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重量約2.4kgの“ハチロクサン”が出た! ニコンの超望遠レンズ「NIKKOR Z 800mm f/6.3 VR S」レビュー

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重量約2.4kgの“ハチロクサン”が出た! ニコンの超望遠レンズ「NIKKOR Z 800mm f/6.3 VR S」レビュー

ニコン「NIKKOR Z 800mm f/6.3 VR S」は、ニコンZシリーズ用の交換レンズ「NIKKOR Zレンズ」の超望遠レンズ。その焦点距離と開放絞り値のスペックから通称“ハチロクサン”と呼ばれる1本だ。2022年4月時点では「NIKKOR Zレンズ」の中で最も焦点距離が長く、野鳥や動物、スポーツなどで本格的な動体撮影を行う人から熱い視線を注がれている注目製品である。今回この注目レンズを試用する機会を得たので、画質や操作性などを詳しくレビューしたい。

2022年4月22日発売の超望遠レンズ「NIKKOR Z 800mm f/6.3 VR S」(カメラボディは「Z 9」)

PFレンズを採用することで、高い光学性能と小型・軽量化を両立

2018年8月にミラーレスカメラシステム「Zマウントシステム」が誕生して以降、ニコンは、描写力やスペックに特徴のある、魅力的な「NIKKOR Zレンズ」をいくつもリリースしている。開放F0.95の大口径を実現した「NIKKOR Z 58mm f/0.95 S Noct」や、端正な描写が好評の開放F1.2の標準レンズ「NIKKOR Z 50mm f/1.2 S」、焦点距離14mm対応の超広角ズームレンズながら小型・軽量な「NIKKOR Z 14-24mm f/2.8 S」などが代表的なものになるが、今回紹介する「NIKKOR Z 800mm f/6.3 VR S」も、そうしたレンズに負けないくらいの魅力を持つ1本となっている。

「NIKKOR Z 800mm f/6.3 VR S」の主な特徴
・焦点距離800mm/開放絞り値F6.3の、Zマウント用の超望遠レンズ
・「NIKKOR Zレンズ」の中でも特に高性能な「S-Line」に属するレンズ
・テレコンバーター「TC-1.4x」使用時は1120mm、「TC-2.0x」使用時は1600mmまで拡大可能
・PFレンズを採用することで大幅な小型・軽量化を実現
・サイズ:約140(最大径)×385(全長)mm
・重量:約2385g
・14群22枚のレンズ構成(EDレンズ3枚、SRレンズ1枚、PFレンズ1枚、ナノクリスタルコートあり)
・最短撮影距離(最大撮影倍率):5m(0.16倍)
・絞り羽根枚数:9枚(円形絞り)
・フォーカシングによる全長変化のないIF(インターナルフォーカス)方式
・STMを採用し、高速・高性能かつ静寂なAF駆動を実現
・フォーカスブリージングの抑制やスムーズな絞り制御など動画撮影に配慮した設計
・補正効果5.0段の手ブレ補正(VR)機構(シンクロVR適用時は5.5段)
・高い堅牢性と防塵・防滴性能、レンズ最前面にフッ素コート
・アタッチメントサイズ:46mm(組み込み式)
・価格.com最安価格788040円(税込、2022年4月30日時点)

最大の特徴は、焦点距離800mmの超望遠レンズながら、光学性能に妥協することなく大幅な小型・軽量化を実現したこと。そのサイズは約140(最大径)×385(全長)mmで、重量は約2385g。開放絞り値は異なるものの、一眼レフ用の「AF-S NIKKOR 800mm f/5.6E FL ED VR」と比べると、最大径は約20mm、全長は約76mm短い。重量は約2205gも軽く、焦点距離800mmというスペックを考慮すると、これまでにはないコンパクトなサイズ感に収まっている。

レンズの全長は約385mm。パッと見では焦点距離800mmの超望遠レンズとは思えないようなコンパクトな鏡筒だ。鏡筒先端には、「NIKKOR Z 400mm f/2.8 TC VR S」と同様、ニコンのコーポレートカラーをイメージしたイエローリングがデザインされている
重量は約2385gで、焦点距離800mmの超望遠レンズとしては軽い。常時手持ちは少々厳しいかもしれないが、三脚から一時的に離して手持ちで撮りたい場合などに、それほど負担なく対応できるのがいい。三脚座リングは360度回転式。三脚座の取り外しは可能だが、ユーザーが自ら取り外すことは推奨されておらず、取り外す場合はニコンサービス機関に問い合わせてほしいとのこと

