アメリカでは、中絶の自由化で犯罪が激減?相関関係は認められるも、現在でも議論されている有力な仮説とは?【図解 犯罪心理学】
相関関係は認められるも議論の対象に
妊娠中絶はアメリカを始め、多くの国でその是非について議論がされています。そんな中で、ある仮説が論争となっています。
きっかけは、1990年代でした。アメリカでなんの前触れもなく、犯罪件数が減少していきました。論者たちは、その原因についてさまざまな説を出します。たとえば、警察官が増員されたこと、高齢者人口の増加、厳罰化、銃規制などです。しかし、どれも決め手とはなりませんでした。
そんな中、経済学者のレビットとドブナーがある仮説を出しました。それによれば、1960年代後半から1970年代に行われた「妊娠中絶の自由化」により、望まれずに生まれる子どもたちが減ったことが要因だというのです。
それまでのアメリカでは、中絶は事実上禁止されていました。そのため、生活力のない若い親から生まれ、十分な愛情と養育を受けられずに育った子どもが多かったため、彼らの中から非行や犯罪に走る人が出ていたと言うのです。
中絶が自由化されてからは、望まれない子どもたちは中絶されるので減り、結果として犯罪が減ったというのがその仮説です。
この仮説には、感情的な反発も多くあります。今後もより深い調査と議論が必要となっていくことでしょう。
出典:『眠れなくなるほど面白い 図解 犯罪心理学』