の資産性に注目した、「投機」のような需要によって引き起こされたのだろうか。

東京圏の住宅に関する、ヒトの流れに基づく実需の動きを見てみよう。大都市圏、特に東京圏に人口流入が継続的に起きていたことは、まぎれもない事実である。パンデミックによって、その流れは一時反転したが、パンデミックの終息とともに、大都市圏とその都心への人口流入は元に戻っている。つまり、現在大都市圏の都心部には大きな住宅に対する実需が発生している。さらに国際不動産投資の動きを見てみよう。JLL(ジョンズ・ラング・ラサール)のデータを見ると、2025年第1四半期のニューヨーク、ロンドンなどを含む世界の主要都市の中で不動産投資額が最も大きかったのは東京であった。

つまり、現在進行しているとされる住宅価格の高騰は、「不動産投資のグローバル化」と「世界的に進んでいる大都市(スーパースター都市)化」を背景としたものだろう。産業構造の転換に伴い必然的に大都市化が起きていること、人口減少が進む日本ではグローバルなヒト・モノ・カネの受け入れを進めざるを得ないこと、そもそも不動産投資から「投機的」なものを切り分けることが非常に難しいことなどを勘案すれば、アフォーダビリティー・クライシスへの対応として「バブル期」に行われた「投機的取引を抑制する」様々な強い介入は、いわゆる角を矯(た)めて牛を殺すことになりかねない。

遊休資源の増加と価格の高騰という奇妙な現象

住宅土地統計調査に基づいて作成

次に、日本で起きている「奇妙な現象」に注目しよう。東京圏において、空き家住宅が89.8 万戸、うち賃貸・売却用および二次的住宅を除く空き家が21.5 万戸も存在している。東京大都市圏の都心からの距離帯別に2018~2023年にかけて、どのような住宅が増加したかを住宅土地統計調査に基づいて作成した図で見てみよう。

都心から0~10 ㎞圏内では2 次的住宅、賃貸、売却用の空家、10~20 ㎞圏内では放置されたその他空家の増加率が際立って高い。30km以遠の距離帯でもその他空家が大きく増加している。

なぜ、大都市に旺盛な需要と遊休不動産が併存しているのか。0~10 ㎞圏内の2 次的住宅、賃貸、売却用空家の増加は、「グローバル投資も含めた東京への不動産投資」が原因になっている可能性が、高齢化が進む10~20 ㎞圏内では、相続の大量発生に伴う放置される空家の発生をもたらしている可能性が考えられる。日本では高齢者に過剰な不動産を保有させてしまう傾向があることが指摘されてきた。不動産で相続させた方が税制上有利な構造があること、また既存住宅市場が機能していないため、高齢者が子どもが巣立った広すぎる住宅を適正な価格で売却できないこと、強すぎる借家人保護が行われているため賃貸化もできないとして、亡くなるまで住宅を抱え込ませる構造として日本には存在する。その場合、住宅価格が上昇している地域でも、高齢者の死亡とともに遊休化した空家が大量に発生する。

大都市圏の機能を維持・向上させるため、住宅政策の再設計は不可避

このアフォーダビリティー・クライシスに対しては、現在様々な意見が交わされている。しかし、日本の生産性を維持し、国民の豊かな生活を維持するためには、大都市へのヒト・モノ・カネの流入を抑制することは避けるべきだろう。大都市化を前提としながら、国民や社会にとって深刻な事態を招来するであろう問題を絞って、「遊休資源が存在する中の価格高騰」といった明らかに非効率な状態を是正することに政策資源の投入を集中させるべきではないだろうか。

現在の空き家対策は、管理不全の「放置されている空き家」のみを対象としているが、フランスやカナダで実施されている「アンダーユースドタックス」のように、放置された空き家だけでなく投資家等が保有する住宅にも空き家税を課すことも一案だ。神戸市で検討されているタワマンの空き部屋課税も興味深い。住宅用地であれば固定資産税が6分の1 に軽減される特例措置の対象外とすることでも、住宅の供給は増えてくるだろう。

さらに「高齢者に死亡時点まで住宅を抱え込ませることが有利な環境」をつくり出している相続税制、中古住宅市場の機能不全、借地借家法による行き過ぎた借家人保護を改善することで、高齢者の住宅資産を市場に戻していくことも検討すべきだ。

東京圏をはじめとした大都市圏への人口流入は引き続き続いていく。日本全体では人口減少するが、大都市化を前提としてマッチングを含む住宅政策を考え、都市機能を持続可能なものにし、日本の成長のエンジンにしていくことが求められている。

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