江戸時代のプロデューサー、板元と北斎の関係にフォーカス!「北斎×プロデューサーズ 蔦屋重三郎から現代まで」が、5月25日まで『すみだ北斎美術館』で開催中
板元たちが北斎をどのようにプロデュースし、どのような作品を世に生み出したかをたどる展覧会「北斎×プロデューサーズ 蔦屋重三郎から現代まで」が、2025年5月25日(日)まで東京都墨田区の『すみだ北斎美術館』で開催されている。
北斎が売れたのは腕利き板元たちのおかげだった⁉
全3章にわたり、葛飾北斎を稀代の浮世絵師へと育てた板元たちと北斎との関係に迫る本展。
板元とは、今でいう出版社や小売りの本屋までを兼ねた存在。江戸時代の腕利きプロデューサーとして知られ、現在放送中の大河ドラマ『べらぼう』でも話題の蔦屋重三郎は、時代の求めるものを見抜く力で、大田南畝(おおたなんぽ/1749-1823)や山東京伝(さんとうきょうでん/1761-1816)といった一流の狂歌師や戯作者たちとともに話題となる本を出版。喜多川歌麿(1753-1806)や東洲斎写楽(とうしゅうさいしゃらく/生没年不詳)といった新たな浮世絵師たちの才能を発掘するなど、江戸文化の発展に寄与した。
序章と1章では、初代と2代の2人の蔦重が北斎へ与えた影響とその結果生み出された作品群などが紹介される。
広報担当の金本さんは、「本展では北斎と関わった板元たちがどのように北斎をプロデュースし、作品を世に送り出したかをたどった点で見応えがあります。北斎の才能を早くから見出していた蔦屋重三郎、『冨嶽三十六景』をヒットさせた西村屋与八、『北斎漫画』を出版した永楽屋東四郎などの江戸の板元たち、また現代の出版元が制作し、北斎からインスパイアされた現代アーティストの作品も紹介します」と見どころを語る。
「冨獄三十六景」や『北斎漫画』の仕掛け人とは
第2章では、北斎の画業をたどる上で重要な、または代表的な作品を手がけた蔦屋以外の板元たちが紹介される。「冨嶽三十六景」をはじめとする北斎の代表的な名所風景画のシリーズを出版した西村屋与八、江戸を代表する老舗板元として浮世絵の初期から菱川師宣(ひしかわもろのぶ/生年不明-1694)、喜多川歌麿、歌川広重(1797-1858)ら代表的な絵師の作品を出版した鶴屋喜右衛門、『北斎漫画』の誕生に貢献した名古屋を代表する板元永楽屋東四郎らが登場し、その軌跡を北斎の作品や資料によりたどっていく。
また第3章では、今も活躍する、江戸時代からの浮世絵版画の伝統的な技術を継承する出版元に注目。福田美蘭氏による「冨嶽三十六景 凱風快晴」などが展示される。今に息づく北斎の影響と伝統の浮世絵木版の手わざの世界を堪能したい。
浮世絵業界が浮き彫りになる⁉ 関連イベントも
4月5日(土)・26日(土)「スライドトーク」
4月5日(土)・26日(土)各日13時30分~14時、15時~15時30分の2回、本展担当学芸員による「スライドトーク」が『MARUGEN100』(講座堂)で開催。定員40名、無料(ただし観覧券か年間パスポートが必要)。13時30分より整理券配布。
4月12日(土)講演会「北斎と江戸文学―蔦屋重三郎の出版物を中心に」
4月12日(土)14時~15時30分、東京大学文学部教授・佐藤至子氏が登壇者する講演会「北斎と江戸文学―蔦屋重三郎の出版物を中心に」が『MARUGEN100』(講座堂)で開催。定員40名、無料(ただし観覧券か年間パスポートが必要)。13時30分より整理券配布。
5月6日(火・休)講演会「浮世絵と江戸の版元―北斎と蔦谷重三郎を中心に」
5月6日(火・休)14時~15時30分、『国立歴史民俗博物館』教授で『町田市立国際版画美術館』館長の大久保純一氏が登壇する講演会「浮世絵と江戸の版元―北斎と蔦谷重三郎を中心に」がMARUGEN100(講座堂)で開催。定員40名、無料(ただし観覧券か年間パスポートが必要)。13時30分より整理券配布。
開催概要
「北斎×プロデューサーズ 蔦屋重三郎から現代まで」
開催期間:2025年3月18日(火)~5月25日(日)
※前後期で一部展示替えを実施
《前期》3月18日(火)~4月20日(日)
《後期》4月22日(火)~5月25日(日)
開催時間:9:30~17:30(入館は~17:00)
休館日:月(ただし5月5日〈月・祝〉は開館)・5月7日(水)
会場:すみだ北斎美術館 3階企画展示室(東京都墨田区亀沢2-7-2)
アクセス:JR総武線両国駅から徒歩9分、地下鉄大江戸線両国駅から徒歩5分
観覧料:一般1000円、高校生・大学生・65歳以上700円、中学生300円、障がい者300円、小学生以下無料
【問い合わせ先】
すみだ北斎美術館 ☏03-6658-8936
公式HP https://hokusai-museum.jp/HokusaiProducers/
取材・文=前田真紀 画像提供=すみだ北斎美術館
前田真紀
ライター
『散歩の達人』『JR時刻表』ほか雑誌・Webで旅・グルメ・イベントなどさまざまなテーマで取材・執筆。10年以上住んだ栃木県那須塩原界隈のおいしいものや作家さんなどを紹介するブログ「那須・塩原いいとこ、みっけ」を運営。美術に興味があり、美術評論家で東京藝術大学教授・布施英利氏の「布施アカデミア」受講4年目に突入。