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ヒグマだけじゃない!森の「危険な生きもの」と対策を、毎日森を歩く公園スタッフが解説

Sitakke

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連載「森に行こう!」では、札幌市南区にある滝野すずらん丘陵公園の「滝野の森」を毎日歩き回っている筆者が、普段森に行かない人たちに向けて森を楽しむためのポイントをお伝えしています。

札幌市内には散策路が整備された森や公園が実はたくさんあり、様々な木や花がありいろんな生きものたちに出会うこともできます。また、1時間ほどで山頂まで行ける山も多く、自然を身近に感じられる素晴らしい街だと思っています。

ただ、実際に森に行くとなると色々心配なこともありますよね。前回はその中でも「危険な植物」について書きましたが、今回は森で出会うことがある「危険な生きもの」を紹介します!

連載「森に行こう! ~身近な自然におもしろさが詰まっている~」

①ヒグマ

森の危険な生きものと言えばヒグマです。

2020年に滝野公園内に設置した自動カメラで撮影されたヒグマ。対策を強化し、2021年以降、侵入はありません

連日ニュースで様々なクマについての報道がされていて、怖いと感じてる人は多いのではないでしょうか?

ただクマについては「出会ってからどうするか?」を考えるより「出会わないためにどうするか?」が大事です。滝野公園でも様々な対策やクマについて知るための情報発信や展示をしていますが、Sitakkeの中の「クマさん、ここまでよ」のページにも詳しく書かれているのでそちらもご確認ください。

今回取り上げるのはもっと遭遇率が高い危険な生きものたち。まずは最近話題の「ダニ」について紹介します。

②ダニ

先日道内で初めてダニに噛まれて感染することがある「SFTS」という感染症の発生が確認された、という報道がありました。ダニに噛まれると他にも様々なウィルスや感染症を発症するリスクがあり、滝野公園でも森に入るお客様には気をつけてもらうよう声かけています。ダニに噛まれたからと言って必ず感染症にかかるというわけではありませんが、リスクがある以上対策は必要です。

ちなみにダニってこんな形をしています。

マダニ

大きさは2ミリ程度。
2ミリというと、ほくろぐらいの大きさがあるので普通に目で見えます。なので森の散策を楽しんだ後は、必ず建物や車に戻る前にダニがついてないかチェックしましょう。ダニに噛まれないようにするには「できるだけ皮膚を出さないこと」が大事です。暑いからと言って半袖や短パンで森を歩いてしまうとダニがつくリスクが高まります。

夏の森でも皮膚を出さないことが大事!

また黒や紺など濃い色の服を着ているとチェックしても気付けないこともあるので、できるだけ明るい服がオススメです。そして万が一噛まれてしまったら無理に引っ張って抜こうとしないで、皮膚科のある病院にいって治療を受けてください。

③スズメバチ

続いて取り上げるのは、これからの季節気をつけないといけない「スズメバチ」です。

テレビ番組などで「スズメバチハンター」のような人が出てきて防護服を着て巣を駆除していたり、ハチに刺されてニュースになったりするのを見ることがあると思います。実際スズメバチは刺されると死に至ることもある危険な生きものです。

特に危険なのは巣が大きくなり働き蜂たちも攻撃的になりやすい「8月後半〜9月」にかけて。まさにこれからの季節!特に巣の近くはかなり危険です!

スズメバチの巣と言えば丸くて軒下などに作るものを想像しがちですが、一番危険なオオスズメバチや小さくて黒いクロスズメバチは地面に巣を作ることがあります。知らずに草むらに入って巣を踏んだりすると一斉に襲われる可能性があるので、森を歩くときはむやみに散策路を外れないようにしましょう。

滝野公園で見つかったオオスズメバチの巣の跡
地面の穴の中には巨大な巣が作られていました

万が一巣に近づいてしまい、たくさんのハチが出てきたら急いでその場を離れてください!そしてもし刺されてしまったら、毒を絞り出して水で流しましょう。「ポイズンリムーバー」という道具があれば安全に毒を出すこともできます。

ポイズンリムーバー。ハチ以外の毒のある生きものにも有効です

過去に刺されたことがある人は体に抗体ができてしまいアナフィラキシーショックを起こすこともある為、ひどい症状が出た場合は救急車を呼ぶなどして医療機関を受診してください。

そんな危険なスズメバチですが、誤解されがちなのは「いつも攻撃的なわけではない」ということ。

スズメバチが人を刺すのは基本的には「巣や自己の防衛のため」です。つまり巣に近づいたり、こちらからハチを攻撃しなければ実は向こうから襲ってくることはほぼありません。この辺りは過去に掲載したヘビと同じですね。

ただ、香水やシャンプーの甘い匂いなどに寄って来ることもあるようなので気をつけてください。

毎日森にいるとスズメバチに会うこともありますが、1匹で飛んでいる時はエサを探していることが多いので襲われることもなく、思いがけず食事風景に出会うこともあります。

スモモを食べるスズメバチ
他の虫たちと一緒に樹液を舐めるオオスズメバチ
虫を食べるスズメバチ

そんなスズメバチは人間にとっても怖い生きものの一つですが、他の生きものたちにとっても危険な生きものです。なので、そんなスズメバチに擬態した昆虫たちもたくさんいます。

例えばこちら。

黄色と黒の模様も大きさもオオスズメバチに似ていますが、これはトラフカミキリというカミキリムシの仲間です。スズメバチに似せることで敵から身を守っているようです。

そして森にはこんな虫もいます。

こちらも見た目はスズメバチにそっくり!
これはキタスカシバという虫で、実はチョウ(ガ)の仲間なんです!

初めてみた時は絶対スズメバチだと思い、すっかり騙されました。

また森にいるとこんなシーンにも出会うことがあります。

死んだスズメバチを運ぶアリたち

「スズメバチ」と検索すると危険な一面だけが紹介されがちですが、実は捕食側であることで生態系のバランスを取る役割も果たしていたり、死んだ後、他の生きものたちのエサになったりしています。また春先にたった1匹の女王バチがコツコツと巣を作っている様子を見ると危険なことがわかっていても応援したくなります。

ダニもスズメバチも危険な要素はたくさんありますが、知ることで対策や適切な距離を知れば安心です。

ちなみに、夏休み中に開催したイベントで「昆虫シール」を配ったところ、12種類あるうちでオオスズメバチは3位でした!危険な反面、知名度もあるので、意外に人気はあるようです。

これから涼しくなって散策しやすい時期になりますので、秋の森も楽しんでください!

連載「森に行こう! ~身近な自然におもしろさが詰まっている~」

文:森の住人 KENTA
国営滝野すずらん丘陵公園 自然環境マネージャー。1978年札幌生まれ京都育ち。約6年間のサラリーマン生活を経て、森についての知識・経験ゼロの状態で滝野の森ゾーンの担当になり、様々なイベントの企画や広報、森づくりなどを担当。公園内にヒグマが侵入した際は専門家と一緒に現場の最前線で調査を担当。滝野の森staffXにて監視カメラを使った野生動物たちのリアルな様子などを発信中。

編集:Sitakke編集部IKU

※掲載の内容は記事執筆時(2025年8月)の情報に基づきます。

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