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捨てられる悲しい野菜たち…実は〇〇で逆転人生を歩み出した!?

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 私たちの生活にも身近な「食品ロス」の問題。コンビニやスーパー、家庭といった消費者に近いところでの影響が大きいと思われがちですが、実は農作物などが出荷される前から始まっています。そんな生産段階で大量に発生する食品ロスの削減を目指し、千葉県で地元農家のおいしい規格外野菜の買い取りと販売を中心に活動する「チバベジ」。代表の鳥海孝範さんに、チバベジの取り組みについて、そして今起きている食品ロスの問題についてお話を伺いました。

「チバベジ」を運営する、一般社団法人 野菜がつくる未来のカタチの鳥海孝範さん(右)と、安藤共人さん(左)。

800kgの廃棄梨からスタートした、チバベジ。

 昨年9月、千葉県に大きな被害をもたらした台風15号。この台風の被害に遭った地元農家の支援をきっかけに立ち上がったのが「チバベジ」だ。台風被害の直後から活動を始め、現在も地元農家で出荷できなくなってしまった野菜の買い取り・販売をメインにしつつ、今年4月からはオンラインイベントをスタートするなど、さらに活動の幅を広げている。

 活動のきっかけは、鳥海さんが台風被害で出荷できなくなった梨を800kg買い取ったこと。SNSを通じて出会った梨農家では、猛烈な風で未完熟の実が木から落ちてしまい、約1トンもの梨が廃棄されようとしていた。

 「農家さんは『完熟前なので加工して食べてください』と言ってましたが、生で食べてもとってもおいしい梨だったんです。これはもったいないなと思って、その時はただ普通に買って帰って、知り合いづてで販売しました」と鳥海さんは振り返る。

チバベジの始まりとなった梨農園から、1年ぶりに鳥海さんのもとへ連絡が届き、今年も出荷できない梨を引き取った。

 このままでも充分おいしいのに、本当にこれが捨てられるべきなのか?――そんな疑問と同時に、「もったいない」という率直な気持ちが鳥海さんを動かしていた。そうして、このままでは廃棄されてしまうという梨を800kg購入。自身が千葉県佐倉市で経営するゲストハウス・おもてなしラボで販売すると次々に売れてゆき、2〜3日で完売になった。「お役に立てれば」と購入してくれた地元の人たちも、「おいしい」と喜んでくれた。

 この梨をきっかけに、その後も廃棄になってしまうトマトを買い取り、販売。こうして地元農家と関わり合ううちに、今の農業システムが抱える課題や、野菜の生産過程で発生している食品ロスの問題が見えてきた。このままでは千葉の、そして日本の農業が持たない。活動を続けながら、持続可能な農業の仕組みづくりの必要性を感じていた。

 そうして最初の活動から約1ヶ月後の昨年10月、早くも「一般社団法人 野菜がつくる未来のカタチ」を立ち上げ、チバベジとしての本格的な活動をスタート。継続的に千葉の農業を支えるべく、徐々に仲間を増やしながら、現在も精力的な活動を続けている。

相次ぐ災害や異常気象によって増える、規格外野菜。

 チバベジの活動を始めてから、ちょうど1年が経つ。昨年9月の台風から始まり、年明けからは新型コロナウイルスや度重なる異常気象の影響で、チバベジの活動はこの1年間休まることがなかった。特にここ1〜2ヶ月は、出荷できないという野菜の相談が、毎週のように来ているという。

 チバベジにレスキューの依頼が来る野菜には、大きく分けて3つの理由がある。

収穫した野菜のうち、買い取りの規格に満たず出荷できないもの

災害により、傷や虫食いの痕がついたり、完熟する前に木や枝から落ちてしまったもの(例:台風、水害など)

何らかの社会的な理由により、需要が大きく低下し出荷できなくなってしまったもの(例:新型コロナウイルスの影響による需要減少など)

 通常であれば「1」のように、収穫した中で規格に満たなかった野菜を買い取ることが活動のメインになる。しかしこの1年間は、次々にやって来る台風や梅雨の長雨と豪雨、夏は猛暑が続いたことによる雨不足、さらには新型コロナウイルスの影響で飲食店や学校給食など至るところでの大幅な需要減少……。本当にさまざまな要因によって、出荷できない野菜が大量に発生している。

救出できたのは、わずか全体の10分の1。もっと出口を増やしたい

 今年4月には、約300本の大根を買い取った。雨が続いた影響で畑が水没し、表面を虫に食べられ出荷ができなくなってしまった大根だ。大根自体は大きく立派で、皮を厚めに剥いてその表面だけ取り除けば、おいしく食べられる。1本1本が大きく育っていただけに、その運搬も重労働だった。苦労しながらおもてなしラボへ持ち帰ったものの、冬のイメージが強い大根の販売にも苦戦。持ち帰った300本はなんとか完売したが、実際はさらに多くの大根が廃棄されていたのだという。

