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花粉症で子どもがマスクや薬を嫌がる、鼻をかめない…対策は?【小児科医回答】

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花粉症で子どもがマスクや薬を嫌がる、鼻をかめない…対策は?【小児科医回答】

監修:室伏佑香

東京女子医科大学八千代医療センター 神経小児科/名古屋市立大学大学院 医学研究科 生殖・遺伝医学講座 新生児・小児医学 博士課程

花粉症(アレルギー性鼻炎やアレルギー性結膜炎など)の原因とは? 子どもの花粉症が増えている!?

花粉症の原因は、スギやヒノキなどの植物の花粉(抗原)が体内に入ることで起きる抗原抗体反応です。花粉を体内に取り込むと、それを排除するために抗体(IgE抗体)がつくられます。その抗体が蓄積されると、花粉と反応することによって「ヒスタミン」などの化学伝達物質が産生され、アレルギー性鼻炎やアレルギー性結膜炎などを発症します。代表的な症状はくしゃみ、鼻水、鼻づまり、目のかゆみなどですが、頭痛や肌荒れ、熱っぽさ、のどの痛みといった症状もみられます。

近年、大人だけでなく子どもの花粉症も増えているといわれています。この原因として、花粉の飛散量の増加や食生活の変化、空気汚染の悪化などとの関連が指摘されていますが、明確にはなっていません。ハウスダストアレルギーなど、すでにほかのアレルギーがある子どもは、花粉症にもなりやすいということが分かっています。

子どもの花粉症(アレルギー性鼻炎やアレルギー性結膜炎など)、検査や治療にはどんな方法がある?

花粉症の症状は、風邪の症状との区別が難しいこともあります。診断は、問診(症状が始まった時期や持続期間、症状、ほかのアレルギー疾患の有無や家族歴の有無など)、血液検査・鼻汁検査(お子さんの負担を考えて行わない場合もあります)などを行い、総合的に判断されます。

花粉症の治療には、大きく分けて対症療法、根治療法があります。対症療法は、点眼薬や点鼻薬、内服薬のほか、抗IgE抗体治療薬の注射やレーザー治療(重症例のみ)などがあります。根治療法は、アレルゲン免疫療法(舌下免疫療法、皮下免疫療法)などがあります。どのような治療が受けられるのかは病院によっても異なりますので、耳鼻咽喉科や小児科などに問い合わせてみましょう。

花粉症(アレルギー性鼻炎やアレルギー性結膜炎など)と発達障害の関係は?

花粉症(アレルギー性鼻炎やアレルギー性結膜炎など)と発達障害には直接的な関係はありませんが、感覚過敏などの特性により症状が悪化したり、逆に花粉症の症状の影響から精神的に不安定になったりすることも考えられます。

・感覚過敏でマスクがつけられない、どうしても薬が飲めないなど
・花粉症の症状でイライラしやすいなど
・不器用さから鼻がうまくかめないなど

病院で治療を受けるだけではなく、花粉の飛散量が多い日にはできるだけ外出しない、帰宅前に衣服や髪についた花粉をよく払う、洗顔やうがいをする、掃除をこまめに行うなどの工夫で、花粉との接触を減らし、花粉症の症状を軽減できる可能性があります。

花粉症の薬を飲まない、マスクを嫌がる、かゆみでイライラ、鼻がかめない……発達障害や発達に特性のある子どもへの対処法【医師QA】

ここからは、小児科医の室伏佑香先生に、発達障害や発達に特性がある子どもの花粉症についての質問にお答えいただきます。

(質問)子どもにASD(自閉スペクトラム症)と花粉症があります。薬を処方してもらおうかと思ったのですが飲みたくないの一点張りです。服薬以外の対応方法はありますか?

(回答)内服薬以外のお薬には、鼻水や鼻づまりの症状を緩和してくれる点鼻薬(鼻に噴霧して使用します)や、眼のかゆみの症状を和らげてくれる点眼薬などがあります。ASD(自閉スペクトラム症)のお子さんは、感覚過敏があることも多く、薬物治療を嫌がる原因の一つともなりえます。

花粉症の治療に関わる感覚として、口腔内感覚(内服薬の味や風味、食感など)、嗅覚(薬のにおい)、鼻腔内の感覚(鼻腔内噴霧の刺激)、眼表面の感覚(点眼による刺激)、触覚(薬の投与のために介助者が体を押さえることによる刺激)などがあげられます。人それぞれに苦手な感覚が違いますので、お子さんが許容できるお薬を選べるとよいですね。

内服薬を選択する場合も、内服回数の工夫(1日1回の内服でよいものもあります)、剤型の工夫(粉薬や一般的な錠剤以外に、OD錠と言ってラムネのように口の中で速やかに溶けて服用できる錠剤などもあります)、味や食感の工夫(薬によって味や食感も違いますので数種類試してみるのもよいでしょう)などを、お子さんと相談しながら行い、できるだけ苦痛を減らしてあげたいですね。

(質問)子どもにASD(自閉スペクトラム症)があり、感覚過敏の特性からマスクを嫌がります。無理につけなくていいとは思いますが花粉の季節は顔全体がかゆそうでイライラしています。どのように対応したらよいでしょうか。

(回答)お子さんがマスクを嫌がってしまうというご相談はよくいただきます。花粉症の症状のせいでイライラしているのに、その上にマスクによる苦痛な感覚にさらされ、余計にイライラしてしまいますよね。かゆみを含めた花粉症の症状については、内服薬や点鼻薬、点眼薬による治療で軽減することもできます。お子さんにとって許容できる感覚、許容し難い感覚は異なりますので、お子さんと相談しながらより許容できる方法を選んでいくことができたらよいですね。

(質問)子どもに不器用さがあり、小1になってもうまく鼻がかめません。鼻がうまくかめるようになるコツや声掛けなどあれば教えてほしいです。

(回答)鼻をかむ動作、なかなかコツを掴めないということも少なくありません。大人が鼻をかむ動作を見せても、空気は目に見えないので分かりにくいですし、お子さんは鼻から空気を出すという動作自体を意識して行うことも難しいためです。

まずは、鼻から空気を出す練習として、ティッシュなどの目に見えるものを鼻息で吹く練習をしてみましょう。その時には口をしっかり閉じて行うということがポイントです。これができるようになったら、ティッシュを鼻に詰めて鼻息で飛ばす練習をしてみましょう。片方の鼻の穴に、軽くこより状にしたティッシュを詰めます。この時、ティッシュをちぎって小さな丸い塊にするのではなく、一枚のティッシュの端をこより状にしていただくことで、鼻の中にティッシュが入ってしまって取れなくなってしまうことを防ぎます。次にティッシュを詰めていない方の鼻の穴を指でふさぎます。しっかり口から息を吸い込んで、勢いよく鼻から息を出してティッシュを吹き飛ばす練習をします。

これらの練習は、お子さんと楽しくゲーム感覚で取り組める工夫ができるとよいですね。

(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。

ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。

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