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磯に出かけて魚や生物を採集してみよう! 磯で出会える魚&場所&季節をまとめてみた

サカナト

磯採集へ行こう!(提供:椎名まさと)

日本近海の磯へ行くと、さまざまな魚や生物に出会うことができます。

特に“夏の磯”というのは、死滅回遊魚と呼ばれる南の海からやって来た魚たちが関東の海にも出現し、魚も人も賑わいます。

磯で出会える魚や採集できる季節を把握して、網を手に海へ繰り出してみませんか。

磯で出会える魚たち

磯採集では色々な魚に出会うことができます。

アクアリストに人気の死滅回遊魚と呼ばれる魚はおよそ夏から秋にかけてが採集シーズンなので、この時期がベストシーズンということになりそうです。

採集した魚を水槽に入れて鑑賞する(提供:椎名まさと)

冬になると死んでしまう死滅回遊魚


熱帯のサンゴ礁で産卵した熱帯性海水魚の卵や、それから産まれた仔魚・稚魚は海流にのって、日本の九州以北太平洋岸にたどりつき、関東においても死滅回遊魚が多数姿を現します。

しかし、これらの魚は冬になり水温が低くなると死んでしまいます。このような魚を死滅回遊魚といいます。

魚種でいうとチョウチョウウオ科の魚や、サザナミヤッコをはじめとした「ヤッコ」と呼ばれるキンチャクダイ科の魚 、「ハギ」と呼ばれるニザダイ科の魚などです。

なお、年や魚種により、中には死滅しない魚もいます。

千葉県で採集したトゲチョウチョウウオの幼魚(千葉県7月)(提供:椎名まさと)

磯採集においてはこのような死滅回遊魚を追いかける人が多く、千葉県や神奈川県、紀伊半島などの有名スポットでは夏から秋にかけて、毎年多くの人が集まります。

しかし、これらの魚は飼育がやや難しいことが多く、初心者にはあまり向いていません。また、これらの魚はサンゴを食するものも多く、昨今人気のサンゴ水槽にも向きません。

初心者であれば比較的飼育しやすいベラ科の魚(中にはカミナリベラなど難しい種もいる)、スズメダイなどがよいのですが、スズメダイの仲間は性格がきつく、この点も注意が必要です。

採集しやすいハゼ・イソギンポの仲間

磯の浅い所に生息する、採集しやすい魚といえばハゼ科の魚イソギンポ科の魚たちです。

バケツの中のクモギンポ(高知県10月)(提供:椎名まさと)

これらの魚は、死滅回遊魚を追いかけている人たちからは見向きもされません。しかしながら、これらの魚は顔をよく見てみると愛嬌があり、かわいらしい魚たちで、筆者が特に好きな分類群のひとつです。

さらに、この仲間たちはチョウチョウウオ科やニザダイ科、キンチャクダイ科の魚と比べると飼育しやすく、大事に飼育すれば何年も飼育できるので、「自分が採集した海水魚を飼いたい!」という人にはこちらをおすすめします。

クモギンポの顔は愛嬌がある。飼育している個体(提供:椎名まさと)

ただし、種類によってはこの仲間の複数種を飼育すると激しく争うことがありますので、注意が必要です。沖縄などの亜熱帯の海に多いグループですが、本州~九州にかけての、温帯の海にも多くの種が生息しています。

冬の磯場で見られるダンゴウオ・スナビクニン

死滅回遊魚が文字通り死滅する冬季の磯は人がめっきり減りますが、ダンゴウオスナビクニンといった、この時期にしか見ることができないような、低い水温を好む海水魚を採集することができます。

冬の海で採集できたダンゴウオ(神奈川県2月)(提供:椎名まさと)

ただし、このような低い水温を好む魚の飼育については、高価な水槽用クーラーを設置する必要がありますので、誰でも飼育することができるというわけではありません。

冷蔵庫を加工し、その中で飼育するなどという“つわもの”もいるようですが、冷蔵庫加工の手間がかかることや、安全性の面などを考えても一般的にはおすすめできません。

基本的には採集したらリリースしてあげるべきでしょう。

魚に会える場所

ここまで紹介した中でもっとも一般的な死滅回遊魚を採集したいのであれば、黒潮があたる関東~九州までの太平洋岸で採集するとよいでしょう。この海域では黒潮が磯を洗い、熱帯性の卵や仔魚・稚魚たちが黒潮に乗ってやってくるからです。

筆者の経験では、千葉県の房総半島のうちいわゆる「外房」と呼ばれる場所や、神奈川県の三浦半島、紀伊半島の串本方面、高知県の西部、日南海岸などによい採集スポットがあります。