ここまでコンパクトに設計できたのは、「NIKKOR Z レンズ」として初めてPF(Phase Fresnel:位相フレネル)レンズを採用したことが大きい。PFレンズとは、光の回折現象を利用して強力に色収差を補正するレンズのこと。一眼レフ用の「AF-S NIKKOR 300mm f/4E PF ED VR」や「AF-S NIKKOR 500mm f/5.6E PF ED VR」にも使われているものだ。一般的なカメラ用レンズと比べて効率的な色消しが可能で、光学系の全長を短縮し、鏡筒の小型・軽量化に貢献するレンズである。

ただし、PFレンズにはデメリットもある。それは、画面内外に強い光源がある場合に、光源を中心にリング状の色つきのフレア(PFフレア)が出やすいこと。本レンズでは、「AF-S NIKKOR 300mm f/4E PF ED VR」や「AF-S NIKKOR 500mm f/5.6E PF ED VR」と同様、発生したフレアは、純正ソフト「NX Studio」に搭載されている「PFフレアコントロール」機能で軽減することが可能となっている。

レンズ構成は14群22枚。PFレンズ1枚に加えて、軸上色収差を効果的に抑制するSRレンズ1枚、EDレンズ3枚を使用することで、一眼レフ用の「AF-S NIKKOR 800mm f/5.6E FL ED VR」に匹敵する高い光学性能を実現している。MTF曲線を見ると、絞り開放から空間周波数10本/mmの曲線は最大値の1にほぼ張り付いていて、30本/mmも四隅で0.9を超えており、性能の高さがうかがえるというもの。さらに、「ナノクリスタルコート」の採用と合わせて、PFレンズの形状や配置を最適化することでゴーストの低減も実現しているという。

「NIKKOR Z 800mm f/6.3 VR S」のMTF曲線。非常に高い光学性能を持っていることがわかる

操作性や使い勝手にもこだわっており、L-Fn2ボタンの周辺や、コントロールリング、フォーカスリングは、ローレット加工や小さな凹みの形状がそれぞれ異なっており、目視しなくても触るだけでそれとわかるようになっている。鏡筒の表面には、広範囲にわたって滑り止めのラバーコーティングを施した。付属の専用レンズフード「HB-104」も、ワンタッチで取り外せるようなロック機構に改良している。

リングやボタンの操作系の位置にあわせてローレット加工や凹みの形状を変えるという凝りよう。慣れてくると触っただけでどの機能がどこにあるのかがわかるようになる。表面のラバーも高品位で触り心地がよい
鏡筒左手側に、L-Fnボタン、フォーカスモード切り替えスイッチ、フォーカス制限切り替えスイッチを搭載。フォーカス制限は「FULL(∞~5m)」と「∞~10m」の2段階
鏡筒右手側には、メモリーリコール機能のフォーカス位置登録時に使用するメモリーセットボタンが備わっている
組み込み式のフィルターホルダーを採用。46mm径フィルターを装着することができる
三脚座リングの中央に、ヘアラインのベース板に「NIKKOR」のエンブレムとレンズ名を刻印した金属製の銘板を配置
ストラップを取り付けられる吊り金具が備わっており、付属のストラップ「LN-3」を装着して持ち運ぶことが可能
専用のレンズフード「HB-104」(付属品)を装着したイメージ
レンズフード「HB-104」は、取り外しノブをスライドすることで外れる新しいロック機構を採用。片手操作でも着脱可能だ
レンズキャップは専用でかぶせ式の「LC-K106」(付属品)。レンズフードを逆向きに装着した状態で取り付ける
「NIKKOR Z 400mm f/2.8 TC VR S」と同様に、レンズケース「CL-L3」も付属する

実写作例&レビュー

以下に掲載する作例は、「Z 9」に「NIKKOR Z 800mm f/6.3 VR S」を組み合わせてJPEG形式で撮影したもの(JPEG撮って出し)になる。すべての作例で、ヴィネットコントロール:標準、自動ゆがみ補正:する、回折補正:する、高感度ノイズ低減:標準、の設定にしている。

※サムネイル画像をクリックすると、撮影写真を長辺900ピクセルに縮小した画像が開きます。リサイズを行っていない撮影写真は、サムネイル画像下のテキストリンクをクリックすると開きます。なお、撮影写真は開くのに時間がかかる場合があります。