「本当は、全部で3000〜4000本くらいあったらしいんです。ただ、僕たちが救出できたのは300本程度。僕らが販売するだけじゃなくて、出口がもっときちんとあれば全部ロスすることなくできたはずで。今でも、加工品にするとか、普段キッチンカーで販売しているスムージーの材料にしたりしてますが、そういう出口をどう作っていくかが今の課題です」

 野菜がスーパーに並ぶ以前に、生産者の元で廃棄されている野菜は大量にある。このときの大根は、自然災害によるイレギュラーなかたちで出た廃棄野菜ではあるものの、災害の多い日本では日常茶飯事の光景だろう。普段の生産の中でも、全体の約3割は形や大きさなどの面で規格に満たない野菜ができるのだそう。そしてその3割の野菜たちは、「規格に満たないから」「見た目が良くないから」といった理由で出荷できなくなってしまう。

「今出ている食品ロスの数字って、産地でロスされたものは入っていないはずなんです。国としても『流通に乗った食品に対してどれくらいロスしたか』というのは把握しやすいけど、流通前の廃棄を数値化するのは難しい。でも今は天災とかが増えて、産地での廃棄も増えているのが現状です」

 チバベジのSNSを見ていると、日々レスキューされた野菜が写真とともに紹介されている。そこに写る野菜たちは、どれも瑞々しく色鮮やか。そんな写真を眺めながら「こんなにおいしそうな野菜が捨てられてしまうの? しかもこんなに大量に?」と思わず驚いてしまう。そんなふうに私たちからは見えにくい、野菜が店頭に並ぶまでの過程においても、大量の食品ロスは起きているのだ。

ミニトマト200キロレスキュー!大手の企業加工用として作られたトマト。農場からの最終出荷後に次の作付けのためにどうしても出てしまう余剰ミニトマト。青いのは酸味を楽しんだり、ピクルスにするのもグッド!また追熟して赤くなるのを毎日眺めるのもこれまたオツです。千葉佐倉市の拠点で販売中! pic.twitter.com/aYTNc75iUQ

— チバベジ@(一社)野菜がつくる未来のカタチ (@chibavege831) July 3 2020


規格外の野菜は、おいしくて栄養もたっぷり!

 こうした廃棄の主な原因は、作った野菜が“規格外”になってしまうこと。野菜の流通は、長さや太さ、重さなどさまざまな項目において基準が定められ、それに沿う野菜が出荷される。こうした規格は主に形や見た目の基準が定められているだけで、野菜の持つ栄養価や味は変わらない。むしろ、規格外の野菜のほうがおいしいこともある。

「トマトは店頭に並ぶ瞬間に赤くなるように、農家さんは青いトマトを収穫するんです。それは、『トマトは赤いものだ』っていう僕たちの固定観念に応えるため。でもそれっておいしいわけがなくて。きちんと枝についたまま完熟したほうがしっかり栄養が入るので、甘くておいしいはずなんです。つまり僕たちは、本来のあるべき姿ではない野菜を食べておいしいと言ってる。でも違うんだよっていうことは、きちんと伝えていきたい」

 そう鳥海さんが語る通り、私たち消費者が抱える勝手なイメージによって、野菜の味や栄養を最大限に引き出せないまま食べていることもしばしば。食品のスムーズな流通を実現しているその裏側には、こんなデメリットもあるのだそう。

 だからこそ、チバベジは「見た目が良くなくてもおいしい」ということを実感してもらうため、まずは規格外の野菜を食べてもらうことが大事だと考えている。チバベジで買い取った野菜は、佐倉市の直売所を中心に、不定期で都内や横浜などのマルシェでも販売しているほか、数品目の規格外野菜を詰め合わせにした「ENNOU YASAI PACK」をオンラインで購入できる。

 野菜を購入した人には、その野菜が廃棄されようとしていた背景や、野菜をよりおいしく食べる知識なども一緒に伝えている。そのほかにも、ZoomやInstagramのライブ配信で実施される料理イベント「オンラインキッチン」では、健康や美容に良い野菜のレシピや、多くの人が食べずに捨ててしまうヘタや皮までおいしく調理する方法など、野菜に関するさまざまな情報や知識を発信している。

「ENNOU YASAI PACK」を購入すると、その野菜を使ったオリジナルレシピやオンラインコミュニティ「chibavege lab」への招待も一緒に送られてくる(参加は自由)。コミュニティに入ると農家さんや地元シェフ、料理家との交流会などに参加できるなど、野菜をさらに楽しめるコンテンツも魅力。

 こうした情報発信に力を入れているのは、個性豊かに育つ野菜本来の姿やおいしさを伝えたいという思いからだ。実際に、身近な野菜でも、実は知らないことがたくさんある。たとえば、ピーマンは完熟すると赤色になる。つまりスーパーに並ぶ緑色のピーマンは完熟する前のもので、赤色になったほうが糖度や栄養価も高いのだ。完熟すると保存期間が短くなるためスーパーには並びにくいが、緑色のピーマンがオレンジや赤色になっていても全く問題はないし、むしろさらにおいしく、体にも良かったりする。

