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【ミリオンヒッツ1996】安室奈美恵「Don’t wanna cry」ブラックミュージックへの挑戦

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1996年03月13日 安室奈美恵のシングル「Don't wanna cry」発売日

リレー連載【ミリオンヒッツ1996】vol.3
Don't wanna cry / 安室奈美恵
▶ 発売:1996年3月13日
▶ 売上枚数:139.0万枚

安室奈美恵、ブラックミュージックへの憧れ


ダンスパフォーマンスグループ、SUPER MONKEY'Sの一員として「恋のキュート・ビート / ミスターU.S.A.」でデビューした安室奈美恵。1995年には松浦勝人プロデュースによるユーロビートのカバー「TRY ME 〜私を信じて〜」が大ヒットを記録。続いて安室奈美恵単独名義としてのファーストシングル「太陽のSEASON」を発表。この時期に運命的に出会ったのが小室哲哉だった。

小室プロデュースの第1弾シングル「Body Feels EXIT」でサウンドは本格的なダンスミュージックへと進化。続く「Chase the Chance」では初のオリコン1位を獲得し、ミリオンセラーも記録。安室奈美恵の卓越したリズム感とダンスパフォーマンスは楽曲と完璧にマッチして、1990年代の音楽シーンを一気に駆け上がっていった。そんな絶頂へと向かう最中、1996年にリリースした5枚目のシングルが「Don't wanna cry」だった。

小室はプロデュースするアーティストと必ず対話を重ね、内面を探り楽曲へと反映させていく。次はどんな曲を歌いたいかと問われた安室は、ブラックミュージックへの憧憬を口にしたという。彼女は以前からTLCやジャネット・ジャクソンに憧れを持っていたのだから、R&Bやソウルへの挑戦は必然だった。グルーヴに身を委ね、のびやかに歌う安室の姿はそれまで以上に自然体で、自信に満ちていた。そして、何よりも心から楽しそうに歌う彼女の姿が印象的だった。

「Don't wanna cry」に込められたメッセージ


歌詞は小室と前田たかひろの共作。後年、前田は自身のブログでこう語っている。

「子供を持ったことでいじめ問題を身近に感じられるようになった。そして当時のフランス核実験への思いをこの曲の歌詞に託した。彼女の歌を聴く、彼女と同じ世代の人にこそ聴いてほしい。なんでもいいから感じてくれたら」


確かにこの曲の歌詞には、時代の不穏さを表す強い言葉が歌われている。ただ、こういった歌詞を、友達との関係や人間関係の問題に置き換えて聴いていた人も多いのではないだろうか。

 いろんな顔と心って
 世界じゅうに溢れてるね
 敵味方に分かれ
 殺し合いをしているね

そう、彼女の歌声は、いつも真っ直ぐに聴き手に言葉を届けてくれる。けっして押しつけることなく、自然に聴き手の心へと届いてゆく。音楽プロデューサーのNao'ymt(ナオワイエムティー)も、そういったことを語っていた。

「普通の人が言ったら陳腐になる言葉でも、安室さんが歌うと、すごくいい言葉として響くんです。レコーディング中に歌声を聴いて、そう思っていました。極端な話、安室さんに、頑張ってって言われるだけで明日も頑張ろうっていう力が沸いてくる」

otonano「Nao’ymt インタビュー クリエイターが語るJapanese R&B」より

安室が頑張ってと歌えば、それは魔法の言葉のように聴き手の心の奥へ届き、安心感とともにそっと背中を押してくれる。安室からのメッセージを胸にぎゅっと抱きしめるアムラーたちの感動シーンを、私自身もライブ会場で何度も目にしている。

この「Don't wanna cry」には「♪今日が終わるたび 胸をなで下ろすなんてやめよう」といったフレーズがある。こうしたメッセージが、時代を越えて今も心に響くのは、彼女の歌声に宿る強さと誠実さゆえなのではないだろうか。

安室奈美恵の挑戦と揺るがぬ姿勢


沖縄アクターズスクールへ通うため、子供が歩くにはあまりにも長い距離を歩いてレッスンに通ったという逸話を持つ安室。普段は人見知りでシャイな人が、ステージに立つと誰よりも凜々しく強く、カッコイイ女性になる。ダンサーを従えた瞬間に放たれる圧倒的な存在感は、2018年の引退まで他者の追随を許すことはなかった。

ユーロビートで弾け、ダンスミュージックでエネルギーを爆発させ、そして「Don't wanna cry」でブラックミュージックへと新しい世界へ踏み込んでゆく。コツコツと努力を重ねながら、ファンの期待を裏切らない安室奈美恵という役割を引き受けてきた人だった。挑戦を恐れぬ姿勢と、揺るがぬ芯の強さを常に持ち続けたアーティストだった。多くを語らず、背中で “魅せる” 安室奈美恵の真摯な姿勢が、共に時代を生きてきた女性たちにカッコ良さとして映り、励ましと支えになってくれる存在となったのだ。

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