完全栄養食の卵に含まれるコリンが持つ働きとは!?【小児科医ママが教えたい 体・脳・心を育てる!子どもの食事】
記憶力と学習効果を高める卵黄
あまり知られていない「コリン」という栄養
82ページで、卵が完全栄養食だと紹介しました。卵に含まれる栄養素のなかで、とくに注目したいのがコリンです。コリンは人間の体を構成する細胞の一つひとつに含まれているリン脂質の重要な成分で、記憶と学習に深く関わっています。
*²⁹2020年にコリンについておよそ800の論文をまとめたシステマティック・レビューによると、コリンは、適切な神経と脳の発達に極めて重要な役割を果たす不可欠な神経認知栄養素であることのエビデンスが示されています。
コリンは大豆・大豆製品などにも含まれていますが、卵黄に含まれるコリンは大豆の約3倍。しかも、卵黄のコリンは脳内に吸収されやすいという特徴があります。
コリンを摂る3つのメリット
①正常な脳の発達のサポート
②アルコール暴露や感染症からの保護
③神経・認知機能と記憶力の向上
学習効果を高める
脳の神経伝達物質のひとつに、アセチルコリンという物質があります。アセチルコリンは学習記憶をかたちづくり、その記憶を定着させるほか、脳の感覚や興奮度をつかさどる役割も果たします。
このアセチルコリンは、食べた糖質やたんぱく質などから得られたアセチルCoAという物質とコリンからつくられます。つまり、コリンを摂ることは脳の神経伝達物質のアセチルコリンの生成を促し、学んだことをしっかり覚えて、集中力や注意力をアップさせることにつながるのです。
子どもの成長に久かせない栄養素に加え、学習効果アップにつながるコリンを含んだ卵。アレルギーがなければ、離乳食の時期から卵を摂取していきましょう。そしてじつは、妊娠中の母親がコリンを摂取することで生まれてくる赤ちゃんの脳の発達にもよい影響をおよぼすといわれているため、妊婦さんもぜひ。
卵のコレステロールは大丈夫?
高コレステロール食品である卵は、少し前まで食べるのを控えるべきだという風潮がありました。しかし近年、コレステロールを多く含む食べ物は血中コレステロール値に影響しないという報告が相次いだことから、卵を毎日食べることのメリットが見直されています。
*²⁹Emma Derbyshire Rima Obeid (2020) [Choline Neurological Development and Brain Function:A Systematic Review Focusing on the First 1000 Days』
【出典】『小児科医ママが教えたい 体・脳・心を育てる!子どもの食事』著:工藤紀子