Z 7 II、NIKKOR Z 800mm f/6.3 VR S、F6.3、1/4000秒、ISO800、WB:オート1、ピクチャーコントロール:スタンダード、アクティブD-ライティング:しない、JPEG
撮影写真(8256×5504、12.2MB)
上に掲載した作例の等倍切り出し画像
Z 7 II、NIKKOR Z 800mm f/6.3 VR S、F6.3、1/4000秒、ISO800、WB:オート1、ピクチャーコントロール:スタンダード、アクティブD-ライティング:しない、JPEG
撮影写真(8256×5504、13.5MB)
上に掲載した作例の等倍切り出し画像
Z 7 II、NIKKOR Z 800mm f/6.3 VR S、F6.3、1/3200秒、ISO1000、WB:オート1、ピクチャーコントロール:スタンダード、アクティブD-ライティング:しない、JPEG
撮影写真(8256×5504、12.9MB)
上に掲載した作例の等倍切り出し画像
Z 7 II、NIKKOR Z 800mm f/6.3 VR S、F6.3、1/4000秒、ISO1000、WB:オート1、ピクチャーコントロール:スタンダード、アクティブD-ライティング:しない、JPEG
撮影写真(8256×5504、12.1MB)
上に掲載した作例の等倍切り出し画像
Z 7 II、NIKKOR Z 800mm f/6.3 VR S、F6.3、1/500秒、ISO500、WB:オート1、ピクチャーコントロール:スタンダード、アクティブD-ライティング:標準、JPEG
撮影写真(8256×5504、16.6MB)
上に掲載した作例の等倍切り出し画像
Z 7 II、NIKKOR Z 800mm f/6.3 VR S、F6.3、1/500秒、ISO400、WB:オート1、ピクチャーコントロール:スタンダード、アクティブD-ライティング:しない、JPEG
撮影写真(8256×5504、17.8MB)
上に掲載した作例の等倍切り出し画像
Z 7 II、NIKKOR Z 800mm f/6.3 VR S、F6.3、1/250秒、ISO64、WB:オート1、ピクチャーコントロール:スタンダード、アクティブD-ライティング:しない、JPEG
撮影写真(8256×5504、16.6MB)
上に掲載した作例の等倍切り出し画像
Z 7 II、NIKKOR Z 800mm f/6.3 VR S、F8、1/1600秒、ISO500、WB:オート1、ピクチャーコントロール:スタンダード、アクティブD-ライティング:オート、JPEG
撮影写真(8256×5504、19.2MB)
上に掲載した作例の等倍切り出し画像
Z 7 II、NIKKOR Z 800mm f/6.3 VR S、F8、1/2000秒、ISO500、WB:オート1、ピクチャーコントロール:スタンダード、アクティブD-ライティング:オート、JPEG
撮影写真(8256×5504、17.7MB)
上に掲載した作例の等倍切り出し画像

MTF曲線を見てもわかるように、「NIKKOR Z 800mm f/6.3 VR S」は、非常に高い光学性能を持つ超望遠レンズだ。そのため試用前から高画質に撮れることは予想できていたが、実際に使ってみて、その予想を上回る解像力の高さに驚かされた。

今回は、本レンズの解像力の高さをお伝えしたく、各作例の等倍切り出し画像を掲載している。それらを見ると、絞り開放から解像力は圧倒的で、画面全域で非常にシャープなことがわかるはずだ。状況によっては、絞り開放だと周辺光量落ちがわずかに気になる場合があったものの、画質面でそれ以外に気になる点は見当たらなかった。画面全体での均一性が高く、すぐれた光学性能に裏付けられた、驚きの高画質を実現している。

さらに、テレコンバーターを装着した状態で高解像に撮れるのも本レンズの魅力。以下に、2倍のテレコンバーター「Z TELECONVERTER TC-2.0x」と組み合わせて撮影した作例をいくつか掲載しよう。さすがにレンズ単体と比べるとシャープさは落ちるものの、これまでの常識からしたらテレコンバーターを使ったとは思えないほどの高いコントラストと解像感が得られている。焦点距離1600mmでもここまで高画質に撮れるのは、野鳥や動物の撮影をする人にとって魅力を感じるはずだ。