 このように色が変わったピーマンは、スーパーでは見切り品として値引きされていることもある。「腐っているのかな?」「新鮮ではなさそう」というイメージだけで食べるのをためらってしまう人は多いかもしれない。しかし、正しい知識があれば、赤くなったピーマンも安心して購入できるし、家庭でも捨てることはないはず。そんなふうに無駄なく野菜を購入し、おいしく食べてもらうことで、農家やスーパー、そして消費者である私たちも含めてより良い循環が生まれていく。チバベジが教えてくれるのは「食品ロスをなくそう!」という大きな社会テーマよりも、これまで当たり前に食べていた野菜そのものや普段の食事をさらに楽しむための、もっと身近でハッピーなものだ。

農家を支えることは、地域の「食」を支えること。

 こうしたチバベジの1年間の取り組みを経て、規格に対する農家自身の意識も変わりつつあるのを鳥海さんは感じている。

 昨年の台風被害の直後、出荷できなくなってしまった野菜を買い取る際に「いくらで買わせてもらえますか?」と尋ねると、農家さんからは「こんなものは値段もつけられない」と返ってきた。「じゃあ売れたら売れた分だけ持ってきますね」と伝えて野菜を持ち帰り、おもてなしラボで販売すると、見事に完売。その後、実際に売れた分の金額を農家さんの元へ届けると、「こんなに売れたの?」とびっくりされた。

 傷がついていても、形がバラバラでも、おいしい野菜には価値がある。規格外では需要がないとされ出荷できなかった野菜も、「おいしい」と言ってくれる人がいる。そんな実感を得たことで、今では規格外の野菜でも買い取り価格を農家さんから提案してもらえるようになった。

 そして、野菜を育てるためにかけた手間は、規格外の野菜も同じ。形や見た目は良くないかもしれないが、味や栄養価は変わらない。だからこそ、鳥海さんはできるだけ相談された金額で買い取るようにしているという。その方針は、チバベジの活動を始めたときの「地域の農業を日常的に支えていく必要がある」という考えに基づいたものでもある。

「時間やお金をかけて作った野菜を大量に廃棄しなければならないということが、日常的に起きています。そうした中で地域の農家さんをきちんとサポートしていかないと、将来困るのは自分たち。できるだけ地元産のものを買うとか、そういう支えていく意識がないと農家さんもどんどん疲弊していってしまう。昨年の台風でも、それを機会に辞めてしまう農家さんもすごく多くて。作る人がいないと食べるものが減って、価格も上がる。消費者にとっても、それが一番直接的に影響を受けるところですから」

 生きていくうえでは、“食べる”という行為を避けては通れない。地域の農業を守ることは、私たちの生活にも直結することなのだ。

自然の流れに従い、無理なく生産する社会を。

中にはこんなユニークな大根も。個性豊かな野菜は、見ていても楽しい。

 そして、チバベジの野菜に触れてみると、収穫される野菜ひとつひとつの多様性に気づかされる。たとえ同じ人参であっても、形や大きさはバラバラ。さらに、採れる野菜の種類も時期によってさまざまであることを目にしたとき、スーパーに並ぶ野菜のきれいな姿かたち、そしてどんな野菜もいつでも購入できる充実した品揃えが、決して当たり前ではないということを実感する。

 当然、それらは生産者の努力があってこそ、成り立っているものなのだ。しかも、そうした生産にはさまざまなコストもかかる。そんな生産体制を間近で見てきた鳥海さんは、もっと自然な消費のあり方に立ち返る必要があるのでは、と感じているという。

「日本では一年中同じ野菜が食べられる。でもそれってすごく自然に反して野菜を作っているし、たぶん世界的に見ても日本くらい。やっぱりその季節に採れる野菜を食べることが、人間にとっても自然なはずで。でも便利さを求めるがゆえに、今のこういう農業の仕組みになっているんです。僕らはただ、それを本来の自然なかたちに戻したい。もしそういう未来が作れるのであれば、僕らの活動ってもう必要なくなるんですよね。そしてそれが、本来あるべき姿だと思います」

 便利になった一方で、季節に採れる野菜を旬の時期においしく食べる、そんな自然なことが今の仕組みの中では難しくなりつつあるのかもしれない。自然に従い、移ろいゆく季節の中で作られた野菜こそ、本当の豊かさをもたらしてくれる。これまで続けてきたチバベジの活動は、そうした本来の野菜のあり方、楽しみ方を多くの人へ広めるためのものでもある。

もっと自由なおいしさを味わおう。

 私たちが生きていくために必要な「食」。それは毎日の暮らしを彩る、とても豊かで幸せなもの。だからこそ、さまざまな「規格」や染み付いたイメージにとらわれるよりも、もっと自由に、自然が生み出すありのままを味わってみてほしい。野菜が持つ本来のおいしさを知ることこそ、日本の農業を変えるきっかけになるはずだ。

Miho Aizaki

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