希少な短角牛のぎっしり感。『中目黒グリル』のハンバーグランチはヘルシーで旨味たっぷり
目黒銀座商店街の中ほどに大きな看板を掲げる『中目黒グリル』。お店がオープンしたのは2009年と飲食店の入れ替わりの激しいこの地域ではなかなかの古株だ。看板メニューは希少な和牛、吊るし熟成短角牛の炭火焼きステーキ。 「和牛、短角牛の味を知ってほしい」という思いから、ランチには珍しい短角牛100%のハンバーグを手頃な値段で提供している。
岩手県久慈市で育った短角牛。ヘルシーで旨味たっぷり
広い間口を十分に生かした店は、気候のいいときは開け放たれていて一層足を踏み入れやすい雰囲気だ。2009年にオープンし2011年に現在の看板メニューである吊るし熟成短角牛がメニューに加わった。
「中目黒という立地で長く続いているのは短角牛との出合いのおかげかもしれません」と話すのは店長の戸田匡俊(とだまさとし)さん。
短角牛とは和牛の一種で、全国の肉用牛頭数に占めるシェアは0.5%以下とも言われる希少な牛肉だ。和牛と聞いて思い浮かべるのはサシが入った霜降り肉だが、短角牛は脂肪分が少ない高タンパクの赤身肉。しかも旨味のもととなるアミノ酸をたっぷり含んでいる。つまりヘルシーで旨味の多い和牛なのだ。
短角牛のふるさとは東北地方。『中目黒グリル』で使用している短角牛も岩手県久慈市の広々とした放牧地で、生産者がストレスを感じさせないように気遣いながら、ビタミンやミネラルが豊富な青草を食べて健やかに育っている。そしてその肉は、昔から行われている吊るし熟成という方法で熟成させる。肉が持つ酵素の力を最大限に引き出した熟成方法だ。
アツアツ鉄鍋で提供。赤身の牛肉で作る力強いハンバーグ
『中目黒グリル』のイチオシは炭火焼ステーキだが、ランチタイムには鉄鍋で焼くハンバーグが3種類ある。そのうち“がっつり黒”と名付けられたハンバーグが短角牛。同じハンバーグはアラカルトでも食べられるが、スープやサラダがついて1800円とランチタイムらしいリーズナブルさが魅力だ。
「ハンバーグというと肉汁がよく話題になりますですが、短角牛は脂身が少ないので肉汁が流れ出るというわけではありません。その代わり、肉の塊を感じられるハンバーグです。シンプルに肉本来のおいしさを楽しんでください」
熱せられた分厚い鉄鍋フライパンにのったハンバーグが運ばれてくると、テンションはおのずと上がる。しっかりとした厚みと大きさ。添えられたソースをかけるとジューッと音がしてさらに期待が高まる。
ハンバーグは挽き肉がギュッと詰まっている。口の中で肉がほどける様も力強くて食べごたえもばっちり。玉ねぎのソースは醤油と赤ワインを加えて炒め煮していて、玉ねぎの甘さと和風の味わいがしっかり感じられる。
ボリュームはしっかりしているが、脂が少ないせいか最後のひと口まで飽きず、赤身の肉らしい旨味が力強い。
本格的なコースやワインも提供。お得さが際立つランチのハンバーグは3種類
2009年ごろから営業している『中目黒グリル』だが、ランチメニューのメインをハンバーグに据えてからはまだ日が浅い。それまではパスタを中心に5種類ほど提供していたが、短角牛のおいしさを知ってほしいとハンバーグをメインに据えた。さすがに短角牛のハンバーグ1種類だけではと、ふんわり白(鶏肉)1500円、しっとり赤(豚肉)1600円と合わせて3種類のハンバーグを提供している。
飲食店での勤務経験が長い店長の戸田さんも、実は短角牛の存在を知ったのはこの店に勤めるようになってから。短角牛を育てる生産者の思いや短角牛のおいしさを広めたいと活動する担当者の熱意に心打たれたのだとか。
ハンバーグやステーキ以外に、好きなメニューはどれかと聞いても「メンチカツもローストビーフもおいしいですよ。サーロインの脂もさらっとしていてきれいな脂なんですよ」と出てくるのは短角牛を使ったメニューばかりだから、心底おすすめのようだ。
『中目黒グリル』は、オーナーがソムリエということもあってワインの種類も豊富。ワインリストを見ると、ボトルはなかなかの値段のものが並んでいる。一方グラスは1杯850円から。ランチタイムでも提供されているので、休日に訪れるならハンバーグと合わせて1杯という贅沢も悪くない。
本格的なコースメニューはもちろん、個室もあるので、家族の記念日やお祝いに訪れる店としても活用できそうだ。まずは短角牛のおいしさをハンバーグで知って、それからディナーを食べに行くのもいいかもしれない。
中目黒グリル(なかめぐろグリル)
住所:東京都目黒区上目黒2-37-12 コンフォート中目黒101/営業時間:12:00~15:00・17:00~23:30(土12:00~23:30 日祝~23:00)/定休日:無/アクセス:東急電鉄東横線・地下鉄日比谷線中目黒駅から徒歩6分
取材・撮影・文=野崎さおり
野崎さおり
ライター
2016 年よりライターとしての活動を開始し、複数のweb媒体で食べ物やお出かけネタを中心に執筆。おいしいものはもちろん、作る人とその背景に興味あり。都内をバスか徒歩で移動するのが好き。