横浜北仲再開発の「ラストピース」。地上40階「ハーバーステージ横浜北仲」プロジェクトの全容と注意点
横浜北仲エリア再開発の集大成。「ハーバーステージ横浜北仲」とは
横浜市の観光地としての側面と官庁施設が集まる官庁街としての側面を合わせ持つ「馬車道エリア」の一角において、総戸数704戸に及ぶ分譲マンション、ならびに商業・オフィス用途を含む大型複合開発の建築工事が進められている。
この大規模再開発プロジェクトを推進しているのは、東急不動産株式会社、京浜急行電鉄株式会社および第一生命保険株式会社だ。同社らが2025年5月に報道発表した際の情報によると、街区名称を「ハーバーステージ横浜北仲(HARBOR STAGE YOKOHAMA KITANAKA)」とし、事業(北仲通北地区B-1地区新築工事)を本格的に進めていることを明らかにしている。
事業コンセプトは、「日常を輝かせる水辺のステージ」。建物の周囲にも人々の日常を輝かせるランドスケープを形成していくこととし、芝生広場や航跡波をモチーフとした弧を描く舗装パターン上、木立やベンチ・カウンターテーブルなどを設けられるほか、施設内にはシェア型農園も計画されている。総じて、新たな横浜の景観をつくり出すことを理念としている。
現時点で明らかにされている情報によると、約3,200m2の広場、商業ゾーンは建物1階から2階の低層部に約4,300m2の規模が、2階から6階には、基準階(標準的なフロア)面積が約2,446m2のオフィスが設けられる。
また、オフィスは、健康性や快適性の維持・増進を支援する建物としてCASBEEスマートウェルネルオフィス認証を取得する予定としている。CASBEEは、建築物や街区単位で環境性能を総合的に評価し格付けするシステムのことで、「Comprehensive Assessment System for Built Environment Efficiency」の略である。
このうち、スマートウェルネスオフィス認証は、健康性・快適性(空間・音・光・温熱など)や利便性、安全性などを評価し、国内では2019年度からスタートしている。すでにアメリカでは先行して取り組みが進められている。なお、近年では日本国内において認証を取得する建築物が増えており、2025年10月17日時点で約220の認証建築物がある。
再開発が行われている位置は、住所でいうと横浜市中区海岸通5丁目となる。都市再生特別措置法(2002制定)に基づき指定される特定都市再生緊急整備地域におけるプロジェクト位置としては「北仲通北地区B-1」となる。今回のプロジェクトエリアは、JR桜木町駅やみなとみらい線馬車道駅の両方に近接している位置にあり、運河を挟んで、みなとみらい21新港地区と中央地区が面しており、昼夜を通して横浜らしい港と緑、歴史的な建造物の調和が織りなす景観が広がっている。
馬車道駅・桜木町駅が利用可。都心へのアクセス性
プロジェクトエリアは、JR桜木町駅とみなとみらい線馬車道駅に近接し、馬車道駅までは徒歩約2分となる。みなとみらい線は、横浜駅から元町・中華街駅までを結ぶ路線として、2004年2月に開業している。
同路線は、東急東横線との相互直通運転が実施されており、さらに、東急東横線が東京メトロ副都心線とも相互直通運転を実施しているため、馬車道駅からは、渋谷駅のみならず埼玉県南部の和光市まで乗り換えなしで移動することが可能となっている。加えて、プロジェクトエリアからは徒歩約9分でJR京浜東北線・根岸線の桜木町駅の利用も可能であり、JR横浜駅へのアクセスの容易さに加えて東京都心へのアクセスにも優れている。
以下は主要駅までのアクセス時間を示す。
・渋谷駅:約45分(急行・通勤特急)
・横浜駅:約5分
・品川駅:約30〜40分(横浜駅乗り換え)
・新横浜駅(東海道新幹線):約20〜30分(横浜駅乗り換え)
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横浜の歴史と文化が息づく街。「馬車道(横浜北仲エリア)」の再開発史
この記事を読んでいる方の中でも、プロジェクトが進められている馬車道駅の周辺エリアには横浜観光として一度は訪れたことがあるのではないだろうか。こうした歴史ある街並みが形成されるに至った背景には横浜港が開港した江戸時代末まで遡る。そして、明治時代に入って以降、急速に発展を遂げ、大正、昭和初期を通じて現在の街並みがつくられていった。
当該プロジェクト周辺には、国の重要文化財でもある神奈川県立歴史博物館をはじめ、市の認定歴史建造物に指定されている建築物が点在している。特に大正から昭和初期にかけて建築された煉瓦調の重厚な建築物は、港とともに発展してきた横浜の成り立ちを伝える建造物群として、横浜らしさの構成要素の一つともいえる。その中心ともいえるエリアにおいて今回のプロジェクトが進められている。
こうした歴史的・文化的な特徴を持つエリアだが、今回、大規模な分譲マンションが供給されるエリアでは、平成時代の中期以降に積極的な都市再生プロジェクトが進められてきた経緯がある。例えば、横浜アイランドタワー(店舗、オフィス)は第二種市街地再開発事業により2003年に竣工している。このほか、シャレール海岸通(住宅、店舗、オフィス)やノートルダム横浜みなとみらい(結婚式場等)がある。
