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全豪テニス優勝の大坂なおみ、東京五輪の「顔」となる世界への発信力

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大坂なおみⒸゲッティイメージズ

4度目の四大大会制覇、東京五輪も「金」照準

女子テニスの大坂なおみ(23)=日清食品=が2月20日、メルボルンで行われた四大大会第1戦、全豪オープンのシングルス決勝でジェニファー・ブレイディ(25)=米国=を6―4、6―3で下し、2年ぶり2度目の頂点に立った。

四大大会制覇は2018年と2020年の全米オープンを合わせて4年連続4度目。現役選手ではウィリアムズ姉妹に次ぐ多さだ。「大坂時代」の到来を世界のテニス界に改めて印象づけた。

新型コロナウイルス禍で先行きが不透明な中、今やテニス界の枠を超えて世界を代表する女性アスリートに成長し、東京五輪の「顔」として期待される存在だ。

四大大会で球足の遅い赤土の全仏オープン(5月23日開幕)と芝のウィンブルドン選手権(6月28日開幕)はまだ優勝がなく、全制覇の偉業へ期待も高まってきた。人種差別反対や女性の社会進出に関する発言でも最近関心を集める大坂は、全豪オープンと同じハードコートで実施される東京五輪の金メダル獲得へも弾みをつけた形だ。

年間収入は女子アスリート史上最高40億円

全豪オープンの優勝賞金は275万豪ドル(約2億2800万円)。米経済誌フォーブス(電子版)の2020年版スポーツ選手長者番付によると、大坂は1年間の収入が3740万ドル(約40億4千万円)で、女性アスリート史上最高額になった。

従来は2015年のマリア・シャラポワ(ロシア)の2970万ドルが最高額。同誌によると2025年までの契約を結ぶナイキからの収入が1000万ドル(約10億5000万円)を超え、他にも日産自動車、資生堂、ヨネックス、シチズンなど計15社とスポンサー契約を結んでいる。

名実ともに「世界を代表するアスリート」に育ったと呼べるだろう。

試合直後のインタビューでは「経験が大切。いろいろな経験が少しずつ自分に自信を付けたと思う」と発言。次の目標を問われると「コンスタントにいい結果を出すこと。五輪もある。次のハードコート大会にも集中している。全仏、ウィンブルドンでもいい結果を残したい」と抱負を語った。

黒人差別に抗議、IOCにも再考迫る

ハイチ出身の父、日本人の母を持ち、3歳で移住した米国で始めたテニスだけでなく、夢を実現していくにつれてコート外にも活動の幅を広げた。

世界的に大きなうねりとなった黒人差別反対運動「ブラック・ライブズ・マター(BLM=黒人の命も大事だ)」を受け、昨年秋の四大大会、全米オープンでは黒人被害者名が入ったマスクの着用で注目を集めた。米国で後を絶たない白人による黒人差別の問題に関心を抱き、抗議行動への支持を呼び掛け、デモにも参加した。

「私はアスリートである前に黒人女性」と主張し、共感の声が広がった一連の動きは、五輪の競技会場や選手村での抗議活動を制限してきた国際オリンピック委員会(IOC)にも再考を迫るなど影響を与え始めている。

全米オープンでは被害者名が入った計7枚のマスクを着用。女子ツアーを統括するWTAの創立者、ビリー・ジーン・キングさんも大坂の行動を称賛し、ベトナム戦争への徴兵を拒否したボクシングの名王者、故ムハマド・アリさんらの名前を挙げ「手渡されたバトンを、なおみは心から喜んで受け取った」と述べた。

女性蔑視の森喜朗氏に「少し無知な発言」

大坂の最近の活動はコート外の社会にも目を向けている。子どもを中心とした女性のスポーツ参加を促進するためのプログラム「プレー・アカデミー」を設立し、長くスポーツを続けられる環境づくりを支援。姉と共同でデザインしたマスクをオンラインで販売し、コロナの影響を受けている子供を支援する国連児童基金(ユニセフ)の活動に利益を全額寄付した。

2021年1月には「若い女性アスリートに刺激を与える素晴らしい女性たちへの投資」として、サッカー米女子プロリーグNWSL覇者のカレッジの共同オーナーにも就任した。

試合や記者会見で感情をコントロールできず、泣いた姿はもうない。東京五輪・パラリンピック組織委員会の森喜朗前会長の女性蔑視発言には「少し無知な発言」と指摘し、橋本聖子新会長の誕生には「女性にとっての障壁が壊されるのはとてもいいこと」と歓迎した。「私たち(女性)は平等になることだけのために多くのことで闘ってきた。いまだにさまざまなことが平等ではない」と女性の思いを代弁した。

社会問題に関心を持ち、自ら積極的にメッセージを発信するようになったのは昨年からだ。コロナの影響でツアーが中断し、時間に余裕ができたことで改めて自分と向き合った。そんな中で人間的に大きく成長し、それがプレーの幅も広げている。

支えになったのは「チームなおみ」の絆だ。戦略家のベルギー人コーチのウィム・フィセッテ氏、トレーニング担当のベテラン中村豊氏、体をケアする茂木奈津子さんは強固な結束力を誇る。

コロナ下の厳しい環境で戦い抜いた大坂は試合後、コーチらスタッフに向けて「隔離された期間も含めて1カ月以上も一緒に乗り越えた家族のような存在。緊張していた私の話を聞いてくれてありがとう」と穏やかな表情で感謝の思いを口にした。

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記事:田村崇仁

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