Z 7 II、NIKKOR Z 800mm f/6.3 VR S+TC-2.0x、1600mm、F13、1/800秒、ISO900、WB:オート1、ピクチャーコントロール:スタンダード、アクティブD-ライティング:しない、JPEG
撮影写真(8256×5504、23.5MB)
上に掲載した作例の等倍切り出し画像
Z 7 II、NIKKOR Z 800mm f/6.3 VR S+TC-2.0x、1600mm、F13、1/500秒、ISO900、WB:オート1、ピクチャーコントロール:スタンダード、アクティブD-ライティング:しない、JPEG
撮影写真(8256×5504、18.9B)
上に掲載した作例の等倍切り出し画像
Z 7 II、NIKKOR Z 800mm f/6.3 VR S+TC-2.0x、1600mm、F13、1/800秒、ISO1000、WB:オート1、ピクチャーコントロール:スタンダード、アクティブD-ライティング:しない、JPEG
撮影写真(8256×5504、24.9B)
上に掲載した作例の等倍切り出し画像
Z 7 II、NIKKOR Z 800mm f/6.3 VR S+TC-2.0x、1600mm、F13、1/400秒、ISO400、WB:オート1、ピクチャーコントロール:スタンダード、アクティブD-ライティング:しない、JPEG
撮影写真(5504×8256、21.3B)
上に掲載した作例の等倍切り出し画像

「NIKKOR Z 800mm f/6.3 VR S」は、焦点距離800mmの超望遠レンズとしては全長が短く(約385mm)、かつ軽量(約2385g)な鏡筒に仕上がっている。鏡筒の大きさは一眼レフ用の「AF-S NIKKOR 500mm f/4E FL ED VR」に近いが、比べると約705gも軽い。この軽さに加えて鏡筒の重量バランスにすぐれるがポイントで、レンズの重心がカメラボディ側に近いため、フロントヘビーになる感じがなく、ビデオ雲台を使うにしろ、手持ちで撮るにしろハンドリングがしやすい。カメラを振りながらの撮影もスムーズに行うことができた。

AFについては、駆動モーターがSTM(ステッピングモーター)なのを気にする人もいるかもしれないが、レスポンスは決して悪くない。「Z 9」との組み合わせでは、フォーカス動作が静かなうえ、十分なAF速度・精度、追従性を実現していることを確認できた。ピントが背景に抜けたり、被写体検出で迷いが出ることはあるものの、動体撮影でも、大きなストレスを感じることなく使えるはずだ。

最後に、PFフレアについても報告しておこう。今回、日中屋外で野鳥や飛行機を撮影した限りでは気になることはなく、一眼レフ用の「AF-S NIKKOR 300mm f/4E PF ED VR」などと比べるとフレアは発生しにくくなっているように感じた。ただ、さすがに、夜間の飛行機の着陸灯など強い点光源だとフレアが出る。この点については、ほかのPFレンズ採用モデルと同様、割り切って使用したいところだ。以下に、飛行機の着陸灯で発生したPFフレアを、「NX Studio」の「PFフレアコントロール」機能で軽減した例を掲載しておこう。

左が「NX Studio」の「PFフレアコントロール」を使ってPFフレアを軽減した画像で、右が撮影時の画像。「PFフレアコントロール」で処理することで、光源の周りに発生したリング状のフレアを軽減することができる

まとめ 本格的な超望遠レンズの常識を変える携帯性。コストパフォーマンスの高さも魅力

「NIKKOR Zレンズ」の中で最も焦点距離の長いレンズとして登場した「NIKKOR Z 800mm f/6.3 VR S」は、Zシリーズユーザーからの期待値の高いレンズだ。今回試用してみて、光学性能、携帯性、操作性のすべてがハイレベルで、期待に応える高性能を実現していると感じた。

なかでも特に伝えておきたいのが携帯性だ。これまでの感覚からすると焦点距離400~500mmくらいの超望遠レンズのサイズ感で、より軽量な鏡筒に仕上がっており、従来以上に快適な超望遠撮影が可能。これまでの超望遠レンズの常識を変える携帯性と言っても決して言いすぎではなく、特に、一眼レフ用の超望遠レンズを使用している人なら、このレンズのコンパクトさに魅力を感じるはずだ。

焦点距離が400mmを超える本格的な超望遠レンズは、特に野鳥や動物を撮影している人にとって「いつかは手に入れたい」と思う憧れの1本である。「NIKKOR Z 800mm f/6.3 VR S」もそうした憧れのレンズではあるが、価格は、価格.com最安価格(2022年4月26日時点)で788040円と、実売100万円オーバーの製品が多い中では比較的安い。高額製品ではあるが、本格的な超望遠レンズとしてのコストパフォーマンスはとても高い。

「NIKKOR Zレンズ」が登場して4年近くになるが、その間に、すばらしいレンズがいくつも登場している。本レンズも、それらの銘レンズと並んで、「NIKKOR Zレンズ」を代表する1本として人気を集めることだろう。

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