2002年7月に都市再生特別措置法に基づく都市再生緊急整備地域への指定を受け、2007年から「北仲通北土地区画整理事業」の実施(2015年3月組合解散)による都市再生プロジェクトの土台となる区画整序が行われた。さらに、2012年1月に特定都市再生緊急整備地域に指定されたことを受け、さらなる積極的な都市再生が進められ、近年では、2019年にアパホテル&リゾート〈横浜ベイタワー〉や、2020年に横浜北仲ノット(住宅、店舗、オフィス)、同様に2020年に横浜市庁舎が竣工している。
そして今回、新たな再開発として「ハーバーステージ横浜北仲」の事業が進められているとともに、当該エリアに隣接した街区では、賃貸住宅とホテルから構成される複合建築物の建築が進められている。なお、この横浜北仲エリアでは、この2つのプロジェクトをもって都市再生の取り組み(施設整備)が完了することになる見込みだ。
物件概要:地上40階、総戸数704戸「ブランズタワー横浜北仲」
計画されている建築物は、住宅棟、オフィスエリアおよび商業施設から構成される。このうち、住宅棟が40階建て総戸数704戸、オフィスエリアは2〜6階(基準階面積約2,446m2)、商業施設は1〜2階(約4,300m2規模の飲食店舗、サービス店舗)で構成される地下1階・地上40階建て、高さ約150mとなる。
建築物全体の概要は次のとおり。なお当該情報は、横浜市中高層建築物等の建築及び開発事業に係る住環境の保全等に関する条例に基づき現地に設置された看板情報によるもの。2025年10月17日時点
・棟 数:1棟
・敷地面積: 1万2,345.18m2
・建築面積: 7,447.93m2
・延べ面積:10万9,406.43m2
・規 模:地下1階・地上40階建て、高さ約150m
・構 造:鉄筋コンクリート造、一部鉄骨造
・住戸数 :704戸
・駐車場台数:477台
・着工予定年月日:2023年11月22日
・完了予定年月日:2027年6月30日
・建築主 :東急不動産株式会社、京浜急行電鉄株式会社、第一生命保険株式会社
・設計者 :熊谷組・東急設計コンサルタント設計共同企業体
・施行者 :株式会社熊谷組
分譲住宅部分となる「ブランズタワー横浜北仲」の概要は次のとおり。
注意点としては、建物は区分所有となるが、敷地の権利については、約75年の一般定期借地権(建物解体・明渡期間を含む)となる。よって、契約期間満了時には更地にして返還する必要がある。
・構造および規模:鉄筋コンクリート造一部鉄骨造 地上40階・地下1階
・総戸数 :704戸
・間取り :1LDK〜3LDK(予定)
・専有面積:40.37〜152.67m2
・バルコニー面積:5.16〜18.96m2
・駐車場:353台
・バイク置場:8台
・自転車置場:776台
・竣工時期:2027年11 月中旬予定
・引渡時期:2028年3月下旬予定
・売 主:東急不動産株式会社・京浜急行電鉄株式会社
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完成は2027年秋。事業スケジュールと入居(引き渡し)予定時期
事業スケジュールとして、分譲住宅部分については、特設サイトによると2027年11月中旬に竣工予定、引き渡し時期としては、2028年3月下旬を予定している。なお、商業やオフィスを含めた全体完成時期については、公式には2027年秋頃としていることから、住宅部分と同じく11月頃には完成を迎え、その後、オープンとなることが想定される。
プロジェクトまとめ:魅力は「保証された景観」、留意点は「定期借地権」
横浜北仲地区で進められている都市再生プロジェクトは、当該エリアではラスト街区となる。完成を見るにはもう少し時間を要するが、プロジェクトの特徴ともいえる総戸数704戸の分譲住宅や、低層部の商業・オフィスは横浜らしさの景観を構成できる外観を有しており、横浜観光に訪問する人の目にも止まることは間違いない。
加えて、街区2面が海(運河)に接しており、横浜港港湾計画上も将来にわたって海側の隣接地に超高層建築物が建築されることはない。居住フロアから見渡せる横浜港やみなとみらい21地区の景観は保証されており、そうした立地メリットは将来的な価値の維持にも貢献するだろう。また、馬車道駅や桜木町駅に近いということもあり、都内へのアクセスにも優れている点も居住地として安心できる。横浜というアイデンティティの根幹を成すエリアで、歴史や文化を肌で感じながら暮らす日常は馬車道エリアでのみ堪能できるといえそうだ。
一方で、分譲マンションの権利関係については注意が必要となる。土地権利に関しては約75年の一般定期借地権となる。とはいえ、個人的にはそれでもなお、横浜というシティブランドの中核を成すエリアでの居住することへのステータス性は高そうだ。
補足:隣接地では「コンラッド横浜」「(仮称)ラ・トゥール横浜」が建築工事中。エリア全体の価値向上へ
補足として、隣接地では、住友不動産らがホテル・賃貸住宅を建築している。横浜北仲では、今回取り上げた街区に隣接するエリアにおいて、(仮称)北仲通北地区A1・2地区プロジェクトが進められている。このプロジェクトは、住友不動産株式会社および株式会社大和地所が進めている。同社らが2024年4月に行った報道発表によると、施設名称を「コンラッド横浜」および「(仮称)ラ・トゥール横浜」としている。
地上40階地下2階で構成され、このうち1〜16階はヒルトンのラグジュアリーブランドである「コンラッド・ホテルズ&リゾーツ」が、18〜40階は、住友不動産の最上級賃貸レジデンスの「ラ・トゥール」が横浜初進出として224戸が予定されている。竣工は、2026年11月の予定だ。