しかしながら採集が禁止されている場所(保護水面など)もあり、注意が必要です。なお、詳細な採集ポイントについてはこの記事では触れませんので、上記のヒントをもとにご自身で探してみましょう。

千葉県・房総半島の磯にも熱帯から魚がやって来る(提供:椎名まさと)

日本海岸にも対馬暖流が流れていますが、死滅回遊魚については残念ながら太平洋岸に比べると数・種類とも少ないと言えます。しかしながら、それでも近年はハタタテダイトゲチョウチョウウオニザダイ類などが採集されているようです。

もしかしたら今後海水温の上昇が進むと、日本海にもより多くの死滅回遊魚が来るかもしれません。しかしながらそうなると、これまで生息していた温帯の魚や生物にとっては危機になりますので、良いこととはいえないでしょう。

ハゼやカエルウオの仲間は関東以南の沿岸であればほとんどの地域で見られますが、やはり太平洋岸、それも紀伊半島や四国などに多いものです。ダンゴウオやスナビクニンなどは関東ではおなじみですが、四国や九州沿岸ではほとんど見られないようです。

磯採集をするのはどんな日がよい?

磯採集は台風のときなど海が荒れてなければいつでもできますが、基本的には晴れの日を選んだほうが楽しいでしょう。

ただし、淡水の採集と異なり、海での採集は「潮の満ち引き」に左右されることになります。

これは磯採集の主体が干潮時にできる「タイドプール」での採集になるからで、基本的には干潮の2時間ほど前から磯に入るようにすると楽しく遊べると思います。

高知県の潮だまり。干潮時を選んで採集しよう(提供:椎名まさと)

なお、潮の満ち引きについては新聞や釣り雑誌に掲載されているほか、スマートフォンなどを使って気象庁などのウェブサイトなどで調べるのが確実です。

もちろん夏の採集は熱中症に注意し、逆に、冬の採集はよく冷える夜間がメインとなるため凍えないよう防寒対策をしっかりしておきましょう。

磯採集に適したシーズンは?

磯採集は1年中行うことができますが、採集したい魚のジャンルにあわせて季節を選ぶことになります。

死滅回遊魚を狙うなら夏〜秋が最適

一般的に人気な「死滅回遊魚」であれば、日南海岸など九州南部では早い年では4月ごろから姿を現しますが、多いのは6月から11月ごろまでで、高知県西部でも同様。関東地方では7月下旬~10月いっぱいまでは楽しめるでしょう。

オヤビッチャの幼魚はシーズン初期から見られる(提供:椎名まさと)

なお、筆者は2019年5月の大型連休に千葉県の磯でシマスズメダイを採集しているのを見たことがあります。

オヤビッチャも極めて早い時期に磯で見られ、この仲間が採れるようになると「死滅回遊魚採集シーズンの開幕!」といってもいいかもしれません。

ハゼの仲間は種によって採集できる時期が変わる

ハゼの仲間を採集できるシーズンは種によって異なります。

キヌバリやチャガラなどの高水温に弱い種を採集するのであれば4月~7月までと11月から翌年の4月まで。イソハゼやアゴハゼ、クツワハゼなどの種はほぼ年中見られます。

ハゼ科のキヌバリはやや低い水温を好む(提供:椎名まさと)

カエルウオなどは関東では夏から秋に小型個体を採集できます。また、高知県西部では8月に小型のカエルウオが多数波打ち際で見られました。カエルウオの仲間は大体5センチ前後のものが飼いやすいです。

冬の2月に千葉県で10センチはありそうなカエルウオを採集しましたが、このような個体はなかなか配合飼料を食べないので飼育が難しいところがあります。逆に小さい個体も頻繁に餌をやらないといけないためこちらも難しいです。

ダンゴウオやスナビクニンなどは1〜2月が狙い目

ダンゴウオやスナビクニンなどは冬の夜、1~2月ごろがシーズンです。

冬の夜、よく潮がひいたときに採集しますが、夜ライトを光らせての採集になりますので、アワビやサザエなどの密猟と間違えられないように注意しなければなりません。

2月の冬の磯は足元に注意(提供:椎名まさと)

なお、ダンゴウオやスナビクニンは高知県や宮崎県などには生息していないようです。

磯で思い出を作ろう

今回は磯採集で出会える魚について解説しました。

みなさんも磯に出て、かわいい魚と出会い、思い出をつくりませんか。

(サカナトライター:椎名まさと)

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